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第2話


「完成!!」

「はぁ……ようやく、できた」


 時刻は正午過ぎ。

 ようやく、雪だるまが完成した。


 サイズは愛梨の身長と同じくらいの高さ。

 そこそこのサイズだ。


「本当は一颯君よりも高くしたかったんだけど」

「無茶言うな」


 共同作業と言えば聞こえはいいが、もっぱら働くのは俺だ。

 大きな雪玉を作るのは、中々、大変なのだ。


「じゃあ、一颯君。写真、撮りましょう」

「はいはい」


 愛梨に言われるまま、雪だるまの前に立つ。

 愛梨は携帯でパシャパシャと自撮りした。


「どれがいいと思う?」

「うーん、これじゃないか?」


 写真の中の愛梨は、満足気な表情だった。

 この笑顔のためなら、頑張った甲斐があったと言える。


「じゃあ、俺はそろそろ帰るから」

「え! どうして?」

「いや、もう作り終えただろ?」


 雪だるまづくりはそこそこ楽しかった。

 が、しかしそれ以上に寒い。

 早く家に入りたいのが本音だ。


「もうちょっと遊ぼうよ」

「いや、寒いし……」


 俺が渋ると、愛梨は途端に不機嫌そうな表情になった。

 不満そうに頬を膨らませる。


「一颯君のいじわる! 冷血漢! えい!」

「冷た! バカ、やめろ!!」


 愛梨に雪をぶつけられる。

 思わず悲鳴を上げると、愛梨はにんまりと生意気な笑みを浮かべた。


「悔しかったら、反撃したら?」

「お前な……」


 雪合戦をしよう。

 そういう挑発だ。


 これに乗ったら、愛梨の思うつぼだ。

 しかしこのまま反撃せず、帰るのも癪だ。


「おりゃ!」

「あっ……! つ、冷たい!! ちょ、やめて!! 早すぎるから!!」

「ほら、反撃してみろ!」

「このっ!!」


 結局、俺は愛梨の誘いに乗ってしまった。

 一時間、俺たちは雪合戦を繰り広げ……。


「あ、あのさ、あ、愛梨……」

「な、なに? い、一颯君……」

「も、もう、や、やめないか……さ、寒い……」


 俺は歯を鳴らしながら、愛梨に和平の申し入れをした。

 お互い温かい恰好はしていたが、雪をぶつけ合っていれば体も冷える。

 それに服も少し濡れている気がする。


「そ、そうね。私もちょっと、寒いかも」

「じゃあ、そろそろお開きということで」


 今度こそ、俺は帰ろうとした。

 が、俺は歩き出せなかった。


「待って」


 愛梨に服を掴まれたから。


「何だよ」

「……えっと」


 自分から引き留めたにも関わらず、愛梨は言い淀んだ。


「実は、今日、パパとママ、いなくて」


 愛梨の父は医者で、母は看護師だ。

 一般的の人の“休日”は二人にとって“営業日”なので、家にいないことが多い。


 これは俺と愛梨が、家族ぐるみで交流があった理由の一つだ。

 休日、俺の両親は愛梨を預かっていた。

 だからいつも二人で遊んでいた。


 今は高校生ということもあり、一人で留守番できないわけではないが、それでも寂しいのだろう。


「……じゃあ、家に上げてくれるか? ここは寒いから」


 結局、愛梨の寂しそうな表情に折れてしまい、もうしばらく付き合うことになった。





「あぁ……靴下はダメだな」


 靴を脱いだ俺は思わずため息をついた。

 分かってはいたが、溶けた雪がしみ込み、ビショビショになっている。


「脱いだら? 床暖房ついてるから、暖かいよ」


 愛梨の勧めもあり、俺は靴下を脱いだ。

 隣を見ると、愛梨も靴下を脱いでいた。


 白く、綺麗な裸足が露わになる。

 何だか見てはいけないものを見た気になり、俺は目を逸らした。


「あーあ、上着まで濡れちゃってる。一颯君がいじわるするから」

「最初に雪を投げつけてきたのはお前だろ」

「それは一颯君が……」


 俺たちは言い合いをしながら、濡れた服を脱いだ。

 お互い、ラフな格好になる。

