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インテグレイト・チャート  作者: 竜獅子
3/4

新たな項目

 さて。RPGで人の居る場所に着いたらまず最初にやる事は1つしかない。

 その場所の名前を知る為に入り口付近に居る人に話しかける事だ。

 とりあえず衛兵や警備兵らしき人は居ないから入り口から1番近くにいる小太りのおっさんに話しかけてみよう。



『なんだ?お前さん。ここらじゃあまり見ない顔だがどこから来た?それもそんな貧相ななりで。魔物に襲われたら酷い目に遭うだけだぞ。せめて武器の1つくらい持ったらどうだ?……まぁ、別に何をどうするかはお前さんの好みだがよ』



 思った以上に喋るなおっさん!

 そんなにしっかりした会話が突然出てくるとは思ってなかったよ!

 これ、もう一回話しかけても同じ事言うのかな?

 どれどれ。



『何?じゃあ武器と防具を買いたい?それならここの通りを真っ直ぐ行った先に商店がいくつか営業しているからそこに行きな。大体の物はそこで揃う』



 なるほど。このNPCは武器や防具の調達の道標となる役割の人か。

 ここに来てようやく何かの指標となる会話が出来たから素直に嬉しい。

 数時間の間ずっと何をすべきか分からないままがむしゃらにレベリングしていたから喜びもひとしおだ。

 とりあえずおっさんの指示通り通りを真っ直ぐ歩いて商店とやらに行ってみよう。

 じゃあねおっさん!


 ……それにしてもこのゲーム、作り込みがエグいなぁ。

 草原で戦闘をしていた時から思っていたけど、敵や草木のグラフィックはかなりリアルで美麗そのものだったけど、村に入るとそれがまたよく際立って感じられる。

 建物の傷や汚れの細かい描写は本物そっくりだし、すれ違う人々のモーションが一々滑らかでゲームっぽさを感じない。

 それこそまるで映画を観ているようだ。

 ゲームのグラフィック自体は年々向上していってるし、十数年前の時点でほぼ本物そっくりに人や建物を描写する技術は確立されていたからそこまで驚きはしなかったけど、それでもIGNASのグラフィックは他のゲームと比べて頭1つ抜け出ていると確信出来る程に美麗だ。

 これが基本無料の課金制ゲームというのだから、このゲームに賭けるRYSの想いが如何に強いものなのかがよく分かる。

 これだけ凄いものなら一本1万円で販売したとしてもそうそう叩かれる事はないだろうし炎上する事もないと思う。

 私は周りの風景を楽しみながら商店へと向かっていると、ふいに誰かに話しかけられた。



『こんにちは。あなたは現実世界の人ですよね?その衣装、初期設定のままですから一目で分かりました』



 その方向を見てみると、私より少し背の高い赤髪ロングの女性が立っていた。

 そう言えばこのゲーム、オンラインゲームだった事を忘れていた。

 多分やろうと思えばボイスチャットも出来るのだろうけど、ずっと草原でレベリングし続けていたから誰かと話す機会もなかったし、そんなものがあるかも知れないという考えも及ばなかったから実際にチャット機能が実装されているのかどうかすら確認していなかった。

 試しにメニュー画面を開いて《会話》の項目を開いて見ると、タイピングタイプとチャットとボイスタイプのチャットの2つが選択出来る事が分かった。

 現状機材が揃っていないので私はタイピングタイプのチャットを選択し、話しかけてくれた人に対して返信を行う。



『こんにちは。そうですね。私はNPCじゃありません。つい先程この村にやって来ました』


『ですよね。あぁ良かった。初めてこの世界で普通のプレイヤーの方にお会い出来てちょっと安心しました。私はまだ6時間くらいしかプレイしてないんですけど、全然プレイヤーらしき人が居ないからこのゲームは私しかプレイしてないんじゃないかって不安だったんですよ』



 その気持ちはよく分かる。

 オンラインゲームなのにプレイヤーの姿を見掛けなかったら既に廃れてしまったのではないかと心配になるし、皆んなでわいわいやる事を前提に作られたゲームなのに人が居ないんじゃ寂しいしつまらないから。



『私もこうして誰かに会う事が出来て良かったです。このゲーム、事前情報がない上に何をして良いのかすらよく分からないので誰かと情報共有がしたいと思ってたんです。良ければこのまま少しお話しませんか?私はマヤと言います。そのままマヤと呼んで頂ければ大丈夫です』


『全然良いよ!私も誰かと話したかったから!私はシャロン・リーヴ。名前は異国風だけど、日本人だから普通にこのまま喋ってくれたら大丈夫。ついでに敬語も無しで!その方が気楽だし!あ、そうだ!折角だしちょっと試してみたい機能があるんだけどやってみても良いかな?』


『試してみたい機能?』


『そう!メニューの端にある《絆の確立》ってやつ。多分フレンド登録だと思うんだよね』



 シャロンに言われてメニューを開いてみると、確かに《絆の確立》といった項目がある。

 それを開いてみると、【対象となる人を選択して、魂のカケラを渡す事が出来ます】とある。

 そのテキストの下に空のネームボックスがあり、シャロンにカーソルを合わせて選択ボタンを押すとネームボックスに《シャロン・リーヴ》の名前が追加され、1番下に【魂のカケラを渡しますか?YES /NO】と表示された。



『今、開いてみたんだけどなんとなく雰囲気でそんな感じがするね。とりあえずシャロンを選択してみたから魂のカケラを渡してみても良いかな?』


『全然オッケー!』


『じゃあやってみるね』



 私はYESを選択する。

 するとメッセージが表示され、

【シャロン・リーヴに魂のカケラを渡しました】とだけ反応があった。

 それ以外は特に変化はない。

 シャロンの方はどうだろう?



