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海底神殿

 ケンはウルが受けていた依頼、海底神殿の秘宝の入手に同行することになった。


 そして今は手漕ぎ船で海底神殿の頭上まできた。手漕ぎ船をここに固定するためにアンカーを落とす。


「私の魔法バブルボンベで頭全体を泡で包み込むと約30分は息継ぎしないで潜ることができる」


「30分経ったら泡が割れるのか?」


「そうだよ、酸素が一定以下に減ると割れるようにできてるの」


 ウルは浜辺で魔法の説明をする。ケンとウルは事前に潜るための水着に着替えている。


「30分までに浮上しないと溺れるということか」


「そうなるね、空気のないところでは水魔法バブルボンベは作れないから」


 魔法について一通り話終え、二人は海に飛び込む。海は冷たく、波はそれほど高くない。


 頭を包む泡越しに見える海中はとても綺麗だ。魚がたくさん泳いている。


 二人は十分ほど潜り海底神殿に到着した。


「割とあっさり見つかったな」


「そうね」


 ケンとウルは水深40メートルくらいにある海底神殿に降り立った。


 大きな扉があり、ケンとウルは片方ずつ押すと、わずかに扉が開いた。


 中は長い通路になっていた。二人は周囲を警戒しながら進んだ。


 しばらく進み、二人は上に登る階段を発見してそちらに進む。上階には空気があり、ウルは頭を覆う泡を壊し、その空気を吸った。


「ここの空気大丈夫そうよ」


「そうか」


 ウルはケンのバブルボンベも割った。


「そういえば、シャドウ戦の時ケンはなんで私を助けてくれたの?」


「そりゃ、困っている人を助けるのは当然だろ」


 2階の通路を歩きながらウルが聞く。


「私だったら逃げていたよ、あんな倒す方法がわからない敵に立ち向かうことはできない」


「じゃなんで俺をおいて逃げなかったんだよ」


「そんな薄情なことはできないよ、これは優しさではなくて責任かな」


「責任と優しさって同じじゃないか?」


 ウルはシャドウ戦でなぜ助けたのかをケンに聞いた。


「全然違うよ、責任はそれが果たされることを期待してもいいけど、優しさはそれを果たされることを期待しちゃダメなの」


「じゃ、みんなにもっと優しくなってくれ、助け合ってくれって期待しちゃダメなのか」


「うん、世界は残酷で期待は必ず裏切られ、期待すればするほど優しくはない現実に押し潰されるの」


「でもウルを助けたことは間違ってなかっただろ?」


 ウルは天井を見ながら歩く。ケンはウルの顔を見る。


「うーん、私は助かって感謝しているけど、間違っていたよ、ケンが私を助けるという行為には助けて当然という思い込みがある、その思い込みがある限りケンは現実とのギャップに苦しみ続けることになる」


「助けるのはいいことだ、気分が良くなる」


「でも当然だとは思わない方がいいと思う、世界には人が苦しむのを望んでいる人だっているんだから」


「助けるのが当然だとは思わない方がいいか……、確かに当然だと思い他人に期待していたところがあった」


 ケンは顎に手を当てて少し考えながら言った。


「人に優しさを求めてはいけないよ、確かに全ての人が優しくなれば世界は平和になると思うよ、でもね全ての人が優しくなるなんてあり得ないの、戦争、いじめ、差別があるようにね」


