巡り会うべき友
特に何かどうと言う事はない。エジプティアン人と話ているという、ただそれだけで私の心は気が紛れた。とローストは思っている。
だがしかし、そんな一期一会的な出会いに酔いしれるほど彼は脳天気ではない。あての無い旅と言うものは、得てしてそう言うものでは無かろうか?
旅は道連れ世は情けとはよく言ったものである。エジプティアン人たるもの、コミュニケーション力は世界トップクラスであると言う自負はある。水タバコをふかせるようなバーがあるかと思えば、道行くとそこにはストリートチルドレンがいる。
アフリカ諸国の中では裕福なクラスにあるエジプティアンであるが、結局は貧富の差は激しい。何故ローストはエジプティアンに行こうと思ったかは彼にしか分からない。単なる旅行先ではないのは確かだ。何か運命に導かれる様にローストはエジプティアンに来た。
バーのマスターと、話をしていると、そこにローストと同じ位の年齢の金髪の青年が突然入ってきて爆食いを始めたではないか。ローストには意味が分からなかったが、マスターは彼ねいつもこうなんだよと教えてくれた。
それにしてもこれほどの食欲は尋常じゃない。その若者は食べるのを止めローストに話しかけてきた。
「おい!お前中々良い目してるじゃないか?」
ローストは人見知りをする様なタイプではないが、初対面の人間にはやはり少し警戒する所があった。
「はぁ!!?何を言ってんだボケ!」
思わずそう言ってしまった自分に少しだけ拍手を送りたいローストであった。
「お前、俺と組まねぇか?」
ローストは少し考える。
「俺の名はビーフン。ただのしがない魔法剣士だ。」
「僕はローストと言う。よろしく!」
よく分からない安心感によって、二人の縁の糸は繋がったのである。知り合ってからは、ピラミッドを見るよりもビーフンとの時間の方が長くなり、酒も女も忘れてひたすらお互いの事を語り合ったのであった。それは非常に二人の未来にとっては、重要な意味があった。ただ、今の段階においては全くその重要性を知る事にならないのは、自明の理である。ここがようやくローストの旅のスタートラインであった。