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205 こども園の開設

突然の更新延期、ご迷惑をおかけしました。

金曜日の更新は予定どうりにいたします。


本作品は『月曜日・水曜日・金曜日』の午前04:00時に更新です。

チート無し・特殊能力無し・死に戻り無し・(ほぼ)事前知識無し。

主人公自身の知識と知恵と度胸と才覚でなんとか破滅の未来を避けようとするお話です。

 私は義父のアンブローズ辺境候に手紙を出すと、早馬で送り出した。

 早馬で行って1週間、帰って1週間、順調に進めても最低2週間だ。その間に別の仕事を進める。

 工場群の建設・各種の製品の製造・特別教育プログラムの寄宿舎の準備などに追われた。


 最初に王手がかかったのは『こども園』の開設だ。

 乳幼児を養育中で休職中の官僚たちに呼びかけ、ここを利用して復職を希望する者たちに施設説明会をおこなった。

 すると希望者が殺到。入所は抽選とすることになった。


「思った以上になったな。」

「多いのはわかっていたので枠を増やしていましたが、さらに予想を超えました。」


 私とファインス局長はうれしい悲鳴をあげた。

 これでほとんど利用希望者がいなかったらどうしよう、と心配していたのだ。

 場所は宮殿だし、魔術省管轄の機関だし、ということで信頼性があったためらしい。ありがたい。


 0歳の乳児は3人につき1名の乳母と1名の保育士、1〜2歳児は4人につき1名の保育士、3〜4歳児は10人に保育士1人と補助1名、5〜6歳児は20人に保育士1人と補助1名、という体制を標準とした。

 手厚めの体制だが、小さい子供というのはちょっと目を離すと、どこかに消えたようにいなくなる。目の行き届く人数でなければならない。


 私もアレクを庭に連れて行って、姿が見えなくなり、必死になって探したことが何度かあった。

 だいたいすぐに見つかったのだが、この間はなかなか見つからず大騒ぎになった。

 1時間ぐらいしてから“お前の子供が川のそばにいたから、連れてきたぞ” と言って、(ドラゴン)のクリスヴィクルージャが頭の上に乗せて連れてきた時は、いろいろな意味で顔が青くなった。

 ナターシャの進言“たとえアレク様といえども、小さい子供には紐をつけて、手を離してはなりません” を破って、屋敷の裏の草原で好きに駆けさせていた後だっただけに、父と母とマリアとナターシャから、私はガッツリ叱られた。ついでにクリスヴィクルージャからも非難がましい目で見られた。

 まったくもって、申し開きのない失態だっただけに、謹んで非難を身に受けた。

 クリスヴィクルージャの頭の上に乗せてもらったアレクだけは、はしゃいでいたが。


 私自身のそうした経験もあり、保育士と担当する園児の数には気を配った。

管理された一定の空間で、どこかに抜け出したりするような『穴』が無いかは、私自身が入念にチェックした。

 完璧は無いと思うが、完璧を目指さなくてはならない施設だ。完璧にできないなら雑でも構わない、というのは許されない。


 こども園には保育のため次のような部屋を用意した。

 0歳の乳児のためのベビーベッドが並んでいる部屋。

 1〜2歳児はひとつの部屋に20人づつ入る。この部屋にはぬいぐるみやスポンジ製の積み木やボールなどの遊具などを用意してある。

 3〜4歳児と5〜6歳児の部屋には子供用のテーブルと椅子、ぬいぐるみ・絵本・簡単な読み物・積み木・お絵かきの道具など各種の遊具がある。

 共用する園庭があり、花壇のような小さな菜園・鶏小屋・砂場・シーソーとブランコ・滑り台などの遊具が用意されている。

 この他にもトイレはもちろん、バスタブと湯沸かし器を備えた入浴施設、薬師を常駐させた看護室、湯沸かし室や保育士たちが記録をつけたり書類を作るための事務室、休憩室、倉庫、視察などの来客を通す応接室などを備えた。


