表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鯨骨惑星群集 ~始まりの少女は52Hzの詩を運ぶ~  作者: 雪車町地蔵
第六章 第一次円卓〝鯨〟会議は無事催されるのか

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/46

第三話 仮称:ユニコーン

 カフが襲撃を受けた瞬間、反射的に記録した映像。

 それがいま、わたしたちのまえに映し出されます。

 示されたのは、異形のシルエット。


 銛のような、細長い衝角(ラム)を持ち。

 高速移動に秀でた流線型の体躯と、いくつかの魚雷と思わしき装備を身につけた〝鯨〟。

 そう、これだけ巨大で、この時代に存在しうる熱源体は――〝鯨〟意外に有り得ないのです。


「……ひょっとして、わたくしのファーストミッション。最初の躯体離脱時に飛来した熱源体は」

「はい、推測になりますが、この魚雷様物体があのときジンユーを機能不全に追いやった原因でしょう」

「待つの。エーヴィスの口ぶりだと、まるでこの〝鯨〟が全ての元凶のように聞こえるの。だとしたら――」


 そうです。

 バーレェンが敷設してきた電波中継基地。

 それをこれまで破壊してきた存在も、おそらくこの〝鯨〟なのです。


「……冗談ではないの」

「冗談は言いません。わたしは鯨なので」


 しかし、厳密に存在する危機を、見逃すこともまた出来ません。


「ヴァール・アインヘリヤルの〝群〟による広域探査、それを間逃れていることからも、この〝鯨〟が特別であることが解ります」

否定(ナイン)。もう少し正確に言うべきだ。ボクらの情報が筒抜けということではないかな?」


 無論、可能性は大きくあるでしょう。

 なので、情報担当であるバーレェンヘ訊ねます。

 技術的に、電波中継基地へと諜報戦(ハッキング)を仕掛けることは可能なのかと。


「……できてしまうの。なぜなら、そもそも大陸再建計画にはこのような障害は設定されていないの。中継基地にセキュリティーはないに等しいし、〝鯨〟と同程度の演算能力があれば、情報はダダ漏れと考えて間違いないの」


 そうでしょうね。

 そこまでは、予想できていたことです。


「さて、この存在が〝鯨〟だとして、名称がないのは困ります。不定〝鯨〟第一号とでもしますか?」

「それはさすがにナンセンスだろうぜ」


 キートが苦笑いするように言った。


「ユニコーンって、どうかしら? こいつにはぴったりだと思うんだけど」


 他ならないカフの提言。

 なるほど、乙女を狙う一角獣(ユニコーン)ですか。

 最適でしょう。


「ならば、今後この不定存在を〝ユニコーン〟と仮称します。そうして、現状で可能な対策を協議したいのですが、情報が圧倒的に足りません。なので」


 わたしは、蓄電池の一部を使い。

 コーン……! と、ソナーを全域へと放ちました。


 こちらの情報は筒抜け。

 そして〝ユニコーン〟は露骨にわたしたちを――いえ、大陸再建計画を邪魔しようとしています。

 なら、わたしたちが対策会議を開こうとすれば、どうするでしょうか?

 これまで看過してきたものを、ついに認識したとすれば?


 答えは、すぐに出ました。


「――南方より、急速接近する艦影あり」


 わたしの言葉に、その場の全ての〝鯨〟が、フル稼動状態に突入しました。

 そう、この瞬間を待っていたのです。

 あちらも。

 ――わたしたちも。


「馬鹿め、と言ってやりますわ。この円卓〝鯨〟会議こそが、〝ユニコーン〟をおびき寄せるエサなのですもの……!」


 高らかに言い放つジンユー。

 そしてわたしたちは。

 異形の襲撃者と、ついにエンゲージを果たしたのです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