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3 娘の闇堕ち阻止計画0.1

 自室である書斎に入ると、私は扉を閉めて人目と雑音を遮断した。

 窓からは麦の収穫に勤しむ農民たちの姿が見える。あの魔女エンドを迎えたら、きっとこの風景も農民たちの暮らしも戦火に踏みにじられるのだ。

(あの結末を避けるには、どうしたら良いのか?)

 攻略対象の王子はうちの子じゃ無いから手出しできないが、娘を良い子に育てたら悪堕ち&魔女エンドは避けられるのではないだろうか?

 そもそも聖女エンドの場合でも、娘はおろか私まで悪の道に堕ちている事になっているのだ。娘の断罪と当家の没落イベントが発生するから、これも避けなくてはいけない。

 つまり、聖女エンドでも魔女エンドでも無い、別のエンドを目指さなくてはならないのだ。

「でも、そんな都合のいいエンドはゲームに無かった気がするんだよな…。」

 私はメモ紙にペンを走らせ優先すべき項目を書き出す。


1.娘の悪堕ち回避

2.私と妻・息子など一家の生存

3.なるべく周辺も助ける


 …こんなところだろうか?

 1が達成されれば全部助かるハズなので一番良いのだが、無理そうなら娘は諦めて私と妻と息子など一家の生存を優先させる。それ以外のことは努力目標としよう。

 問題はこの世界が【白薔薇の聖女と黒薔薇の魔女】の世界そのものなのか、似ているだけで違っているのか?そして筋書きが決定的で変更不可、つまり『シナリオの強制力』が働くのか否か?が重要になる。

 この世界が【白薔薇の聖女と黒薔薇の魔女】の世界そのままで『シナリオの強制力』が働くのであれば、全ての対策は無意味だ。

 娘と私は悪に堕ち断罪されるか、娘が悪堕ちして私と妻が殺される未来は確定である。

 シナリオに描かれなかった、少なくとも明示されなかった隙を突いて被害軽減を試みるしか無いだろう。例えば息子のアレクの生死は描かれていないから、生存確率を高めるような試みはできるはずだ。

 似ているだけで『シナリオの強制力』が存在しないならば、未来は確定していない可能性がある。

 これならば娘を善導して悪堕ちを避けさせ、権謀術数で聖女を陥れるのを防ぎ、かつ王子との婚約・結婚までつつがなく進んでもらい、断罪劇などという馬鹿げた行いはしないでもらうようにできるかも知れない。

 問題は、どうすれば『シナリオの強制力』の有無を見分けられるのか?だ。

 いかに宮廷魔術師長を拝命する上級魔術師たる私でも、そんな便利な魔術は記憶に無い。つーか、あるわけ無い。

「今すぐに打てる手は無し、か。」

 私は自分に言い聞かせるように声に出した。

 とりあえず必要な準備をしよう。今すぐ支度を考えなくてはいけないのは次の行事2つだ。


 命名式。娘に良い名前をつけて、生まれた赤ん坊を祝福する。これは10日ほど後。

 神殿での祝福式。神殿に詣でて司祭から祝福を授けてもらう。その後お披露目会。これはおよそ一ヶ月後。


 命名式の方は今日、明日にでも招待客リストを作って招待状を出しておく。これは期間が短いから近隣地域の、それも親しい間柄にある人達だけだ。

 祝福式とその後のお披露目会はこの子の最初の社会デビューと言える儀式なので、細大漏らさず準備しないといけない。アレクの時の経験があるからどうすれば良いのかわかっている。実質的な指揮は執事のマイケルに任せることにしよう。

 すぐに執事と検討できるように以前の招待リストを書類フォルダーから取り出した。私は素案を作る作業に没頭し、執事と協議した後は夜遅くまで招待状を書いていた。

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