 さらに宮殿の食堂室の料理人たちに頼んで、子供達のための給食も作ってもらうことにした。

 作り置きの食事では食中毒の恐れもあるし、親の家庭や経済事情によって食事内容にばらつきが出てしまうのは好ましく無い。

 万一を考えて、あらかじめアレルギーを調べるためにプリックテストを入園者にはしてもらう。代表的なアレルゲンをごく少量先端につけた針で刺し、反応を見ると言うものだ。

 これも感染などを起こさないように、針を消毒し、清潔なものを使うなど、協力してくれる医師たちに手法を覚えてもらった。


 この世界では、おそらくこうした施設は初めてだろう。

 現実地球と同じで良いのか、ヒト以外の種族が実在するこの世界では不明な点が多いため、今後も実情を踏まえて、こまめに改装を加えてゆくことにした。


 この時代の子育てといったら、おっぱい飲ませて、おしめを替えて、子守唄を歌って寝させて、泣いたらあやしての繰り返し。

 少し大きくなったら、子供同士で遊びながら年長の子供が面倒を見て、行き過ぎがあれば顔見知りや近所の大人が叱って、という程度。

 教育も子供向けの教材や安全な遊具など存在せず、大人が子供向けに内容を砕いて読み聞かせれば良い方。

 当然ながら、安全管理などは無く、不注意で子供が死ぬ、なんてのはザラにある事だった。

 貴族や裕福な市民などであれば乳母や子守を雇って子育てを一部代行させることもできるが、ナターシャのような教育のできる乳母など、すごく少ないのである。

 それを考えると、よほどの貴族でなければ用意できないような受け入れ態勢が、いきなりドンと現れたのだ。

 そりゃあ、希望者殺到なのも無理は無い。


 第1期は乳児30人・1〜2歳児は40人・3〜4歳児と5〜6歳児は60人ずつ、190人を募集した。

 乳児と1〜2歳児が少なめなのは、必要な保育士の数が多いため、保育士の数に余裕の無い現状での限界だった。

 比較的余裕がある3〜4歳児と5〜6歳児は多めに受け入れられる。

 試験的な設備なので利用料はタダだが、その代わり利用者は復職を命じられる。

 目的の半分は働く官僚の確保なのだから、当然と言えば当然だが。ちなみに復職者は200人近くに達したので、かなり人員に余裕ができるはずだ。


「7歳の子も預かって欲しいという要望もさっそく上がっていますが、どうしましょう?」

「悩ましいが、7歳なら留守番ぐらいはできるし、私塾に通わせるのもありだしなぁ。」


 私の本音を言えば、小学校のようなものを設立し、初等教育ぐらいしっかりと施したいところである。

 が、やはりそのための人材も設備も方法論すら無い、というのがこの世界の現状だ。

 すべて親任せと言うのは良く無いのだが、現状では打つ手無し、である。次の課題だ。


「それと、やはり稀少な魔術属性の子や多重魔術属性持ちの子がいます。」

「特別教育プログラムのメンバーを、何人か回すしかあるまい。」


 近いうちにこちらも動き始めるとは言え、未知の要素が多い。

 他の子供と混ぜてしまうと、予期できない危険が発生する恐れが無いとは言い切れない場合がある。

 やはり、特別教育プログラムのメンバーに手伝わせるのが良かろう。

 それに家庭環境の影響があるのか、孤児院育ちの子と比較してみたいとも思う。


 いろいろな課題を抱えつつも、宮殿の『こども園』は開所の日を迎えた。

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skebにアカウントを設置し、テキストのリクエストを受け始めました。

アカウントはこちらです。 https://skeb.jp/@Oud5TgmcId


詳しくはアカウントに記述しております。

質問がある場合はTwitterアカウント 衆道恋路 慶 2nd.

@Nil_Empty_000 https://twitter.com/Nil_Empty_000 にご連絡ください。

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