第10話 サウスの勇者
「ここが訓練場だよ。今は誰もいないからいくらでも暴れてもいいからね」
流石国の訓練場だな。広いしこの結界もかなり丈夫だ。
「では勇者を呼んでくるね」
「わかりました。」
「それまで好きにウォーニングアップしてもらっていいからね。」
「はい。使わせてもらいます。」
「じゃあまたね。」
「はい。」
本当に素は気軽な感じなんだな。ついため口を使ってしまいそうだ。
「では、ウォーミングアップするか?」
「まあ、いいが、パキラは本気を出すなよ?」
「まあ気をつける」
心配だなぁ
「スレッドもやるか?」
「え、よろしいのでしょうか?」
「ああ。全然いいぞていうか、スレッド敬語じゃなくていいよ。素は違うだろ?」
ブシノキと戦っている時は口調が全然違ったからな。
「いいの……か?」
「ああ。これからは俺にもパキラにも遠慮はしなくていい。パキラもいいよな?」
「ああ。我は問題ぞ」
「わかった。ありがとう。」
「うん!じゃあウォーミングアップするか!」
良かった。やっぱ遠慮しちゃってたんだな。
「うむ!」
「うん!」
「3、2、1、スタート!」
三人とも魔力を解放する。3色の魔力がぶつかり合い、弾ける。
「レウムはまた魔力量があがったか?」
「そうかも。」
今の俺の魔力量が約10万5800でパキラの魔力が約105万8000、約スレッドが12万8000って感じかな。俺はベルの魔力も合わせると30万くらいになる。
「二人ともすごい魔力だな……」
スレッドもなかなかいい魔力をしている。そして俺たちは魔法闘気をまとい、近距離戦にうつる。
「もらったぞ!レウム!」
パキラが俺に大きな攻撃をしようとするが、そこにスレッドが糸弾をうち、パキラを止める。俺はその体制のまま、パキラにドロップキックを当てる。
「くそっスレッドめ!邪魔しやがって!」
パキラが魔力を片手に集中させ、俺たちを薙ぎ払う。俺はそれに合わせて結界を展開し、スレッドは糸で上に回避した。
「ふはははは!二人とも無防備すぎるぞ!」
パキラが俺たちに火球を打ってくる。俺は賢者のスキルと剣聖のスキルを応用して魔法を打ち返す。スレッドも同じく打ち返したようだ。
「ぐはっ二人して我ばかり狙ってずるいではないか!」
「戦いにずるいも何もない!」
おっスレッドも言うようになったじゃないか!
「おっやってるねー遅くなってごめんね!勇者たちを連れてきたよ!」
ん?この声は王様?
「いえ、全然待ってません。そちらの御三方が勇者ですか?」
「そうだよ〜左からエイス、エドラム、モーラトだよ。」
左のエイスという男は仮面をつけた謎のよくわからない男という印象だな。魔力量は8万9800か。
真ん中のエドラムは、こういう顔はよくみたことがある。精神がかなり追いやられている様子だな。魔力量は20万2000!今までみた人間の中でトップだな。
右のモーラトは全身鎧をきていて、勇者というより騎士って感じだな。魔力量は19万4400!こっちも高いな!
「どうだ?俺を見捨てて組んだパーティーはいい感じか?」
真ん中のエドラムという男が口を開いた。それより、見捨てた?スレッドがエドラムをか?
「その話は済んだだろう。いい加減切り替えろよ」
「お前の中ではな」
おっとーよくない空気だな。
「それよりこちら側も自己紹介させていただいてもよろしいでしょうか?レウム・ビクトリーと申します。ただの冒険者です。」
「ふん。どうせお前も優しい国王陛下に縋りにきたゴミなのだろう。ハイル様はどうして居られられるのか。このようなものつまみ出せばいいものの。」
右のモーラトという男が喋る。
プッチーン。怒っちゃったよ?この国王が優しいのはそうだけどさ。
「貴様!我が友を侮辱したな!」
「すみません魔古龍様。我が相棒が失礼をしました。」
「ふん!わかれば良いのだ!」
ん?このエイスという男は常識があるようだ。
静寂が流れる中、王様が手を叩く。
「はいはい。そこで終わりだよ。模擬戦の相手はどうする?」
「今正面にいる相手でいいと思いますよ。」
エドラムが提案したが、俺も賛成だ。
「みんな無言ってことは賛成でいいのかな?10秒後にスタートだよ!自分でかぞえてね。」
俺の相手はこのモーラトという大男か、パキラはエイスで、スレッドはエドラムか。
10秒が経ち、たったと同時にモーラトが右手で殴りかかってきた。痛った!この世界に転生してから、一番痛いんだけど!ねえ!
『始まる前から溜めていたみたいですね。それと、光の精霊魔法を確認しました。』
精霊魔法?俺も使えないが?こいつは使えるのか?
『精霊魔法を習得しました。賢者に統合しました。賢者の性能が上がり、王級能力大賢者になりました。』
え?早!精霊魔法ってそんなに簡単なの?
