通行料
メアリとケンは村人に話を聞き、話し合いの結果ここから北東にあるオズボルンという都を目指すことになった。
オズボルンは魔法や魔物に関する資料が多く、蘇生するための知識を得ることができるだろうっと村人は言っていた。
メアリとケンは草原に囲まれた道を北東に向かって歩いていた。
「メアリはオズボルンに行ったことあるのか?」
「3回ぐらい行ったことがあるぞ、全て冒険の経由地点としてな、なかなか賑わっていた都じゃった」
「じゃ、オズボルンの資料はまだ見たことがないのかな」
「そうじゃ、かなり歴史のある都とは聞いていたが、貴重な資料があるとは寡聞にして知らなかったのじゃ」
この異世界での知識が少ないケンはメアリに過去の経験を聞いた。
歩けど歩けど同じ景色の道を二人は歩き続ける。
「ファング・ボーアをあそこにいる」
「あそこか、食料を確保するのじゃ」
かなり遠くの方に大きな猪にツノの生えたような紫色の魔物ファング・ボーアがいた。
ケンは魔法エネルギーで身体能力を強化して素早く距離を積める。
依然ファング・ボーアはケンの気配に気づかずにいる。
ケンはロングソードの一撃でファング・ボーアを仕留めた。
「倒したよ、メアリ」
「魔法エネルギーの使い方が上手くなったな、動きも素早いし気配も消えておったぞ」
遅れてきたメアリに、ケンは報告をする。メアリはケンの成長を感じだ。
二人は魔物を干し肉などに加工した。
それから道に戻り二人はオズボルンを目指す。
「ここら辺にファング・ボーアが出現するのは危なくないのか」
「非力な者は傭兵を雇うのが一般的じゃな」
ケンの疑問にメアリが答える。
傭兵は冒険者が担うことが一般的だ。
冒険者にはE~Sまでのランクがあり、それにより傭兵の信頼度が決まる。
冒険者ランクは依頼を達成した実績が反映される。
メアリはBランク冒険者だ。
ランクに応じて昇格に条件がある。例えばAランクに上がるためには災害級の魔物を討伐するのが条件だ。
Dランク冒険者が一番多く、ランクが上がるごとに人数は減る。
「そういえば、何でメアリはAランク冒険者にならないの?」
「純粋に災害級の魔物に勝てないからじゃな、町や都に災害のような被害をもたらす魔物は悪魔ぐらい強いのじゃ」
「アスモデウスやアモンも災害級の魔物じゃないの?」
「あやつらは悪魔であり魔物ではないんじゃよ、悪魔は討伐という形ではなく指名手配という形をとっておる」
ケンの疑問にメアリは答える。
悪魔には知性があるので指名手配という括りになっている。
「人類は悪魔の被害をどうやって食い止めているんだ、あんなに強いのに」
「Sランク冒険者や、都や街を守護する聖騎士が悪魔の侵攻を食い止めているな」
「人類は悪魔に侵攻されているのか?」
「悪魔は人類を支配することがアバウトな目的じゃ」
ケンの疑問にメアリが答える。
悪魔は何千年も前から特性ともいうべき残虐性で人類を脅かしてきた。人類はそれに対抗するために聖騎士団を組織した。
しばらく歩いていると川に掛かっている橋が見えてきた。
そこには槍を持つ男が一人立っている。
ケンとメアリはその橋を通ろうとした。
「おい、お前ら止まれ」
橋にいた男が槍で道を遮る。
「なんだ、お前」
ケンは槍の男に応えた。ケンとメアリは仕方なく止まる。
「俺はジャック、この橋を通りたければ通行料を払え」
と槍を持った男は言った。ジャックはガタイのいい獣人の男だ。
「いやだと言ったら、その槍で突き刺すのか」
ケンは通行料に不服な態度を示す。
通行料といったら高速道路だけど、それ比べたらこの橋はちんけで、お金を払う価値があるとは思えない、だが異世界だと価値基準が違うのだろうか。それともこの橋の通行料は悪徳商売なのだろうか。とケンは考えた。
「ああそれもやむ得ない」
とジャックは強気にいう。
ケンとジャックは武器を向けあい一触即発の状況になる。
「お主たち、少し待たれよ、ジャックと言ったか、お主のいう通行料には根拠があるのか?」
メアリは二人を静止した。
「あ、あるさ、この橋は俺が作ったんだ」
「お主が、一人で作ったのか」
「一人ではないが、別にいいだろ」
メアリがジャックを問い詰める。
「ジャックは得た金を何に使うのじゃ」
「生活が苦しいんだ、兄弟たちに満足な飯を食わせるためさ」
「そうか、ジャックは通行料をいくら取るつもりなんじゃ」
「一人銅貨三枚だ」
メアリの問いにジャックが答える。
銅貨は一枚100円程度だ。
「そうか、力ずくで集金することに心は痛まないのか」
「金がなければ生きていけない、通行料は当然の権利だ」
メアリの問いに怒り、ジャックはメアリに槍を向ける。
「残念じゃが、わしは払わぬぞ、ジャックの主張する権利は盗みと同じじゃ」
「じゃ、俺たち兄弟はどうやって生きていけばいいんだよ」
メアリの言葉に、ジャックは苦悩を吐露する。
「必死に働いて養うんじゃ」
「俺が一人働いたところで無駄だよ」
「なぜ無駄なんじゃ」
「労働の報酬は少なく、奴隷のようにこき使われるから、やる気もない」
メアリとジャックは橋の手前で尚も話す。
「報酬が少ないならもっと働けばいいんじゃよ、奴隷のようにこき使われようが我慢すればいいんじゃよ」
「なんでそんな地獄みたいなことをしなくちゃいけないんだ」
「この世界の痛みを知るためじゃよ、病で苦しむ人、虐げられて苦しむ人が大勢いる世界で、楽してばっかじゃ不公平じゃろ」
「そうだな、必死に働いてみるよ、二人の名前は?」
メアリの言葉にジャックはあっさり納得して道を開けた。そしてメアリとケンに名前を聞く。
「わしはメアリ、こやつはケンじゃ」
メアリは自己とケンを紹介した。
それからケンとメアリは橋を通ってオズボルンを目指した。