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第3話

「え? あ? え? な、何で?」



 口から、変な声が出た。

 どうして愛梨が入って来たのか、理解できない。


 一方の愛梨は胸元を隠しながらも、堂々と開き直った表情をしている。


「一緒に入ろうって、言ったでしょ?」


 言ったっけ?

 記憶にないが……。


 あ、「一颯君も、どう?」っていうの、“一緒に”って意味だったんだ。


「でも、先にって……」

「一颯君が上がるの待ってたら、風邪引いちゃうでしょ」


 言われてみれば、確かにそうだ。

 早く入らないと、風呂を沸かした意味がなくなってしまう。


「……あまり見ないで欲しいんだけど」

「わ、悪い!」


 俺は慌てて正面を向いた。

 姿見には愛梨の裸体が映っていたが、しゃがんだことで見えなくなった。


「一颯君、背中、もう洗った?」

「いや、まだだけど……」

「じゃあ、洗ってあげる」

「い、いや、それくらい自分で……」

「いいから、いいから」


 困惑しているうちに、タオルを奪われてしまった。

 そして背中をタオルで擦られる。


「力加減はどう?」

「……もっと、強い方がいいかな」

「これくらい?」

「あぁ、うん……」


 他人に背中を洗ってもらうのは、思ったよりも気持ち良かった。

 こういうのはいつ以来だろうか……。


「小学生の時以来だよね」

「あ、あぁ……う、うん。そうだな」


 小学二年の時くらいまでは、愛梨と一緒に風呂に入ることがあった気がする。

 となると、九年ぶりくらいか?


「はい、終わり。じゃあ、交代ね」

「え? こ、交代?」

「私にだけ、洗わせるの? ほら、立って」


 促されるまま、俺は椅子から立ち上がった。

 そして愛梨は体に巻いているバスタオルを脱いで……。


「お、おい!?」

「なに? ……脱がないと、洗えないでしょ?」


 愛梨は浴室上部のタオル掛けにバスタオルを掛けながら、そう言った。

 俺は慌てて目を逸らす。

 僅かにだが、綺麗な胸の先端が、見えてしまった。


「じゃあ、お願いね」

「あ、はい」


 愛梨から浴用タオルを手渡される。

 俺は石鹸を泡立て、そして愛梨の背中に向き直った。


 白磁のように美しい背中だ。

 思わず、生唾を飲んだ。


 ……ここまで来たら、やるしかない。


「……どうだ?」

「もうちょっと、優しくして」

「こ、こう?」

「うん、ちょうど良いかな」


 俺は、何をしているんだろうか。

 この状況は、異様な気がする。

 だが、冷静になってはいけない気がしたので、深く考えず、流れに身を任せることにした。


「ありがと。じゃあ、残りは自分でやるから。一颯君、先に浸かってて」

「あ、あぁ……」


 俺はいそいそと立ち上がり、逃げるように湯舟に浸かる。

 まだ浸かったばかりなのに、逆上せたように顔が熱い。


 背後ではシャワーの音がする。

 愛梨が体を、正面を洗っているのだ。


 ……不味い、考えると、下半身が!


 俺が自分の性欲と葛藤していると、シャワーの音が止まった。


「一颯君、少し、退いて」

「あ、あぁ……これでいいかな?」

「うん」


 ちゃぷん。

 水音と同時に、水位が上がる。


 どこか分からないが、背中に愛梨の素肌が触れる。


「ちょっと、狭いね。昔は広かったのに」

「俺たちが、大きくなったんだろう」

「そうだね。ところで、一颯君」

「何だよ」

「こっち、見て」

「いや、でも……」

「話し辛いから」


 愛梨に促された俺は、覚悟を決めてから、ゆっくりと振り向いた。

 そこには当然だが、全裸の愛梨がいた。


 大事なところは浴用タオルで隠しているが……。

 タオルが体にぴったりと貼りついているので、体の凹凸はくっきりと浮き出ている。

 そもそもサイズが小さくて、あまり隠せていない。


 何か、逆にエロい。


「あれ? 一颯君……」


 愛梨は大きく目を見開いた。

 

