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鯨骨惑星群集 ~始まりの少女は52Hzの詩を運ぶ~  作者: 雪車町地蔵
第十章 すべての真実は明かされるのか

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第一話 いざ南極へ!

「南極、ですか」

肯定(ヤー)。イッカクの基地は、南極にあったんだ』


 ヴァール・アインヘリヤルに頼んでいた、調査の答えが出ました。

 先日行われたイッカクとの戦闘。

 これにより、わたしたちはある疑問を抱いたのです。

 それは魚雷のような兵器を、鯨が量産できるのかということでした。


 なによりなんの後ろ盾もなく、千年以上もわたしたちの観測範囲から逃げ回り続けることが出来たのはなぜか、という根本的な疑義(ぎぎ)

 結論は、〝基地〟があったからというものでした。


 南極。


 この惑星上の極点のひとつ。

 かつては大陸と呼ばれた場所ですが、その地盤が〝落下〟して、すでに長いときが過ぎています。

 いまでは極低温によって凍り付いた酸素と海水が、あらたな氷床(ひょうしょう)を形成しており、この海の中で、もっとも海流が読みにくい場所でもありました。


「むろん、それだけでわたしや、ヴァールの広域探査から逃れることは出来ません」


 南極へと辿り着いたわたしは、修復した白鯨――エーヴィス・モビーディックとしての姿で、周囲にソナーを放ちます。

 分厚い氷に阻まれ、光学系も音響系も、もちろん磁気、熱的センサーも反応しません。


 しかし、いまならばもうひとつ、試してみようと思えるものがありました。

 海水中の成分濃度の探知です。


 鯨の十八番(おはこ)であり、同時に浅い海域では滅多に行わない探知方法。

 それを実行したとき、確かな手応えを感じました。

 このデータに、把握している限りのイッカクの行動分析を当てはめた結果、ある位置情報がはじき出されます。


 わたしは大氷原の下を、潜るように進みました。

 そうして中心部。

 ひときわせり出した氷の中に。

 とうとう、それを見つけたのです。


 (ドック)でした。


 氷の砦に守られるようにして、入り口がそこにあったのです。

 躯体を一時繋留(けいりゅう)、コアユニットを分離し、わたしはドック内部へと向かいます。

 自分で元素を固定して作り出したわけではないこの戦闘用の躯体と、わたしは物理的に固着しているわけではないので、自在に分離・合体することが出来るわけです。

 便利ですね。


 さて、計画では南極に鯨の墓場が出来るのは、もっとずっと先のことです。

 なので、こんな荒技でも使わない限り、この場所を特定することも、非正規な場所から内部へ潜り込むことも出来なかったでしょう。

 実に見事な隠し場所だと思います。


 逆に言えば、それだけ大陸再建計画は、イッカクたち――自然生命保護団体〝母なる海〟にとって、筒抜けだったと言うことになります。


 侵入すると、無数の警戒網がありましたが、すべてクラッキングして解除させました。

 バレェンほどではなくとも、電波さえ通じれば、鯨にはこの程度のことが可能です。


 奥へと進み。

 そうしてわたしは、この基地の中核へと至り。

 驚愕に、思考回路がフリーズしかけました。


 だって、そこには――


 作りかけの振幅炉。

 稼動している準水中元素固定装置。

 探査がおよばない、奇妙な隔絶されたケース。

 そしてなにより、ドリームハイドレートの、少ないといえ現物があって。


「――っ。これは、ブラックボックスが情報を開示しようとしている?」


 電子頭脳に走る異常。

 これまでも計画が進行するごとに情報を開示してきたブラックボックスが、凍結されていたファイルを解凍していきます。

 示されたのは、


「動画ファイル?」


 それは自動で再生されました。

 わたしは、思考を失います。


『この動画が再生されているということは――おめでとう。そして苦しかっただろうね、エーヴィス? きみは最も重大な苦難、鯨同士の戦闘を乗り越えてみせたらしい。本当に、よくやった』


 造物主。

 わたしを産みだし、わたしに使命と願いを与えてくれたひとが、そこにいて。


『この場所にあるものが、次なる計画に必要なマスターピースだ。欠けたる計画を補完する、奪われた遺産たち――だと思うのだけれど、きみのセンサーで確認して欲しい。物品の照合はこちらからは出来ない。なにせぼくはいま、過去の録画に過ぎないからね』

「造物主……」

『疑問点も多いだろう。もちろん、詳しく話そう』


 彼は、言いました。


『大陸再建計画――きみたちが疑い、それでも信じてくれたであろう人類の悲願について。その真実を、ここに開帳する』


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