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Disappearance(消失)

 日本の住宅街で銃撃戦。


 こんな未曽有の大事件は、平和ボケしたこの国ではもてはやされた。山を見張っていたC3のメンバーは大人しく投降したが、マンションの屋上を見張っていたメンバーは、銃を発砲して抵抗しようとした。しかし、その銃は全て空砲で、鎮圧にさほど時間はかからなかった。


 なので、亀山が撮った銃撃戦に見える写真は実際、空砲を撃って、それを実弾と勘違いして、発砲した警察との一枚だったのである。何故そんな写真を亀山が撮れたのかはよく分からない。


 そんなことはさておき、犯行メンバーを全員捕まえた後、この事件の犯行メンバーの携帯から共通して見つかった電話相手の氷室を逮捕した。また、氷室はC3のメンバーとして国際指名手配されていたため、C3と言うアメリカのテロ組織が関わっていることが確認された。


 ただ、この事件の加害者である私達としては、おかしいことがたくさんある。


 まず、逮捕された氷室は、私達が会った氷室の顔と全く違っていたことだ。私達が会った氷室とはつまり、いんちのことである。しかし、逮捕された氷室として、ニュースで取り上げられたのは、全く違う人物だった。


 ニュースで報道された氷室は、初老の男で、髪に白髪が混じっていた。それに、吋とは違って、がっちりとした体形で、武器も拳銃を好んで使い、接近戦は素手のみで戦うということらしい。ナイフを使うという情報は出てこなかった。


 そして、これが昨日一日の間に終わったことだということだ。昨日の夜に警察署の前にボコボコに痛めつけられた氷室とみられる人物が捨てられていたらしい。死んではいなかったが、その男の背中には、自分の指名手配書が貼りつけられていて、その胸ポケットに入っていた携帯電話から今回の事件を起こしたメンバーの電話番号が全て入っていた。


 このことからこの事件はC3の氷室が起こしたテロ事件で、氷室は部下の誰かから裏切られたとされているが、私は吋が氷室と名乗っていたことを覚えているし、吋が持っていた携帯電話には、C3の中心人物である一色と車木の連絡先が入っていた。私には逮捕された氷室は、影武者のように見えてならない。


 他にも疑問はある。まず、どうやって、氷室が消えたのか? 吋の言葉を信じるならば、C3は今現在の最新技術のさらに先を行き、このワープ装置ですら作ってしまっている。なら、人がいきなり消すような技術も持っていることも考えられる。


 だが、吋はC3はそのような技術は持っていないと言った。嘘をつくにしても、意図が分からない。仮に消える技術があるとして、なぜ、ないと嘘をつくのか? 技術がないとしたら、なぜ、消えるとはったりをかませたのか?


 そして、吋はなぜ自分が消える時間を知っていたのか? 仮に消える技術があったとしても、消える時間を分単位で知っていたのはおかしい。なぜなら、私達が電撃で吋を気絶させたのは、突然のことだったし、気絶から目覚める時間を予測して知ることなんてできなかったはずだ。


 あの状況で考えられる消える時間を分単位で予測する方法として考えられるのは、時間を予測しているように見せかけたという可能性だ。吋は気絶から目覚めた後、どうにかして現在時刻を分単位で知り、その一分後に消えるように指定した。


 そして、まるで以前から知っていたかのように、消える時間を自信満々に語る。そしたら、消える時間を予測していたように見せかけることができる。


 でも、この見せかけには、どうやって、時間を分単位で知れしたのか? どうやって、消える時間を指定したのか? 吋の携帯は奪っていたから、この二つをどうやったかはよく分からない。さらに、この方法では吋が言っていた時間とフィラデルフィア計画の語呂合わせをできた理由が分からない。


 確かに、フィラデルフィア実験が行われたとされる日付と西暦は、1943年10月28日だ。吋が消えた昨日の夜、10月28日19時43分と奇跡的な一致をしている。それに以前からワープ装置にはフィラデルフィア計画を匂わせるような言葉が書かれていた。


 吋の言葉を信じるなら、吋がワープ装置を用意した。ならば、ワープ装置を作った時点でこうなることは分かっていたようだ。そしたら、限りなく低く、突飛な可能性が排除できなくなる。


 タイムマシンを使って、こうなることが分かっていたという可能性だ。


 実際にタイムマシンを使った場合、どうなるかは分からないが、タイムマシンが実際にあったとすると、吋の言葉、行動にある程度の筋が通る。消える時間は未来から来たなら、分単位で分かっていてもいるだろうし、今のC3にないワープ機能を未来のC3が持っているかもしれない。


 さらに、私達にタイムマシンを作らせようと、ヒントを誘導したり、脅したりしたり、さらに、殺せないと分かっていたことも、私達がタイムマシンを作るために必ず必要な要素だったと考えれば、全ての筋が通る。


 タイムマシンに関する考えは様々あるが、今の状況から私が考えた仮説を基にすると、まず、仮に、私がタイムマシンをもうすぐ作るとする。この時、私がタイムマシンを作ったという事実は揺るがないとし、タイムマシンを作るために、必要な発見やひらめきを早めることはできるとする。


 すると、今言ったルールを守ると、私にタイムマシンを作る手助けや脅しをかけることはできるが、私がタイムマシンを作るまでどんなことがあっても、殺すことはできない。


 このようにして、吋がタイムマシンを使って、この時代へ私達にタイムマシン開発を早く進ませるために来たと考えることができる。なら、私もしくは一茶は必ずタイムマシンを作ることができるということになる。


 ここまではいいとして、吋が残した残りの発言だ。吋が一茶に残した言葉、可能性はゴミ箱の中にある。いい言葉だが、まだ、意味はよく分からない。そして、これは私達への救済と言う言葉もよく分からない。


 吋が消えることが私達への救済になるというのはどういうことだろう。まだ、私はその真意が分からない。だが、この先の未来でその真意が分かってくるのだろう。


 じゃあ、ここまで考えを巡らせた所で、私達は何をすればいいのか?


 まず、タイムマシンを作ることだろう。タイムマシンを作れることがほぼ証明された今、私達がタイムマシンを作ろうとすべきだろう。次に、私は今、吋の携帯を持っているので、C3について調べる必要もある。


 C3が科学者や技術者がいるのならば、私達がタイムマシンを作りかけた所で、横取りされてしまうことも考えられる。なぜなら、今の所、私達が分かる確定した情報は、タイムマシンができたことと今私達が思いついているタイムマシンの理論より少し先の考えを私達が作り上げることまでである。


 確かに、私達は今は殺されなかったが、この先のタイムマシンに関するひらめきをした後、どうなるかは分からない。なぜなら、タイムマシンを開発した人間はまだ確定していないからである。私達が作ったかもしれないし、他の誰かが作ったことを引き継いだかもしれない。


 とにかく、何が起こるか分からない以上、怪しいC3の動向は見守っておくべきだ。この吋の携帯電話さえあれば、何とかして、逆探知して、何か情報を引き出すことができるはずだ。


「やっと、腕の治療と警察の取り調べが終わったよ。もしかしたら、C3の標的になっているかもしれないから、警察の護衛が付くかもしれないって。」

 コインランドリーにやってきた一茶はそう言った。


「そう、警察にワープ装置のこと、タイムマシンを作っていることは言ってないわよね。」

「まあ、言っても信じてもらえないだろうからね。」

「それならいいわ。……私達がすることは変わらない。タイムマシンをいち早く作ることよ。それとC3の情報収集よ。」

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