第4話
翌朝。
「おはよう。一颯君」
愛梨はいつものように、俺の家の前で待ってくれた。
今までと違うのは、俺たちがただの幼馴染ではなく、恋人同士だということだ。
「おはよう。愛梨」
いつもと同じ挨拶のはずなのに、どうしてか新鮮に感じる。
「じゃあ、行きましょう」
「あぁ……でも、その前に、いいか?」
「なに?」
「キスしていいか?」
「ええ、もち……ふぇ?」
愛梨はぽかんと口を開けた。
さすがにいきなり過ぎたかな。
「い、今、なんて……?」
「キスしていいかな?って。おはようのキス」
「な、なんで!?」
愛梨の顔が見る見るうちに赤くなっていく。
そして俺から距離を取るように、ゆっくりと後退る。
俺はそんな愛梨の腕を掴んだ。
「きゃっ! ちょ、やめ……」
「危ない!」
俺は強引に愛梨を自分の方へと、引き寄せた。
つい先ほど、愛梨がいた場所を、トラックが通り過ぎていく。
「後ろを向きながら、車道に出るなよ」
全く、危ない奴だ。
やっぱり、愛梨には俺がいないとダメだな。
「あ、あぁ……うん。あ、ありがとう」
愛梨は恥ずかしそうに項垂れた。
そして俺を上目遣いで見上げる。
「あ、あのさ」
「どうした?」
「そ、そろそろ、離してもらっても、いい?」
愛梨は腕の中でそう言った。
引き寄せた際に、うっかり抱きしめてしまっていた。
……いやまあ、うっかりじゃなくて、わざとだけど。
「その前に、キスしていいか?」
「だ、だから、何で……」
「キスしたいから」
「い、意味わからないんだけど!?」
「何度もしてきたじゃないか」
正月なんて、愛梨の方からねだってきたし。
「そ、それは、た、確かにそうだけど……」
「……嫌だった?」
やはり唐突過ぎただろうか?
恋人同士になったし、キスくらい、いつでもして良いかなと思ったけど。
キスはしたいが、愛梨に嫌われたくはない。
「嫌なら、いい。悪かった」
俺は気まずさを感じながら、腕の力を緩めた。
しかし愛梨は俺から離れなかった。
「……嫌とまでは、言わないけど」
「本当に? じゃあ……」
「ほ、ほっぺなら、いいわよ。……キス」
愛梨は俺に頬を向けながら、そう言った。
頬かぁ……。
唇が良かったけど、贅沢は言えない。
「おはよう、愛梨」
俺は愛梨の耳元でそう囁いてから、頬にキスをした。
「あぅ……」
するとガクっと愛梨の膝が崩れた。
慌てて愛梨を支える。
「大丈夫?」
「う、うん……」
愛梨は顔を真っ赤にしながら、頷いた。
俺はそんな愛梨の腕と腕を組み、手をしっかりと握る。
「じゃあ、行こう」
「い、いや……ちょっと。い、一颯君? こ、これは、さすがに……」
さすがに腕を組み、恋人繋ぎしながらの登校は恥ずかしいようだ。
だけど、俺は愛梨が自分の恋人だと、見せつけたい。
「車道に出たり、倒れたり、危なっかしいからな」
「い、いや、それは一颯君が……」
口では抵抗しながらも、やはり満更でもないらしい。
最終的に愛梨は俺の気持ちを受け入れ、手を繋ぎながら登校してくれた。
放課後は愛梨と何しようかな?
愛梨との新生活に、俺は胸を高鳴らせた。




