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202/210

202 先生が足りない

本作品は『月曜日・水曜日・金曜日』の午前04:00時に更新です。

チート無し・特殊能力無し・死に戻り無し・(ほぼ)事前知識無し。

主人公自身の知識と知恵と度胸と才覚でなんとか破滅の未来を避けようとするお話です。

 どこにどんな人材がいるか分からない。

 その意味では公募というのは、情報の伝達速度と情報が伝わらない可能性を加味しても良い手法だ。

 だが、隣国との戦争がかなり高い確率で発生しそうな今の状況下では危険がある。


「特別教育プログラムに必要な人材の数は?」

「10人ほどを予定しております。」

「ふむ…。伝手でどうにかならん人数でもなさそうだな。」

「やはり公募は問題が大きゅうございますか?」

「今、スパイ対策が強化されているからな。」


 剣・盾・力といった攻撃魔術・防御魔術・能力操作系魔術に適した属性の者の教育と訓練には、銀竜騎士団から人を派遣してもらおう。

 どのみち就職先もその辺が最有力になりそうだし、いつも銀竜騎士団は人材集めに苦労している。


 奇跡術に向いている“祈”属性の者は王都の大神殿から教育係を派遣してもらおう。副神殿長のアインに相談すれば良いだろう。

 ついでに『白薔薇の聖女』ルミリア・ピヴォイネスについても相談しよう。

 ルミリアはすっかり『大聖女の生まれ変わり』とされた“善”属性の女児の影になってしまったが、本来ならビッグニュースになるはずの希少な魔術属性だ。

 彼女は捨て置いて良い者ではないし、そもそも『娘の闇堕ち阻止計画0.2.1』ではアンドレアとルミリアには仲良くなってもらう腹づもりである。


 “善”属性の女児は『大聖女の生まれ変わり』として、大聖都の教皇猊下の元で養育されるのが決まっているから、彼女はあちらに任せる。

 “癒し”属性の子供は、薬師ギルド長夫妻の養子になったから、あとはうまくやるだろう。

 ものごとの洞察力に優れる“智”と記憶に優れ学問に秀でる“識”の属性の子供は、王立魔術院の学者から人を出そう。

 “歓”属性なんていう、たぶん、すごく珍しい魔術属性の子供もいたな。宮廷楽団に相談すれば、人を派遣してもらえるだろうか?

 “五重属性”の子供は銀竜騎士団を率いる将軍・ニームス卿が養育するから、まずは安心だ。

 土・水・風・木の四重属性持ちの子も適性を見極めて養育したい。

 三重属性持ちの子供たちは予想される適正ごとにまとめて、各種ギルドでの技術教育を一部任せ始めている。経過は良いようだからその方向で行こう。


「ファインス局長。特別教育プログラムの教育係の人材募集の件、私に預けてほしい。」

「承知しました。閣下の伝手で確保されるという認識で間違いございませんか?」

「間違いない。」

「そういえば、閣下のお嬢様も稀少属性をお持ちでしたね。」

「そうだな。他人事ではないな。」


 他にもいろいろ見つかっているが、稀少属性というのは数が少ないから稀少と呼ばれるわけだ。

 孤児院での祝福式を国庫で肩代わりする制度を始めて、いきなり地方で“善”属性という大成果を上げただけでなく、各地でそうした稀少な魔術属性の子供達が発見されていた。


 問題はそうした子供達を教育できる人材を地方で確保、あるいは地方に派遣するほどの余裕が無いことだ。

 もちろん、この会議ではそれについても議論された。


「地方での稀少な才能の持ち主を腐らせるわけにはいきません。」

「もちろんだ。だが各地に専任の教師を派遣する余裕は無いぞ。」

「乱暴かもしれませんが、王都に集めることはできないでしょうか?」

「なるほど。そうすれば効率が良いな。」


 稀少属性とは言っても、それなりに傾向はある。

 それに教育方法の研究にしても、母数を大きくし、観察事例を増やすのは大きな意味がある。

 問題は各地の地方貴族である。

 彼らがこれを国王による一方的な収奪と見かねない。あるいは、積極的に領民の中から探し出して『献上』という挙に出る可能性もある。


「教育に当たる者の数が足りないし、さりとて現況が公募することを許さないからな。特別教育プログラムの対象になる子供は1箇所に集める。」


 私はそう決めると、ファインス局長に指示を出した。


「仕事を増やして心苦しいが、そのために必要な試算と設備について草案をまとめてくれ。」

「承知しました。」

「地方からの稀少な魔術属性の子供の移送について、妙な憶測をされないように私の方で動いておく。各自は安心して仕事をしてくれ。」


 私は一堂にそう言うと、変な動きが起こらないようにモンジェリン卿に手伝ってもらわねばならんな、と算段を立てた。

 あそこで彼を助けておいて良かった。変な打算無しに動くと、後で果報となって巡ってきた。


「この件については私以外にも味方がいる。不安がることは無いさ。」


 その後、会議に集まったメンバー全員で、『子ども園』に改装中の宮殿の一画を視察に向かった。

 内装工事はほぼ終わり、机や椅子などの家具・積み木や黒板などの学用品/教育用おもちゃが順次運び込まれている。

 乳児も預かるので、衛生を確保しやすいように専用のトイレと風呂場を設け、また離乳食を作るための調理場も用意されている。

 外には子供達が外で活動できるように芝生と細かな砂を敷いた庭が整えられ、鉄棒などの体育遊具、小さな菜園と鶏を飼う飼育小屋も設置された。


「なかなか良い具合に仕上がっているじゃないか。これなら評判も良さそうだ。」

「はい。閣下がいろいろ入れ知恵してくださったおかげです。」

「実行して、子供達への良い教育方法を研究してくれる君たちがいなければ無用の長物さ。あとは成果を出すだけだぞ!」

「子供を抱える復職希望者向けの説明会を行ってくれ。ここへ案内して、見学会も開いた方が良いな。それと、乳を与える乳母達は入れ替わりが激しいと思うが、宮殿に入れる以上は身元調査を十分にするように。調査官を使って良い。」

「かしこまりました。閣下もご参加なさいます?」


 ファインス局長が冗談めかして言うので、私も答えた。


「そうだな。息子のアレクや娘のアンドレアを連れてきても良いかもしれないな。いろいろな人々と触れ合わせた方が良い。」


 私はそう答えたので、彼女だけでなく、皆は目を丸くして驚いていた。


「将来的には、なにかの事情で一時期だけこちらで預かって欲しい、と言う場合にも備えられるように冗長性を持たせておくべきだろう。これは検討課題に入れておいてくれ。」

「かしこまりました。それには私も賛成です。ああ、この施設がもっと早くにあれば、私はもっと早く復職できましたのに。」


 彼女の言葉は、他の多くの女性官僚の言葉でもあるだろう。

 やはり、この施策は間違いでなかったなと、私は感じたのだった。

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