「な、なんだよ!」


 愛梨の視線の先。

 そこは……。


「そ、そんなに、大きかったっけ?」

「バカ、お前、どこ見てんだ!」


 俺は慌てて下腹部を浴用タオルで隠した。


「いや、だって、ほら。小学生の時は、これくらいで……」

「手で示すな!」


 生々しい話をしないで欲しい。


「身長だって伸びるんだから、そこだって、成長するだろ」

「へぇー、そうなんだ。ところでさ」

「今度は、何だ?」

「それって、全力?」


 全力? あぁ……そういう意味か。

 どうしてお前に教えないといけないんだ……と言いたいところだが、これを全力だと思われるのは、嫌だな。


「……半分、くらいだ」

「え、本当? 見栄張ってない? だって、あれの二倍ってことは……」


 愛梨は指でサイズを示した。

 そしてそれを下腹部に当てようとする。


「手で示すな! おい、やめろ!」


 俺は慌てて愛梨の手を止める。

 それは洒落にならない。


「やっぱり、見栄でしょ。さすがに盛り過ぎ。私を前に、全力じゃないとか、あり得ないし」


 愛梨はニヤニヤと生意気な笑みを浮かべながら言った。

 見栄なんて、張ってないんだが。


「幼馴染に興奮するわけ、ないからな」


 もちろん、嘘だ。

 全力じゃないのは、昂らないように、必死に抑え込んでいるからだ。


「ふ、ふーん……そういうこと、言うんだ。なら、私にも考えがあるけど?」


 愛梨は不敵な笑みを浮かべた。

 そして体を隠していたタオルを摘み、ゆっくりと……。


「お、おい! 変なもの、見せるな!」


 俺は慌てて顔を逸らした。

 ギリギリセーフ、見えてない。

 ……いや、ちょっとだけ見えたけど。


 脱毛してるって言ってたの、本当だったのか。


「あれ? 一颯君、どうしたの? 顔、逸らして。幼馴染に興奮するわけ、ないんじゃないの?」

「しねぇよ。ただ、見たくなかっただけで……」

 

 これ以上は、ちょっと苦しいかも……。


「あは、嘘ばっかり。でも、体は正直……え、嘘でしょ?」


 愛梨の困惑声が聞こえて来た。

 どんな顔をしているのか、見たくなり、視線だけチラりと送る。


 目を見開き、手で口を抑えている。

 驚いているようだ。


 試合には負けたが、勝負には勝ったな。


「見栄、張ってないだろ?」

「そ、そうね……」


 愛梨は急にしおらしい態度になった。

 恥ずかしそうにもじもじし、視線を逸らす。 


 いきなりそういう表情しないで欲しい。


「……」

「……」

 

 何だか、急に雰囲気が変わった気がした。

 悪い雰囲気ではない。

 しかし良い雰囲気でもない。


 これは、もしかして……。


「なぁ、愛梨……わっ!」


 ピシャっと、お湯が顔に当たった。

 見ると、愛梨が手で水鉄砲を作っていた。


「おい、やめろ!」


 得意気な顔でお湯を掛けてくる愛梨に、俺は抗議の声を上げた。

 しかし愛梨は生意気な笑みを崩さない。 


「悔しかったら、やり返してみれば? あ、一颯君はこれ、できないんだっけ」


 ……そう言えば、そうだったな。

 昔もこうして、悪戯された。

 当時の俺は、水鉄砲が上手く作れず、愛梨に小馬鹿にされたのだ。


 ……“当時”の俺は。


「ほらほら、どうしたの? やって……キャッ!」


 愛梨は悲鳴を上げた。

 俺はそんな愛梨に容赦なく、手で作った水鉄砲で、お湯を掛ける。


「どうした? 愛梨、手が緩んでるぞ」


 愛梨の手より、俺の手の方が大きい。

 当然、跳ばせるお湯の量も勢いも、俺が上だ。


「ちょ、や、やめて……は、激し過ぎ……」


 愛梨は顔を手で覆う。

 しかし俺は気にせず、お湯を飛ばし続ける。


「こ、この!」


 バシャッ!

 俺の顔にお湯が掛かった。


 愛梨が手でお湯を掬いあげ、俺の顔に掛けたのだ。


「お、お前! そ、それ、反則……」

「そんなルール、ありませーん!」

 

 こ、こいつ!

 そっちがその気なら、こっちだって!


「おら!」


 俺は愛梨の顔に、お湯を掛けた。

 愛梨の表情が歪む。


「けほっ! こ、このぉ!!」


 当然、愛梨も反撃してくる。

 が、男の俺の方が、手も大きいし、筋力も強い。 

 土俵が同じなら、勝つのは俺だ。


「ちょ、ま、待って! ゆ、許して……だ、だめ! あっ!」

「許さない。ほら、手が止まってるぞ! 続けろよ」


 今日こそ、わからせてやる。


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書籍版第一巻、4/15GA文庫様より発売予定です
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