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Fafrotskies(怪雨)

「だから、雲の中にはブリガドーンって言う妖怪たちの村があって、その妖怪たちが落とした魚や蛙が我々の住む大地に降り注いだのがファフロツキーズ現象と言われていて……。」

「違う!ファフロツキーズ現象は宇宙人が地球の生態調査のために獲りすぎた魚や蛙をUFOから捨てているんだ。そして、魚や蛙の次は人間がさらわれて……。」

「違うね!実は世界征服を目論む秘密結社の科学者たちがテレポーテート技術を完成させていて、その実験の一端として、生物実験として魚や蛙を空にワープさせているんだ。」

「違う!妖怪!」

「宇宙人!」

「秘密結社!」

 三人は顔と顔を近づけて相手を威圧し、自分の妄想を押し付け合っている。こんなのは話し合いじゃなくて、ただのにらめっこだ。これが小学生ならいいのだが、義務教育を終えた高校生だと言うのだから驚きである。


「竜巻だろ。普通に考えて。」

 にらめっこをしていた三人は見合わせていた顔を一気にこちらに向けた。


「ウォータースパウトって言う海や湖の上にできる竜巻が魚とか蛙を空中に吸い上げて、生き物を遠くに吹き飛ばしたのがファフロツキーズ現象の真相だよ。それが一番合理的な答えでしょ。」

「違う!それは秘密結社の流したプロパガンダであって……」

「違う!宇宙人の存在を隠すために地球人全員を洗脳する光線を放っていて……」

「違う!妖怪の村が空中にあるんだ!」

 私は三人の放つ雑音に苛立ちを覚え、口に咥えた煙草型のラムネ菓子を噛み砕いた。


「全部違う!」

「まず、妖怪の奴!


 ブリガドーンとか言ったか?仮に空中に妖怪の住む村があったとして、どうやって、その村は浮いているんだ?まさか、雲の上に乗せているなんて言わないよな。雲は地面みたいに物は乗せられないなんて、幼稚園児でもわかる常識。


 なら、ガリヴァー旅行記のラピュータみたいに磁石で浮かすのか?


 無理です。まず、磁石で妖怪が住めるような都市を磁石で浮かすなら、どれだけ莫大な電力がいると思ってる。地球で発電できる電力全部ぶっこんでも、私の身長浮くかどうかだろうな。第一そんな磁力を発生させたら、世界中の方位磁針壊れちまうよ。


 それに、妖怪なんて非合理的なものは大嫌いだ。


 妖怪なんて、昔の人が不可思議な現象の原因を考えることを放棄するために作った人間史上最低の発明品だ。」


 妖怪の奴は私の話を聞いて、しゅんとして、悲しい顔をした。


「次に、宇宙人のお前!一万歩譲って、宇宙人がいたとして、洗脳光線なんてものがあると思うか?


 答えは否だな。


 洗脳光線なるものがあったとしたら、宇宙人は魚や蛙を降らせた事実を消した方が手っ取り早いじゃないか。それに、お前が宇宙人のことを疑っている時点で、洗脳失敗じゃないか。


 さらに言うなら、洗脳光線を持っているならこそこそ生態調査をやっていないで、地球侵略に乗り出せよ。合理的に考えたら分かるだろうに……


 次、秘密結社の奴!


 お前が一番許せない! テレポートの技術を科学者が開発? テレポートの意味知ってんのか? それとも、辞書すらも引けねえ、猿なのか? 


 無知なお前に教えてやるが、テレポートって言うのは、超能力者って言う詐欺集団が使う力のことだ。だから、科学者がテレポートの技術を開発するなんてことはねえんだよ。科学者が開発するのは、ワープ技術だ。詐欺師と科学者を一緒にするなよ。


 それに、ワープ技術なんてものが開発できると思っているのか?


 確かに、アルクビエレ・ドライブやら、ワームホールやらなんてものを使えばできるかもしれないが、どちらも負の質量を持つエキゾティック物質を大量に必要とする。一応、負の質量をもつ物質は見つけられているが、ワープに必要な分を安定的に供給することは不可能だな。


 それに、エキゾティック物質の問題を解決できたとして、他の問題がわんさかある。それに仮にできたとしても、人間みたいな複雑で、脆いものをワープさせることは……


 ぜっっっっっっったいに不可能だな。」


 宇宙人の奴も、秘密結社の奴も妖怪の奴と同じく、黙ってしまった。私はセーラー服の上に羽織った白衣のポケットから煙草のラムネ菓子の箱を取り出し、箱を開けると、一本取り出して、口に咥えた。論破された三人はさっきまで争っていたのとは反対に、三人とも体を寄せ合って、涙を流し出した。


バブルちゃん、男三人を泣かせちゃうなんて、容赦ないですなあ。」

「当たり前のことを教えてやっただけだ。事実も受け入れられず、言葉も知らない馬鹿な連中にな。」

「くぅ~、そこに痺れる、憧れる~」

 亀山はカメラを地面にはいつくばっている三人の男にフラッシュをたいて、写真を撮っていた。


「やっぱり、泡ちゃんについていくと、スクープが撮り放題だなあ。明日の学級新聞の見出しは


 【天才少女 越前泡。物理教師、数学教師に続いて、オカルト部を泣かす。】


 これに決まりだ! ああ、スクープがゴミのようだ。」

 亀山が色々な角度からオカルト部の三人の写真を撮っていると、それに痺れを切らした


「そんなこと分かってんだよ!


 そんなこと分かっているけど、そんなことを分からないふりをして、オカルトを楽しく語っているんだよ。このオカルト部は、オカルトをわちゃわちゃ議論し合う俺らの数少ない生き場なんだよ。


 それを科学とかいう正論で邪魔しないでくれよ。


 泡、お前のような科学者は退部だ!」

「おおっと、まさかの追放もの~!やっぱり明日の見出しは


 【お前はもういらない。世界一の天才少女がオカルト部から追放された件について】


 に決まり~。泡が問題を起こす、それを私が記事にする。永久機関が完成しちまったなあ~。」

「それは私に得がない時点で、永久機関じゃないし、永久機関の発明は不可能だ。」

「いいねいいね。やはり、ノーベル賞候補の冷子と戦ってきた奴だ、面構えが違うっ!」

 私は亀山のウザイ喋り方に苛立ちを覚えながら、私はオカルト部の連中にとどめを刺すことにした。


「お前ら、三人でわちゃわちゃやってるのはいいが、現実見ろよ。


 まあ、竜巻なしで、魚や蛙が降ってきたら、私が下着だけになって、お前らに土下座した後、逆立ちで校庭一周してやるよ。もしもの話だがな。」

 私はそう言いながら、窓の方を見つめた。空は雲一つない快晴で、竜巻なども起こっていない。だから、魚や蛙が降ることもない。


 そう思って、空を見つめていると、突然、視界が少し暗くなった。私はふと暗くなった方向に目を向けると、何かが太陽の光を遮っていた。その何かは鳥やら飛行機やらの飛行物体ではなかった。私は目を凝らしてよく見てみた。


 それは、たくさんの魚と蛙だった。


 私がそれを認識すると、魚と蛙は段々と加速しながら、落下しだした。私が窓を開けて、校庭を見ると、ぴちぴちと跳ねる魚とぴょこぴょこ跳ねる蛙が群がっていた。私は口をあんぐりと開けながら、目の前の事実に理解が追い付かないでいた。


 すると、後ろからカメラのフラッシュの光とシャッター音が聞こえてきた。


「よし、明日の記事は


【天才少女 越前泡、オカルト部に負け、あられもない姿で校庭を一周】


 に決まりだあ。わからせ展開、おつ!」

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