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アモン盗賊団捕縛作戦

 アモン盗賊団の根城である巨塔前にてアモン盗賊団捕縛作戦が始まった。それは両者遠距離攻撃を打ち合う形で開戦した。巨塔の周囲は小さな丘と何もない草原が広がっていて見晴らしがいい。


 火球、水弾、石弾、弓矢などが無数に飛び交う危険な状況で、防御手段として土魔法が使える者が土壁を生成する。


 しばらく膠着状態が続くかに見えたが、聖騎士ノーツが一人正面を突破を始めた。ノーツはさまざまな遠距離攻撃を交わしながら敵の陣に突っ込んだ。飛翔物により兜が外れブロンドの髪が靡く。


 ノーツは敵陣に入ると接近戦を開始した。そして剣を振り上げた。


「今だ、全軍突撃!」


「「おおぉぉぉぉ」」


 ノーツの掛け声と共に200人の味方が声を上げ敵陣に向け走り出した。


 ノーツが敵陣で奮戦しているお陰で遠距離攻撃が減り味方は敵陣まで到達することができた。そして激しい戦闘が始まった。五人一組で臨機応変な対応を考えるのだが、敵味方入り乱れそれどころではなかった。ただノーツの戦いぶりに皆が強い勇気をもらい指揮は高い。


 そしてアモン盗賊団の巨塔前は壮絶な乱戦になった。魔法と剣の戦いだ。打ち上げ花火でも見ているような錯覚をする、それだけこの戦場はカオスだ。


 その中で聖騎士ノーツの一際目立っていた。


 ノーツは盗賊を次々薙ぎ倒しながら戦場を駆け抜けた。その力は到底人間とは思えぬほどで、鞘に収めたままの剣で盗賊を軽々吹き飛ばす。まるでノーツの周りに竜巻が発生しているかの如く、盗賊が吹っ飛ぶのだ。


 ノーツが戦場を駆け抜けている中、突然巨塔から何者かが降ってきた。落下の衝撃で周囲の兵士を戦闘不能になる。そいつは漆黒の大剣を持ち、赤い髪に黒い二つの角を生やした女、悪魔アモンだ。


「全ての命を私に奪わせろ!」


 悪魔アモンは周囲の者を大剣で切り刻みながら叫んだ。


 それから悪魔アモンの惨殺は止まらない。ある騎士は腹に大剣を突き刺され、ある冒険者は首を大剣で刎ねられ、まるで死神のごとくアモンの歩いた後には屍だけが残った。


 盗賊たちの指揮がはね上がる、熱狂的な信仰、悪魔アモンに対する憧憬、狂ったように盗賊たちは奇声を上げた。しかし盗賊たちはアモンに近づこうとしない、自分達も例外なく命を奪われると分かっているからだ。


 そして竜巻と死神がぶつかり合う、ノーツの剣とアモンの大剣が轟音をたてながら衝突した。


「アモン、これ以上君の好きにはさせない」


「聖騎士の命を奪うことほど楽しいことはないかな」


 聖騎士ノーツと悪魔アモンは言葉を交わす。


 ノーツは鞘から剣を抜き取り、刃を露わにした。刃は太陽の光により銀色に光り輝いた。


 それからアモンは地面を抉りながら大剣を振り上げ、ノーツを切りつける。細い腕からは想像もできない力をアモンは見せる。それをノーツは剣でいなすが、あまりのパワーに体に回転がかかり、転げ回る。


