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大剣使いの悪魔

 背中から大剣を突き刺された盗賊は大剣の持ち主に声をかける、


「マモン様、何を」


「雑魚は死ね、迷惑だ」


 マモンと呼ばれた大剣の持ち主は盗賊の背中に突き刺さった大剣を引き抜き言った。


 マモンは黒いツノが2本、赤い髪に黄色い瞳をした女の悪魔だ。体に不釣合いな漆黒の大剣を軽々と振り回す。


「マモン様、御慈悲を」


「村の金すら集められない雑魚は用無しなんだよ、死ね」


 残りの四人の盗賊はマモンに命乞いをするが、マモンの大剣により八つ裂きにされた。


 ケンとメアリはその悲惨な光景を見て唖然とする。メアリはすぐに平静を取り戻し言う、


「マモンよ、お主が盗賊の頭じゃな」


「そうだぜ、確かお前は半魔のメアリだな、私はマモン、強欲なマモンだ、そこの生きのいいゾンビには名はあるのか」


「俺の名はケンだ」


 メアリの問いかけにマモンが応じる。ケンはマモンに名乗った。


 アモンは大剣についた血を振り払うために剣を振り回した。


「アモンよ、盗賊のした代償は今ここで償ってもらう、復活せよ愚かな屍よ」


 メアリの言葉により、アモンに八つ裂きにされた盗賊の5体の屍が動き出す。


 盗賊のゾンビには理性はなく、生前持っていた武器でアモンに襲いかかった。


 盗賊ゾンビはメアリの力が上乗せされているので生前よりも強い。


 しかしアモンは5体の攻撃を華麗にかわす。


 アモンは盗賊ゾンビのダガーを大剣で腕ごと弾き飛ばす。


「代償?こんな弱いんじゃ代償にならないね」


 アモンは余裕の表情で言う。


「ところでアモン、お前はなぜ味方を手にかけた」


「そんなの簡単さ、雑魚の食いぶちを減らすためさ、私は強欲でね、お金が大好きなのさ、手に入れたいもののためだったら何だってするさ」


 ケンの疑問にアモンが応えた。


 ケンは底知れぬ怒りが込み上げてきた。確かに存在する上下関係、利害関係そんな優しくない関係があるという事実に対する怒りだ。


「そんな理由で、殺すことはないだろ!」


「あれれ、怒っちゃったのケン、お子ちゃまだね、お金を稼ぐことがどんなにシビやからわからない君は一生親の脛をかじって生きていくんだね」


 ケンはアモンに怒りを向けた。怒ったケンをアモンは軽くあしらう。


 そうこうしている間に、五体の盗賊ゾンビは全てアモンによって制御不能のバラバラにされてしまった。


「くっ」


 メアリは盗賊ゾンビがやられた反動を受けて膝をついた。


「アモン!全身全霊でお前を倒す」


「いいね、かかってきな」


 ケンは剣を両手で持ち、上からから振り下ろす。その斬撃をアモンは片手で持った大剣で軽々受け止めた。


 まるで大岩に剣を振り下ろしている感覚、びくともしないアモンの大剣にケンは力の差を痛感した。


 勝てない、負けた、アモンと俺との間には百に一つの強運があってしても勝てない力の差がある。くそっ、また弱気になっている。だめだ弱気のままでは決して強くはなれない。絶対に勝てなくても、戦おう。強くなるために。とケンは思考する。


 ケンはさらに斬撃を叩き込む、それをアモンは全て大剣で受け止める。


「倒す、必ず倒す」


「弱い、弱すぎるよ、ケン」


 ケンの戦う気持ちは本物だ。だがそれをアモンは余裕でいなした。


「ケンよ、わしがサポートする」


 メアリはそう言うと、数十体のゾンビを召喚する。


 數十体のゾンビは一斉にアモンに飛びかかる、大剣で吹き飛ばされるが数の力でアモンを抑え込んでいる。


「はぁ、はぁ」


「大丈夫か、ケンよ」


「大丈夫、絶対に勝てないと思っていても、戦い続けないと強くなることはできない、勝つために無謀な戦いに挑むと決めたよメアリ」


「その心意気はきっと大切なことじゃ、わしも全力で戦う」


 ケンの心意気をメアリは評価した。


 ケンはアモンの背後に回り込み、斬撃を浴びせる。それをアモンはまるで後ろに目がるかのように的確に大剣で弾き返した。


「死角がないのか」


「雑魚だね、殺気というか、魔法エネルギーのオーラがダダ漏れなんだよね、そろそろ死んじゃいな」


 アモンはそう言うと漆黒の大剣を振り回し、複数体のゾンビと共にケンを巻き込み吹き飛ばした。


 ケンは木々を薙ぎ倒しながら吹っ飛び、やがて止まった。


 昏倒する意識、骨が折れてうまく機能しない体の中で、ケンは立ち上がる。


「諦めない、たとえこの命尽きようと、報われない努力だろうと、俺は報われるために戦っているのではない、ただ戦い勝とうとすることが生き甲斐なんだ」


 ケンは自分に言い聞かせるように呟いた。


「ケンは弱すぎる、報われるはずがない、少なくとも今の実力じゃ絶対に私に勝てない。今の実力じゃ戦うことすら無駄だよ」


 アモンは周囲のゾンビを吹き飛ばし言った。


 ケンは吹き飛ばされて開いた距離を積め、攻撃を仕掛ける。


「アモン!戦い続けることがもっともお前を倒せる方法だ」


 ケンの全力の斬撃はまたしてもアモンの大剣に防がれる。


 メアリの召喚したゾンビがアモンに襲い掛かるが、アモンの蹴りで一掃される。


 蹴りで片足立ちになりながらも、びくともしない大剣にケンは驚嘆する。


「ケンは思ったよりも丈夫なんだね、次はこんなのはどうかな」


 アモンは大剣をケンに向けて振り下ろした。振り下ろした風圧でメアリの召喚したゾンビは吹き飛ぶ。


 ケンはロングソードで大剣を受け止めるが、プレス機で潰されるような圧を感じる。


 ケンはあまりの剣圧に膝をつきつつ、大剣を受ける。


「負けてたまるか、潰されてたまるか、ぬぉぉおおお!」


「ケンはここでべちゃんこになるんだよ、ささっと死ね」


 ケンは根気で耐える。それでもアモンの攻撃は着実にケンを潰してゆく。時間と共にケンは潰れてゆく。


「わしもいることを忘れるな」


 メアリが振るった杖がアモンの脳天に直撃する。アモンはメアリの急襲に体勢を崩した。


「痛ってぇなぁ、メアリ」


 アモンはケンへの攻撃をやめ、メアリを睨む。


「俺はお前を倒す、倒すぞ」


 ケンは剣でアモンを突こうとする。


 しかしケンの突きはアモンに剣先を握られる形で封じられる。


「だから、ケンじゃ私を倒せねぇよ、もうめんどくせぇ、金にもならねぇこんな戦いもうやめだ、じゃあなぁ」


 アモンはそう言うと、村の外に消えていった。


「今修復するぞ、ケンよ」


 ケンは力尽きて横たわる。メアリは魔法でケンの骨、皮膚、筋を繋ぎ合わせる。


「ありがとう、メアリ、今回の戦いは諦めずに戦い切れてよかった」


「そうじゃな、ケンはよく頑張った」


 ケンはアモンに全く歯が立たなかったが、やり切った達成感を感じていた。


 メアリはケンの勇気を称賛した。

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