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聖騎士ノーツ

 盗賊の襲撃から五日、港町ルネーブは復興しつつあった。そして聖騎士ノーツから話があるとケンとウルは城に呼び出された。


 呼び出された城の一室に聖騎士ノーツはいた。青い瞳にはどこか決意した覚悟が感じ取れた。


「単刀直入に言おう、僕たちはアモン盗賊団捕縛作戦を実行する、近郊にあるアモン盗賊団の根城を叩く、二人も参加してくれないか」


「そういうことなら、俺は参加するよ」


「私も……参加する」


 聖騎士ノーツの提案にケンとウルは承諾した。


「助かるよ、味方は多いことに越したことはない」


「味方は何人ぐらいいるんだ、それに敵の数は?」


「味方は200、敵は300といったところだ、兵士、冒険者、さまざまな者が参加する」


「数では劣勢なのか」


 ノーツの状況説明にケンは難しい顔をした。

「数では劣勢だ、だが僕たちは精鋭だ、二百人でも対処できると考えている」


「そんな簡単ではないと思うぞ、本当に悪魔アモン打倒が可能だと思っているのか?」


「ああわかっている、悪魔アモンが強敵なことは良くわかっている、だが現状この街では二百人の戦力を集めるので精一杯だった、再び襲撃される前に攻撃を仕掛けることが最善だと考えている」


 ノーツは作戦の経緯をケンに説明した。


「それから、五日前の盗賊襲撃の被害は千人以上の死傷者を出した、これは僕たち聖騎士の失態だ」


「責やしないさ、でも予測はできなかったのかよ」


「警戒はしていた、しかしアモン盗賊団が総攻撃を仕掛けてくるとは考えていなかった、アモン盗賊団はいつもは少数で盗みをする組織だったので、それがこんな戦争みたいなまねをするとは……」


 ケンはノーツに襲撃を予測できなかったのか聞いた。それにノーツは盗賊の襲撃の話をしつつ頭を抱える。


「敵は300ということだが、強さはわかっているのか?」


「ある程度は今までの事件でわかっている、Sランク冒険者級の強さを持つのはおそらくアモン一人だろう、それからAランク冒険者級の強さを持つものが十人はいるだろう、Bランク級三十人、Cランク級百人、Dランク級百六十人といったところだ」

 ケンの質問にノーツはアモン盗賊団に戦力を話した。


「それからアモンは責任を持って聖騎士てある私が相手をする、二人は他の盗賊を相手してくれ」


「俺もアモンと戦うよ」


「もしも僕が敗れることがあったらその時はよろしく頼む」


 ノーツは真面目な顔で言った。


「ところで、近郊にアモン盗賊団の根城があるってすごく危険だな」


「それがおかしなことに、突然街の近郊にアモン盗賊団の根城である塔が出現したんだ」


「今まではそこに何もなかったのか?」


「廃墟とかはあったが、あれほど目立つ塔はなかったと僕たちは記憶している」


 ノーツは塔の出現をケンに話す。


「なら断言はできないんだな」


「ああそうだ、絵や文字の記録には残っていない」


 ケンは塔の謎に知り、考え込んだ。


「ところで、盗賊は捕らえたあとどうするのよ」


「盗賊は全員捕らえて更生させようと考えている」


「私は反対だわ、あんな碌でなしどもは更生させず一生刑務所にぶち込んでおけばいいのよ」


 ウルはノーツの考えに反対する。


「そうしたい気持ちはわかる、いや本当の意味ではわからないのだろう、だが盗賊たちにもアモンに従う事情がある僕は思う、それは貧しい環境かもしれない、愛のない環境だったのかもしれない、とにかく奇しくもこの世界にはそうしたとしても仕方がない劣悪な環境があると僕は思う。だから更生する機会を与えたい」


「ノーツもあの襲撃現場にいたでしょ、盗賊たちは殺しを楽しんでいた、まだ幼い子供も躊躇なく殺していたわ、人の尊厳をことごとく踏み躙り、自分達の益のために他人を殺していたわ、私は許せない」


 ウルは襲撃を思い出しながらノーツに反論した。


「僕だって、ウルだって自分の益のために人を蔑ろにしているはずだよ、僕は聖騎士だ、天使から特別な力を授かっている、人から感謝されることを恨まれることもたくさんある、きっと僕が聖騎士になっていなかったら他の誰かが特別な力を授かっていただろう、その他の誰かの機会を奪っているのはこの僕なんだ、だから僕は許したい」


「更生したフリをしてまた悪さをするかもしれない、ノーツの身近な人が殺されるかもしれない、体を痛め永遠に痛みに苦しむかもしれない、精神を壊され廃人になるかもしれない、一生罪悪感と後悔に蝕まれるかもしれない、それでもノーツは彼らに二度目のチャンスを与えるの?」


「ああ、適切に更生させた上で、二分の一の確率で次の日に僕が彼らに殺されると決まっていようと、彼らに二度目のチャンスを与えると思う」


「私はそんなの絶対に嫌だわ、自分が殺されるのも、大切な人が殺されるのも絶対に嫌だわ、きっとノーツは誰も自分すらも愛せていないんだわ、だからそんな危険を犯すことができるのかもね」


 依然、ノーツとウルは言葉を交わす。


「確かに僕は誰も愛せていないのかもしれない、でもそれでいい、僕は聖騎士として博愛主義者として皆に平等な機会を与えたいと思うことができるのだから」


「平等な機会ですって、この理不尽な世界に少しでも平等が実現できると思っている時点でノーツの頭の中はお花畑としか思えないの、ノーツの考えはこの世界で多くの血を流すと思うわ」


「僕の考えが多くの血を流す理由を教えてもらいたい、そしたら考えを改めよう」


「大切な人を愛せないと簡単に大切な人を切り捨てるようになるわ、だから危険な選択をすると思うの」


「ウルは大切な人のために他人を切り捨てるのだろう、僕はできるだけ平等に切り捨てる、歴史には平等を望んで破滅した人も、大切な人を愛し破滅した人もいる、だから最後の最後まで議論しよう」


「わかったわ、引っ捕えたあとにじっくり話し合いましょう」


 ノーツの言葉に納得したようで、ウルはひとまず結論を先延ばしすることに同意した。

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