第1話
今回は個人的にはお気に入りの糖度高めの話なので、覚悟の準備をしておいてください(ワザップジョルノ風)。
とある学校の屋上に、二人の男女がいた。
一人は背の高い少年で、もう一人は妖精のように可憐な少女だ。
「……一颯君はさ」
金髪の少女は少年に迫る。
「私が……ただの悪戯で、こんなことをするような子だと、思う?」
悲しそうに少女はそう言った。
少女の言葉に少年は動揺の色を隠せない様子だ。
そんな少年に対し、少女は言葉を続ける。
「……私が、好きでもない人に、こんなこと、すると思う?」
少女は問い詰める。
「そんな女の子だと、思ってるの?」
少女の言葉に、少年は後退る。
それに合わせて少女は詰め寄る。
「ねぇ、一颯君」
少女は少年の顔を覗き込みながら、言った。
「一颯君は……私のこと、どう思ってる? 一颯君にとって、私は……何?」
時は少々遡る。
(今頃になって太陽出てきたな……)
一颯は雲の合間から顔を出し始めた太陽を睨みつけた。
本日、一颯たちの高校では水泳の授業が行われた。
授業時間中、ずっと太陽は隠れていて、そして風も強かった。
水温も低く、とてつもなく寒かったのだ。
(……でもまあ、これでプールも終わりか)
今日は最後のプールの日だった。
極寒を味わうのはこれで最後というのが、唯一の救いだった。
さて、一颯が日向ぼっこで身体を温めていると……
にわかに教室が騒がしくなった。
着替えを終えた女子たちが戻ってきたのだ。
そしてその中には愛梨もいた。
「あー、さっむ! 九月にプールなんてやらないで欲しいわね。一颯君もそう思わない?」
愛梨は一颯を見つけると、真っ先に駆け寄り、開口一番に授業への文句を口にした。
丁度、一颯たちがしていたのと同じ話だ。
「その通りだな。正気の沙汰じゃない」
一颯は愛梨に同意するように頷いた。
だよね。と愛梨は頷くと、寒そうに体を震わせた。
「ああ、寒い……一緒に当たってていい?」
「いいけど、焼石に水だぞ」
ようやく顔を出し始めた太陽君だが、まだ本調子ではないらしい。
身体を温めるには不十分だ。
「そうね……あ! ……いいこと、思いついた」
「……いいこと?」
「身体を温める方法。……やりたい?」
ニヤっと愛梨は笑みを浮かべてそう言った。
これは何かを企んでいるな……と一颯は直感したが、しかし本当に身体が温まるならと、頷いた。
「まずはこうして……」
一颯が頷いたのを確認すると、愛梨はカーテンを手に取り、少しだけ閉める。
一颯と愛梨の二人だけが、カーテンの内側に入る形になった。
「こうすると……微妙に暖かくなるでしょ?」
なるほど、確かに太陽の光りが僅かにカーテンに反射することで、先ほどよりは暖かくなった……気がする。
気がする程度だ。もしかしたら、気のせいかもしれない。
「いや、まあ、確かに暖かいけど……」
“いいこと”と言えるほどの物じゃないだろ。
と、一颯が言おうとした……その時。
「えいっ!」
愛梨はそんな声を上げながら、一颯に抱き着いた。
少し冷たく、しかし柔らかい物が一颯の体にぴったりとくっついた。
塩素と、そして一颯が良く知る愛梨の香り――香水の匂い――がした。
「お、おい!」
「ほら、温かいでしょ?」
愛梨はニヤニヤとした笑みを浮かべながら、ますます一颯に自分の体を押し付ける。
二の腕から柔らかい双丘の感触と、愛梨の体温が伝わってくる。
動揺と共に一颯の体温が上がる。
「い、いや……そ、そういう問題じゃ……」
「どういう問題? こうして身体を温めることは、健康にも良いと思うけど」
「い、いや、その、当たって……」
胸が当たっている。
一颯は口をもごつかせながら抗議するが、しかし愛梨は意に返さず、むしろ挑発するように笑った。
「それがどうしたの? もしかして……幼馴染のこと、女の子として、意識しちゃったりするの?」
愛梨は身体をピッタリと、一颯の身体に密着させ、そう言った。
窓側へと一颯を追い詰め、スカートから伸びる足を一颯の足と足の間に割り込ませる。
ビクっと一颯は身体を震わせた。
「ま、まさか……お、お前を相手に、そんなわけ、ないだろ。た、ただ……その、ここは教室で……俺とお前の関係が、その、変に勘違いされるのは良くないかなと……」
「カーテンで見えないわよ? ……ここは二人っきり」
愛梨は一颯の耳元でそう囁いた。
一颯は反論しようと言葉を探るが、しかし動揺のせいか効果的な言葉が浮かばない。
「……もう、いい。好きにしろ」
一颯は「別に負けてない。むしろ許してやっているのだ」と自分に言い聞かせながら、そう言った。
一方で愛梨は妖艶な笑みを浮かべると、小さく頷く。
「そう。分かったわ」
こうして二人は授業が始まるまで、身体を温め合った。
ついに愛梨ちゃんにデレ期が……?
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