「俺の優しくあるべきという考えは間違っているのかも、優しさは全てを包み込むと信じていたけど、世界はそれを許さなほどには残酷だったってことか」


 何かあるごとに優しくあるべきと布教してきた自分の身勝手さに気づきケンは自分を嘲笑った。いやこの世界を嘲笑ったのかもしれない。


「世界は優しくはなく、人は嫉妬深く利己的で陰湿で攻撃的でだから、優しさを期待することはケンを破滅させることになるの」


「そうかもな」


 ウルの優しさ論にケンは自分の信念が揺らいだのを感じた。


 それからウルは目に赤い宝石が埋め込めらた石像を見つける。


「この赤い宝石もらっちゃってもいいかな」


「どうなっての知らないぜ」


「もらっちゃおっと」


 ウルが右目の赤い宝石を触るのと同時にここ二階に轟音と共に水が流れ込む。


「やばい、やっちゃった」


「どうするんだ、溺れるぞ」


「とりあえず水魔法バブルボンベを作ろう」


 すごい勢いで水位が上がり流されそうになりがから、頭を泡で覆った。


 そしてすぐに二階も水で満たされた。


「今なら石造の赤い宝石とっても大丈夫かな」


「触らぬ神に祟りなしだ、やめとけ」


 宝石を取ろうとするウルを止め、二人は泳ぎながら引き続き周囲を探索する。


 再び上階への階段を見つる。


「なんか都合よく、階段が見つかってないか?」


「そうかな、私は普通だと思うけど」


「なんか誘導されてい気がする」


「そうかもね、警戒して進みましょ」


 ケンとウルは三階に登るとそこには空気があった。空気が有毒ガスでないかを警戒した上で二人は水魔法バブルボンベを壊した。


 二人は三階を歩き続けていた。


 光る石で石造の神殿は照らされている。三階は二階にまして豪華絢爛だ。


 二人はさっきの過ちを繰り返さないように歩みを進める。


 ウルがあることに気づく。


「なんか気分が良くなってきた」


「確かにテンションが上がってきたな」


「変なものが空気中に含まれていた可能性があるかもね」


「それはやばいな、ハハハ」


 二人は気分が良くなり、顔を見て笑い合う。


 それからウルが何とか平常心を保ちながら話す、


「一旦引き返そうか……」


「このままでも問題ないよ、ハッハハ」


「だよね、ハハハ」


 しかし二人は楽観的になり探索を続行した。ケンはポジティブ思考になりこの妙な現状などどうでもよくなっていた。


 二人は進みならひたすら笑った。今の二人にとっては何もかもが面白かったのだ。


 そうこうしていると前方に魚人間のような魔物と対面することになった。その魔物は青色で人型をしているが鱗と鰭があり、顔は牙の鋭い魚だ。


 魚人間はびちゃびちゃと音を立てながら走ってくる。その瞳には殺気がある。


 ハイテンションの二人を気を引き締め武器を構えた。


 魚人間はケンの首筋を噛みつこうと大きな口を開ける。


 ケンはロングソードを噛ませ、それを防いだ。魚人間はロングソードを噛み砕こうとギィギィと鋭い牙を左右に動かす。


 それからケンは魚人間の腹に蹴りを入れ吹き飛ばした。


 倒れた魚人間は素早く立ち上がり、口を大きく開き、ケンたちを威嚇した。


「これは幻覚か、人型の魚なんているのか」


「幻想ではないよ、魚人間はいて、凶暴な魔物なの、知性はなく海底に生息している」


「空気でも呼吸できるのか?」


「わかんない、でもできるんじゃない、ここにいるわけだし」


 ウルは魚人間について話す。


「見逃してはくれなそうだな」


「そうね、倒さないとこっちがやられるの」


 二人は武器を構えた。ウルは魚人間に斬撃を加えようとする。それを魚人間は肘から伸びる硬く鋭いヒレで受け止めた。


 それからウルは水魔法ウォーター・ジェットを左手から放つ。魚人間はその水弾をバックステップで交わした。


「知性がないって本当か、随分的確な戦い方だが」


「人型だから知性があるように見えるだけ、どんな動物だって獲物を狩るのはプロフェッショナルなんだから」


 魚人間は異様で妖怪みたいな姿は強い恐怖を覚える。


「なんか恐ろしいな」


「そうかな、普通の魔物だけどな」


 ウルは魚人間を見ても怖くないようだ。日本育ちのケンは自分がゾンビであるとも忘れて恐怖で鳥肌が立つ。


 魚人間はびちゃびちゃと走ってくる。近づく前にケンは伝雷を放つ。


 ケンの右手から放たれて稲妻が魚人間に直撃する。


 魚人間は黒く焦げ、煙るを上げななら倒れた。


「倒したよな」


「そのようね、ちゃっちゃと先に進みましょう」


 二人は動かない魚人間を確認して依頼内容である、神殿の秘宝を探す。


 しばらく探し回ると大きな丸い宝玉を見つけた。


「この丸い宝玉が神殿の秘宝かな」


「多分それだね、とりあえず持ち帰ろう、またトラップがあるかもしれないけど」


 ケンは丸い宝玉を取る。


 案の定水がすごい勢いで流れ込み、三階を浸水させる。


 ウルはバブルボンベを使い、三十分の猶予をつくる。


「目的も果たされたし海底神殿を出ましょ」


「そうだな、って魚人間が!」


 通路を塞ぐほどの無数の魚人間が二人を目掛け泳いで襲ってきた。魚人間の水中での動きは早く、二人の水中での動きはあまりにも遅い。


 ケンは伝雷を放ち多くの魚人間を倒したが、残った魚人間に足を噛みつかれ引きずられる。


 それからケンは引きずられ続け、ウルとはぐれた。暫く踠き足に噛み付いた魚人間の頭にロングソードを突き刺し倒した。


 ケンはウルを心配になり、元いた場所まで戻ろうとするが、入り組んだ神殿の通路で迷う。


「ウル!」


 泡の中から叫ぶがこの声がどこまで届くのかはわからない。


 ケンはただひたすら泳ぎ回った。


 するとウルを見つけた。ウルはところどころ切り傷があるが平気そうだ。


「三体は魚人間がいたのによく無事だったな」


「水中では水魔法は最強な方なの」


 また一体の魚人間が姿をあらわし、突っ込んでくる。


 ウルは水魔法ウォーター・プレスを使う。


 それにより魚人間は二人に到達するまでにぺちゃんこになり、動かなくなる。


 二人は二階におり、さらに一階におりた。


「酸素がもうもたない」


「そうね、早く脱出しましょう」


 何度となく魚人間に襲われて脱出に二人は手こずる。やっとのこと扉に戻ってきたが、その扉が閉まっており開かない。


「何で閉まってるんだ」


「これも神殿のトラップでしょうね」


 ケンとウルは扉が開かないことに焦る。神殿を出る時は引き戸であり、取手もないので力の加えようもない。


「水魔法で扉を引いてみるの」


 ウルは海水をこちらに流すことによって引き戸を少し開けることに成功した。


「ナイス、おりゃ」


 わずかに開いた扉をケンはこじ開けた。


 酸素が切れ二人の呼吸手段である頭を覆うバブルボンベが割れる。それから二人は必死に海面まで泳ぎ地上の空気を吸った。

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