間話 ブシノキ
間話です。物語には影響がありませんので飛ばしても大丈夫です。
「ブシノキ!出陣だ!行くぞ!」
「はい!」
彼の名はブシノキ。サウス王国第二聖騎士団副団長だった。彼は両親を幼い頃亡くし、窃盗などをして妹と生きてきた。そんな荒れた生活の中、今の聖騎士団長に拾われ、育てられてきた。父のように慕い、尊敬してきた。妹も彼や団長などのように聖騎士になりたいと言い、聖騎士団の後方支援に配属されていた。
魔王たち10柱は協力し、魔王軍を作った。魔王軍には魔王をトップに、各魔王たちの配下二人を幹部として築いていた。第二聖騎士団は魔王クリスマスの配下と戦っていた。
「いつもの相手だからといって気を抜くなよ!」
「「はい!」」
団長は統率能力が高く、決して魔王軍に劣っていなかった。しかし、それが現れ、戦況はひっくり返った。
厄災は突如現れた。後方支援の居たところに爆発が生じた。
「何事だ!」
爆発が生じた後、魔王軍たちは後退し始めた。
「ふふふふふ。私は魔王クリスマス。世界に混乱と恐怖を与える者です。」
「魔王クリス…マスだと……」
「はい。ばん!」
魔王がそういった瞬間。魔王を中心に爆風が起きた。ブシノキは咄嗟に防御した。視界が開けた後、立っているものは数人しかいなかった。そして、ブシノキの足元に妹の生首が転がってきた。
「あ、ああああ、あああああああああああああ!!!!」
ブシノキは恐怖と絶望と怒りと悲しみに囚われ自我が崩壊した。
「落ち着けブシノキ!お前は今すぐ帰って王様に報告しろ!」
「残念ですが、彼、自我を失ってますよ。」
「くっ」
団長はブシノキの首を手刀ではね、気絶させた。
「ウス、オス。すまないがこのバカ息子を連れてってくれねぇか?」
「ウス」
「オス」
団長はウスとオスを見送ると走り出した。
「息子ですか?」
「ああ。そうだ。なあ。あいつらは見逃してくれねぇか?」
「いいですよ。人間はもう一度、魔王の力を知るべきです。彼らが私の恐怖を伝えてくれるでしょう。ふふふ」
「感謝する。では、最後の力を振り絞ろう。絶命究極強化」
「ふむ。命を犠牲に、最後に究極能力の力を出す技ですか。いいですね。」
「行くぞ!」
「ええ。」
ー2年後ー
魔王クリスマスによる厄災から2年が経った。ブシノキは聖騎士団長となった。今日は新勇者との合同訓練日だった。
「あれが勇者か?Sランク冒険者のスレッドと互角って話らしいぜ」
「マジかよ!?ちょーつえーじゃん。」
ふむ。スレッドと一緒か。俺はスレッドと相性がいいが、相性がいいわけじゃないSランクレベルとはどこまでいけるのだろうか。
「よろしくおねがいします。」
「はい。よろしく」
くそっイケメンだな!ムカつくぜ
そして決闘が始まった。勝負は一瞬だった。始まった瞬間超爆発を打った時、爆発の中から勇者が出てきて、首元に剣を当てられて終わりだった。
ブシノキは2年前を思い出してしまった。勇者の強さへの嫉妬。そして勇者があの時、あの場にいたら妹も団長も死なずに済んだのではということを考えてしまい、彼は、堕ちた。
数年後、盗賊団を作り、Sランク冒険者スレッド・カタストロフィに討伐されるのだった。
ーーーーーー
結局ダメだった。勇者に負けた後、勇者にどうやったら勝てるかを考えた、そして頑張った。血の滲むような努力をして、死にそうになったこともあった。しかし、勇者の強さに追いつける気がしなかった。そして本気のスレッドに勝てる気がしなかった。結局俺の人生はなんだったんだろう。
「貴様はブシノキだな?」
「ああ。」
目の前には大きな鬼が立っていた。
「閻魔様がお呼びだ。」
「え?」
どういうことだ?俺なにかしたか?盗賊団って言ったて、元騎士を集めた、盗賊団や違法奴隷商相手の盗賊団だった。閻魔様に呼び出されるようなことしたか?
「よくきたな。」
閻魔は青い髪だった。赤い服をまとい、16歳のような見た目だった。
「本当は面倒くさいんだが、あの男の頼みだ。聞いてやる。お前は天国行きだ。途中でお前に用があるやつがいるから!じゃあ!」
そう言って部屋から出て行った。その後、俺は目の前が暗くなった。
「ごめんねお兄ちゃん。」
「!?その声!セイラか!」
「うん。そうだよ。お兄ちゃんを置いて逝っちゃってごめんね。私のせいで……」
「あ、ああ。こっちこそごめんな!俺がいたのに助けられなくて!」
「ごめんねごめんねごめんね」
「うああああああああ」
「ちょっといいか?」
「え」
「久しぶりだな!息子よ!」
そこには死んだはずの元聖騎士団長ライジがいた。
「ライじさん!」
「ああ。こんなに大きくなりやがって……」
ここには彼ら三人だけ。彼らの再開を妨げるものはいなかった。そして彼らはみんな天国へ向かった。