君の瞳に恋してると思ったらちゃいまんねん
人間と言う生き物は馴れ合いの動物である。
しかしながら、それと恋とはまた別問題である。
君の瞳に恋してると思ったらちゃいまんねん。と言う様な事は往々にしてよくある事である。
ローストとビーフンはそれからはストロガノフの勤務するレストランで食事をする様にした。彼女に恋したと言う訳ではないが、二人がストロガノフを気に入っていないかと言うとそれは嘘になる。
ここのレストランのサンドイッチやビフテキは確かに旨い。それも事実だ。ビーフンは元アフリカ連合艦隊指揮官である。彼は旨いものを沢山食べて来た。だから間違いない。彼の舌はかなり肥えている。だから彼が旨いと言う事は、世間一般人のかなり旨いと言う評価が下せる。
ローストもストロガノフの勤務する店のサンドイッチはかなりのお気に入りだ。おまけに食後にサービスで出してくれる日替わりのデザートが、二人の胃袋を鷲掴みにした。
ストロガノフに彼氏はいないらしい。無論、将来的には結婚したいと思っているが、今は学業とバイトで精一杯であり、現実は甘くなかった。世の中そう言うものである。どんな美女でも彼氏が出来ない、或いは性格上の問題から彼氏を作れない人間もいる。ストロガノフはそんな典型例を体現している女性であった。
18歳と言えば人生で最も華のある時期であり、早熟な女性ならば結婚、出産している時期である。まぁ、そう言った一般的な女性論はさておき、ストロガノフの家庭事情について少し触れたい。
ストロガノフ家は父母が既に他界しており、4人兄弟で支えあっている状態である。長女ストロガノフ、次女メークイーン、長男ガルフ、次男メートム。二人の男子は共に海軍に入隊している為、家には居ない。ストロガノフは次女メークイーンと共に二人で質素な暮らしをしている。
ストロガノフがレストランのウェイトレスである事が一番許せていないのは、妹のメークイーンである。こんなに優秀な姉であるにも関わらず一切の夢すら叶わない現実に多大なる怒りを感じている。やるせなさもある。でもメークイーン一人ではどうしようもないやり場の無い怒り。
ストロガノフには夢がある。理科の教師になって科学の楽しさを世の中に広める事である。勿論、まだその夢への道程は遠い。ロシアカフカス帝国大学の特待生であるストロガノフは学費はかからないが、生活費を稼がねばならない。とは言えレストランのウェイトレスの仕事は非常に気分転換になる。
生活費を稼ぐ為に仕方無くバイトをしているストロガノフだが、貰える賃金云々よりも、美味しい料理をお客様に持って行くと言う行為そのものが彼女には新鮮であった。恋などしている暇はない。貯金して夢を叶える為に。