『あ、なんかメッセージが来たね。えっと、マヤから魂のカケラを受け取りました。魂之結合ソウルリンケージを行いますか?だって。言葉は違うけど、フレンド登録みたいなものかな?YESを選択しても良い?』


『うん。やってみて』


『やってみたよ。どう?』



【シャロン・リーヴと《絆の確立》が成功しました。

 《絆の確立》が成功した事により、《仲間》の機能が開放されました】



『絆の確立っていうのが成功して、仲間の機能が開放されたってメッセージが来たよ。シャロンはどう?』


『多分同じ内容が私の所にも来てる。ちょっとどんな機能なのか確認するからしばらく黙るね』


『了解。私も見てみる』



 メニュー画面から《仲間》の項目を選択し、開いてみる。

 すると更にいくつかの項目が表示された。



 《仲間一覧》

 《仲間の現在地》

 《指定の仲間に個別メッセージを送る》

 《魂之結合ソウルリンケージによる恩恵》



 仲間一覧、というのは登録したユーザーの名前を表示する場所みたい。

 そこを開くとシャロンの名前だけがあった。

 そのシャロンを選択してみると、現在のステータスも表示された。



 名前・シャロン・リーヴ

 Lv.3

 職業

 称号

 HP 5/18

 MP 16/16

 SP 55/55

 FP39/100

 物理攻撃力15(+20)

 魔法攻撃力16

 物理防御力13(+15)

 魔法防御力17(+10)

 素早さ17

 運15

 魔法

 能力

 EXP. 18/40



 どうやらシャロンの方が私よりプレイしている時間は長いみたいだけど、レベルは私の方が高いみたい。

 ただ、ステータスの一部が私とは違って基礎ステータスに加えて(+)の値が加えられている。

 多分、これは装備品による恩恵だろう。

 シャロンは見た所左の腰あたりに短剣を携えているし、服も初期装備とは違った衣装になっている。

 敵を倒してもお金を得られないのにどうやって装備を用意したのか後で教えて貰おう。


 次に仲間の現在地。

 これを選択したら、全体的に雲のようなモノで覆われている世界地図が表示されて、そこにシャロンが居るであろう場所に緑で点滅するマークが示されていた。

 この世界地図、全体的に雲のように覆われて殆どが隠されている状態だけど、一部その雲が晴れている場所がある。

 これは多分だけど、自分がこれまで歩いた事のある場所が地図に反映されて雲が取り除かれるのだと思う。

 けど、そうだとしたらおかしいのよね。

 私がこれまで歩いた場所は草原だけだったのに、地図のイラストからして森のような場所も確認出来るようになっている。

 どうやら地図は拡縮が出来るようで、シャロンのマーキングを頼りにその付近を拡大してみると、明らかに私が行った事の無い場所が見えるようになっていた。



『シャロン、今話せる?話せそうになかったら後で返信して。今までシャロンは森のような場所に行った事はある?森以外だと、草原とか』


『大丈夫だよ。草原には行った事ないけど、最初にゲームがスタートした場所が森だったから行った事になるのかな?それがどうかしたの?』



 ゲームのスタート位置が私とシャロンで違う……?

 いくらオンラインゲームだからって、そんな事ある……?

 今は考えても仕方がないか。

 これについてはもう少し情報が集まってから再度考えよう。

 とりあえずシャロンに世界地図の機能と仕様について私の考えを話してみる。



『あーなんかそんな感じだね。マヤの言う通りだと思う。初期段階では地図は雲に覆われていて、自分の足で歩いた場所をなぞるように雲が晴れて地図の詳細が分かってくる。で、《絆の確立》を行ったプレイヤーが踏破した場所も共有されて、それに応じて自分がまだ行った事のない場所の雲も晴れていく、って仕様だろうね。便利なんだか不便なんだか』


『まぁ最初っから世界の全容が見えているより、少しずつ明らかになってきた方が面白いと私は思うから、全然良いかな』


『それもそっか。そうだね。うん!』



 ひとしきり他の機能を確認し終えた私達は、最後に魂之結合ソウルリンケージによる恩恵について考察を始めた。

 と言うのも、魂之結合ソウルリンケージによる恩恵の項目を選択したらよく分からない文章が表示されたからだ。



魂之結合ソウルリンケージはあらゆる者との絆を確立する唯一の手段。一度紡いだ絆は揺らがず、世界の終わりが訪れても断ち切れる事なく、離れ離れになった仲間との再開を果たす奇跡のわざである】



 この文章が何を意味しているのかは全く分からない。

 けど、無意味にプレイヤーを惑わす為に用意されたメッセージだとも思わない。

 絆の確立を行ったユーザーの情報がある程度知る事が出来るから、一度遠方に行って同時に進行させるクエストやイベントもあるのかも知れない。

 その時の為に、一度知り合ったプレイヤーと簡単に出会えるように出来る機能なのだろう。

 と、根拠はないけどそう結論づける事で一旦の考察に区切りを付ける事にした。



『考えても情報が少な過ぎるんだし、大体の目星を付けて後々答え合わせって感じて良いんじゃないかな?』


『そうかもね。私も推測の域を出ない結論だから何とも言えないけど』


『中々面白いじゃん。このゲーム。プレイヤーにシステムを理解させる気は無さそうなのに、考察はさせようなんてさ。楽しくなってきた!』



 シャロンのこの前向きさ、少し見習わないとな。



『さ、マヤ。折角だしこの村を色々案内してあげるよ。装備品とか買える場所が一箇所だけじゃなかったからさ』


『あ、うん。そうだね。よろしく頼むよ』


『よーし!それじゃレッツゴー!』

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