 ノーツは転げ回ったあと、すぐに体制を立て直し、反撃を仕掛ける。ノーツはアモン目掛け突進し剣で刺突を試みた。アモンはそれを大剣で防いだがノーツの刺突に押される。

 地面は刺突の勢いを止めるには脆弱で踏ん張れず抉れる。そしてノーツの刺突に押され続け、アモンは巨塔に激突した。その衝撃でアモンは血を吐く。


「どうだ」


「効いたよ、聖騎士、だけどお楽しみはこれから」


「どういうことだ、アモン」


「目覚めよ巨塔のゴーレム、その圧倒的な質量で、命が無残に叩き潰される絶景を私に見せろ」


 聖騎士ノーツの剣を振り払い、アモンは狂気な笑みを浮かべそう言った。すると巨塔の石材が複雑に動き、高さ五十メートルほどのゴーレムになった。


 そしてゴーレムの拳が降ってくる、初めの一撃で敵味方関係なく数十人の者が叩き潰された、そして二撃目はノーツに向かってきた。


 聖騎士ノーツはゴーレムの拳を剣で受け止めたが膝下まで地面に埋まり、両手で剣を支えている。そしてがら空きになったノーツの脇腹にアモンは強烈な蹴りを加えた。それによりノーツはくの字の体制になり、そのまま数十メートル吹っ飛んだ。


 ノーツは血を吐き、口端から血を垂らしながら、歯を食いしばり、ボロボロになった内臓の痛みを無視して立ち上がる。


 僕が守らなければ、既に多くの犠牲を出してしまったが決して諦めるわけにはいかない、ケンにどちらかを任せるべきだろうか、でもケンは今盗賊の相手で忙しそうだ、ここは僕が一人で、と聖騎士ノーツは思考する。


「聖騎士、お前が諦め降伏するというのなら、他の奴らを見逃してやってもいいが」


「悪魔の戯言など聞き飽きた、アモンは僕が必ず倒す」


「私たち悪魔のことよく分かってるね、さすが聖騎士、でもどこまでもつかな」


 ノーツがアモンに切り掛かる、それをアモンは大剣で受け止め、ノーツの背後からゴーレムが拳を振り下ろす。ノーツは振り下ろされた拳を紙一重で躱した。拳の衝撃で地面が波のようにうねる。


 それから聖騎士ノーツ対悪魔アモンと巨塔のゴーレムの激戦が繰り広げられる。


 劣勢でノーツの傷は増えるばかりだ、ゴーレムの打撃で骨が砕け、アモンの斬撃で肉が切れる。それでもノーツは絶望的な状況の中で抗い続ける。


「そろそろ、命を奪わせてよ、聖騎士」


「これ以上、アモンには何も奪わせやしない」


 アモンに聖騎士ノーツが応える。だがノーツは塔のゴーレムが目覚めてから悪魔アモンに有効打を当てれずにいる。


 アモンはゴーレムに守られていて倒しにくい、だからゴーレムから倒そう。ゴーレムは自身の壊れることを躊躇していないのは今までの戦闘でわかった、とノーツは血みどろになり酩酊する意識の中思考する。


 ノーツはゴーレムの振り下ろされる拳に合わせて剣を降りゴーレムの拳を砕く、もちろんノーツの両腕は衝撃でただでは済まない。だがそれを何回も繰り返し、ゴーレムの両の拳を完全に粉砕した。アモンの攻撃には回避に徹して、消耗を抑えている。


 ノーツはゴーレムの体を超人的な運動神経で駆け回りながら砕く。アモンの大剣の斬撃はひたすら躱す。

 そしてゴーレムの両腕の肘まで砕き、片足の膝下までを砕き、頭を半分砕き、胴体を三割ぐらい削り、ゴーレムは完全に機能を停止させ轟音をたてながら崩壊した。


 ノーツの体はもう限界だった。だが精神はまだやれると体に鞭打って動かす。


 何度もノーツの剣とアモンの大剣がぶつかり合う。その度に衝撃波が生じる。


 終わりの時は突然訪れた、ノーツは己の体を動かすことができなくなった、これは拘束魔法ではなく、ただ単純に体の限界を迎えたのだ。

 その隙にアモンは手刀でノーツの心臓を抜き取った。


 ノーツの心臓はアモンの手のひらでドクドクと動く。


 ノーツは血を吐き歯を食いしばり、最後の力を込めた渾身の斬撃をアモンに浴びせる。その斬撃はアモンの角を一つ切り落とした。


 そして聖騎士ノーツはうつ伏せに倒れた。


 ここまでか……守りきれなかった、だけどやり切った、悔いはあるけど僕はこの最後を受け入れて死ぬだろう、ケンどうかアモンを倒してくれ…………。ノーツはそう思考して永遠の眠りについた。

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