FASE2 ストロガノフとの出会い
カイロシティを出発してカスピ海シティに到着するのに約5日を要した。空路と陸路での旅はやはり、地理的に難がある事は"想定内"ではあった。
勿論、入国審査も上手くローストとビーフンのチームプレーで切り抜けた。カスピ海シティに到着した二人はまず、飯を食う事にした。この町の名物と言えばヨーグルトだ。
カスピ海ヨーグルトと言えば、かなり有名である。ローストとビーフンは腹が減っていたので、とりあえずありきたりなレストランに寄る事にした。
「腹が減っては何も出来んな。」
と、ローストが言った。
「まぁ、確かにそうだな。腹が減ると士気に関わる。」
ビーフンもその辺りの人間的な生理欲求の満足度の重要性はよーく理解している。いや、と言うよりは見に染みて理解している。
ウェイトレスが注文を聞きに来た。ローストはサンドイッチを、ビーフンはステーキをそれぞれ注文した。そのウェイトレスの身のこなしは、一般女性のものとは異なるものであった。エレガントかつインテリな感じとでも言おうか…。ローストは彼女に名前を聞いた。
「美味しいサンドイッチをありがとう。ところで君の名は?」
すると彼女はこう答えた。
「えー!?あぁ、私はストロガノフよ。よろしくねお兄さん。」
ビーフンもステーキを気に入ったらしく、また来る事にした。
「良い品を出す割にリーズナブルで美女がいる。」
これが後に勇者のパーティーに加わる事になる、女性との出会いであった。
ストロガノフはカフカスシティ出身のロシアカフカス帝国大学の学生である。専攻は物理学。理系の秀才でありながら情勢が不安定なロシアカフカス帝国にあっては、そんな学歴など何の役にも立たない。時給500円のアルバイトをしながら生活するのがやっとであった。それでも、ストロガノフは今の生活に不満はない。生きているだけで満足している。そんなストロガノフにも趣味はあった。
それは、絵を描く事である。絵を描いている間はどんなしがらみからも解放される。絵を描く事で全てのストレスを無くせるのであった。人間には誰しもが縛られるべく現実が必ずある。ストロガノフの家はどちらかと言えば裕福である。しかし、ストロガノフはお金に全く興味が無い。それは裕福な者だけが言える事なのだろうけど、得てして羨ましい限りではあるが、彼女には彼女なりのポリシーがあった。
まぁ、そう言った処々の細かい事はさておき、ローストとビーフンは、ストロガノフと運命的に出会うべくして出会ったのである。