『いえ、大変難易度が高いですよ。ただ、マスターは別格です。』
まじでベルの規格外っぷりがすごい。
『いえ、マスターの力です。』
何でそうなるのかは知らないが、ありがたいな。
「何ぼーっとしている!」
モーラトは光の精霊魔法を腕に纏わせ、光の速度のパンチを俺に浴びせた。俺は、鉄で体を守り、さらに、結界で守った。しかし、モーラトの攻撃力はどんどん上がっていく。
なんだ!?なんで威力が上がっていくんだ?
『特殊能力連続攻撃の能力です。攻撃が当たると、攻撃力と速さが上がります。連続防御といって、防御と攻撃力が上がるのと、連続回避という避けるたびに速さと防御力が上がる能力の三つがあります。三つとも獲得しておきました。以上を剣聖に統合し、王級能力剣王になりました。』
ええ〜それすら獲得しちゃうのかよ!
『能力の統合をいたします。よろしいですか?』
いいけど、いましたんじゃないの?
『別のです。』
まあいいか。
『ありがとうございます。成長するもの・大賢者・剣王の3つを統合し、王級能力覇王之道を獲得しました。解析鑑定します。』
ああ。よろしく。
『光速解析により、解析完了。』
ステータス
名称:レウム・ビクトリー
種族:人間/究極生命機関
称号:/救世主・究極生命体・超えしもの・鉄人・混沌・覇王の卵
魔法:火魔法・水魔法・回復魔法……etc
魔力量:5855550/208474
スキル:鉄人…鉄生成
鉄操作
身体鉄化
混沌…無効化
混沌空間
混沌化
混沌生成
覇王之道…各種魔法
超魔力結界
覇気
叡智
森羅万象
極魔力感知・極魔力操作
詠唱破棄・瞬時魔法展開
極魔法付与
光速演算
魔法覇気
極剣技
覇者闘気
未来予知(中)
危機察知
魔力回復増(中)
成長速度増(中)
演算速度増(中)
究極生命機関…変身
一部具現
超回復
念話
身代わり
「ブッッッッ」
つい吹き出してしまった。
『続いて私を進化させます。究極生命機関と鉄人を統合し、王級能力鉄之王を獲得しました。』
おお〜鉄人が進化するのはありがたい。
『王級能力に進化したため、鉄之君主を手に入れました。鉄の兵を出せるようになりました。』
おお〜これは後で能力の検証が必要だな。
「舐めているのか?」
「ん?」
そうだった。まずはモーラトを倒さないとな。
「すまないな。準備は整った。勝負はこれからだぞ?」
「ふん。」
ーーーーーーーーーー
「よろしくな。えーーっと」
「エイスです。」
「そうだった。」
エイスは相手を慎重に観察する。
「えーーっと来ないのか?」
本当にこいつが魔古龍様なのか?あの人類の守護神と呼ばれる。俺は魔古龍様と同じ戦場に行ったことがないからわからないが。
「じゃあこっちからいくぞ!」
「!?」
パキラは龍の腕になったその大きな腕をエイスに振りかぶる。
「氷山!」
エイスの放った氷山は通常砂山程度の大きさまでしかいかないが、エイスは氷魔法の天才だった。王級能力氷之支配者によりさらに強化され、氷山は三階建ての家のように大きな氷だった。
「氷山でこれか!すごいなぁ〜」
腕が完全に氷に埋まっているのに何で余裕があるんだ?
「氷弾」
エイスの氷弾は氷槍をも超える威力を持っていた。
「物質燃焼」
「!?」
氷が……燃えた??
「ふはははは!お主いい腕をしておるな!氷魔法だけだったらレウムより強いな!だが、相手が悪かった。」
何故?理解不能。意味不明。エイスは今まで無かったことに驚きを隠せず戸惑っていた。
「ならば…氷陣」
エイスの氷陣は他の絶対零度をも凌ぐ威力をしていた。
「空間燃焼」
「は?」
なんだ?なんだ?今、空間ごと燃えたのか?
「寒いのう。それで終わりか?」
勝てない。こいつには絶対零度を打っても無駄だろう。
「では、終わりだ。」
「時よ、止まれ、」
「?」
「時間停止氷河」
パキラの周りに先程の氷陣にてできた冷気や、新たに生まれた冷気が集まっていき、やがてパキラの周りだけ、時が止まる。
「今のうちに氷槍を極大化させないと」
上空に冷気が集まり、巨大な槍を形成させる。
「物質燃焼」
「きたか。」
「流石に寒かったぞ。」
「氷の聖なる槍よ、敵を貫け、氷之聖槍」
パキラはその魔力濃度から防御をしなければまずいと思い、右手を龍の腕にして受ける。
「む」
片腕では受けきれなかった。パキラは左手も龍の腕にして受ける。
「いけええええええええ」
エイスは柄にもなく、叫ぶ。
「よし、いけるな。物質燃焼。」
そして槍は燃えてなくなる。
「そ、そんな……」
エイスは完全に魔力を切らして倒れる。
「ふはははははは!完全勝利だぞ!」