第3話
電車を降りて、歩くこと十分ほど。
目的の神社に到着した。
元旦の早朝ということもあり、神社は人でごった返している。
とはいえ、げんなりするほどではない。
あまりに人が少ないとお祭り気分になれないので、このくらいがちょうどいいだろう。
「先に参拝をすませるか」
「そうね」
しかし何を願おうか。
無難なのは「志望校に合格しますように」だが、受験は今年ではなく来年だ。
それにわざわざ願うことではない気もする。
……正直、神頼みをしなくとも合格する自信がある。
愛梨は何を願うのだろうか?
参考に……いや、そうか。
愛梨、か。
――愛梨に勝てますように。この隣にいる生意気な幼馴染に、恋人にしてくださいと言わせられますように。
完璧だな。
参拝を済ませた俺は自画自賛した。
「……一颯君、何、ニヤニヤしてるの? 気持ち悪い。変なことでも願ったの?」
「いや、別に。そういうお前は、何か願ったのか?」
「文転が上手く行きますように」とか、そんな感じだろうか?
俺が思っていると、愛梨は微笑んだ。
「内緒」
「そうか」
俺も愛梨に言えるような内容じゃないし、深堀はできない。
それから俺たちはすぐ側の売店で売られていた、おみくじを買うことにした。
結果は……ふーん。
「……一颯君、どうだった?」
「小吉」
「なになに、えっと……もっと素直な気持ちを相手に伝えましょう、か。へぇー、もっと素直になったら?」
「勝手に読むなよ」
俺は慌てておみくじを隠した。
一方の愛梨はニヤニヤと笑みを浮かべている。得意気な顔だ。
……偶然とはいえ、ドンピシャな内容が当たってしまった。
「そういうお前は、どうだったんだ?」
「あー、うん、えっと……」
「俺も見せたんだから、お前も見せろよ」
「……はい。末吉」
愛梨は渋々という表情でおみくじを見せて来た。
人のことを揶揄って来たくせに、お前の方が悪いじゃないか。
えっと、恋愛運は……。
恋敵に負けたくなければ、きちんと気持ちを相手に伝えましょう。機を逃すと、取り返しがつかなくなります。
……この神社の記述、妙に具体性があるな。
愛梨に恋敵なんていないし、外れてるけど。
いや、実質、俺が敵みたいなものか?
「もう、いいでしょ!」
愛梨はそう言って鼻を鳴らすと、おみくじを閉じてしまった。
恋敵でもいるの?
と、揶揄ってやろうと思ったが、不機嫌そうなのでやめる。
「……後でお守り、買おうかな」
ぽつりと愛梨は呟いた。
どうやらおみくじの内容を気にしているらしい。
「そんなに気にするなよ」
「気にしてないし」
二人で言い合いながら、境内のおみくじ掛におみくじを結び付けた。
これで初詣は終わりだが……。
本番はここからだ。
「何、食べようか?」
「とりあえず、温かいのが良いかな。……甘酒なんてどう?」
「いいね」
早速、目に着いた屋台で俺たちは甘酒を購入した。
二人で一カップだ。
「熱……一颯君、冷まして」
「はいはい」
俺は何度か、甘酒に息を吹きかける。
立ち上る蒸気が少なくなった辺りで、唇をカップに付けた。
慎重に一口、飲む。
「……イケそうだ。ほら」
「ありがとう」
愛梨は俺から甘酒の入ったカップを受け取った。
そして飲み口が被らないように、少しだけカップを回して、唇を付けた。
「温かい……」
愛梨はホッと息をついてから、さらに二、三口、甘酒を飲む。
四口目を飲んだところで、俺は待ったを掛けた。
「俺の分も残せよ」
「あぁー、うん。……じゃあ、残り、全部あげるね」
再度、愛梨からカップを受け取った。
もうすでに甘酒はほとんど、残っていなかった。
こいつ……。
俺は温くなり始めた甘酒を飲み干してから、カップを近くのゴミ箱に捨てた。
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