 そしてリビングの電気ストーブをつけて、体を温める。


「一颯君、もっとそっち行ってよ」

「逆だろ、お前がもっとズレろ。三分の二も使ってるじゃないか」

「ここ、私の家だよ?」

「お前が一緒にいて欲しいって言ったから、いるんだろ」

「そんなこと言ってないもん」


 俺たちは互いに体をぶつけ合った。

 触れ合っている部分は、愛梨の体温が感じられ、温かかった。


「私、こんなに冷えてるんだよ? ほら」

「冷た!」


 愛梨に頬を触られ、思わず悲鳴を上げた。

 確かに愛梨の手は氷のように冷たかった。


 とはいえ、俺だって負けないほど体が冷えている。


「お返しだ」

「きゃっ!」


 俺は愛梨の頬に手を当てた。

 ビクっと愛梨は震えた。


「や、やめてよ! 一颯君のえっち!」

「先にやったのはお前だろ」


 俺は反論しながら、愛梨の手に触れた。

 えっち、えっちと言う割には、愛梨は抵抗しなかった。


 優しく手を摩る。


「これはどうだ?」

「……暖かいかも」


 愛梨は頬を緩めた。

 お互いに体を摩り合い、触れ合いながら、体を温めていく。


 ちょっと、いい雰囲気かも。

 そう思った時だった。


 ――お風呂が沸けました。


 そんな機会音声がリビングに響いた。

 少し水を差された気分になる。


「風呂、沸かしてたのか?」

「……あぁ、うん。後で入ろうと思って」


  雪遊びをしたら、体が冷える。

  だから体を温めるために、風呂を事前に沸かしていたようだ。


「そうか。じゃあ、俺は一度帰った方がいいか?」

「……え? どうして?」


 俺の提案に愛梨は驚いた様子で顔を上げた。

 どうして? と言いたいのはこちらだ。


「俺がいたら、入り辛いだろ」


 同じ屋根の下に男がいるのに、無防備な姿になることに抵抗がある……かどうかは、俺と愛梨の関係性を考えればないかもしれないが。


 しかし俺という来客を待たせているという状態では、風呂で寛げないはず。


「私は気にしないけど……」


 愛梨は良くても、俺が良くない。

 ちょっと、気まずい。


「終わったら、呼んでくれ。俺も家で風呂に入りたいし」


 暖房でも十分、温まるけど。

 愛梨が風呂に入ると聞いたら、俺も入りたくなってしまった。


「……」


 愛梨は電気ストーブを見つめながら、黙り込んでしまった。 

 そんなに俺と一緒にいたいのだろうか?

 疑問に思っていると……。


「じゃあさ」

「うん?」

「……一颯君も、どう?」

「……どうって?」

「お風呂。……ほら、雪以外にも、泥とかでちょっと汚れてるし。早く温まった方がいいかなって」


 愛梨は早口でそう言った。


 俺は少し、考える。

家で沸かそうとすれば時間が掛かる。


 愛梨の家で借りることができれば、手っ取り早く体を温めることができる。


「先、入っていいよ」

「そ、そう? じゃあ、お言葉に甘えて……」


 悩んだが、今すぐお風呂に入れるという誘惑に負け、頷いてしまった。

 脱衣室で服を脱ぎ、浴室に入る。


 後で愛梨が入ることを考えると、汚さないように先に体を洗った方がいい。

 

 そう考え、シャワーで体を濡らし、愛梨から借りた浴用タオルで体を洗っていると……。

 ガチャッ。


 ドアを開ける、音がした。

 思わず、振り向いた。


 そこにいたのは……。


「あ、愛梨!?」


 バスタオルで体を隠した、幼馴染が立っていた。


「お、お邪魔します……」


 仄かに赤らんだ顔で愛梨はそう言った。


本日(3/15)、第三巻発売日です!

ご購入、よろしくお願いします!!

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書籍版第一巻、4/15GA文庫様より発売予定です
i716976
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