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200 ゴム工場

本作品はついに200話まで来れました。

通算ユニークアクセス10万越え、ブックマーク登録者数1000人越えを達成できました。

連載開始から一年を待たずにここまでこれた事に、読者の皆様に深く感謝申し上げます。


本作品は『月曜日・水曜日・金曜日』の午前04:00時に更新です。

チート無し・特殊能力無し・死に戻り無し・(ほぼ)事前知識無し。

主人公自身の知識と知恵と度胸と才覚でなんとか破滅の未来を避けようとするお話です。

「はっはっは!実に愉快!予備費をお預けした甲斐はあったようだ。」


 上級将軍のカステル卿は上機嫌な様子で豪快に笑った。


「鉄の大増産、迅速な兵站活動を可能にする道路建設、さらにこの新建材!どれも想像以上だ!」

「あの改良車輪の性能も驚きでした。あんな快適な乗り物は初めてです。」

「あんな頑丈な防壁を次々と設置したら、いかな敵でも進軍はままならなくなりますな。」

「運搬の負担増の問題を普段なら考えるところだが、それも貴卿は同時に解消されているし。」

「私の“氷の破城槌”を受けても砕けないとは。驚きました。」

「あの改良車輪の馬車は今すぐにでも使いたい。道の整備もすぐにやって欲しいですな。」

「遠距離を移動することの多い我が騎士団には、ぜひとも欲しいものです。」


 おおむね、将軍達からは好評をいただけたので、私はほっと胸をなでおろした。


「正直、皆さんに満足いただけるか心配でしたので安心しました。」

「貴卿の判断なら間違いあるまいと、会議で推した甲斐があったな。」


 バーナード将軍は私の背中をバンバンと叩いたので、私は危うく、つんのめりそうになった。


「ちょ、力加減を考えてくれ。」

「ん?ああ、つい昔の感覚でやってしまった。すまんな。」


 その後、軸受け(ベアリング)工場・ゴム工場・ソーダ灰工場・アンモニア工場と順繰りに回ってもらう。

 このうち、軸受け(ベアリング)工場とゴム工場はすでに建設が進み、もう生産をこちらで行なっている。

 ソーダ灰工場は建設途中、アンモニア工場はアンモニア合成炉と主要パイプラインの建設が終わったところだ。この2つはこの冬の初めまでに建設を終わらせたい。


「生産機能をここに集約するのか。」

「ええ。その方が機密も守りやすいですし。万が一を考えて、研究機能と文書・設計図面などの保管は警備が厳重な宮殿内でやっています。」

「それは賢明だな。」


 もちろん、将来は王国内の適地に同じような工場群をあと二ヶ所は造り、一箇所に集中するのを避けたい。

 ここが破壊されても、他でカバーできるようなバックアップ体制を整えたいのだ。そのためにも、ここでしくじるわけにはいかない。


「順序としては東街道の整備が先ですかね。モンジェリン卿や東の諸侯に協力を仰がないと。」

「うむ。そうすればその後のあれこれがスムーズに進むであろうな。」

「それと、作った設備や道具の使い勝手で悪い点の指摘や改善の要望はどんどん言ってください。私どもだけではわかりませんし、改良に生かしますので。」

「おお、それはありがたい。」


 資金源でもある将軍達の理解を得られたので、当面は安心して事業を進められるだろう。


 彼らをお見送りした後、私はゴム工場に向かった。

 天然ゴムの加工は大変だ。

 まず、仕入れた天然ゴムの洗浄からである。天然ゴムはゴムの木の樹液を固めたものだが、自然に固まるものと酸を加えて固まらせるものとがある。

 どちらであれ、加工の過程でどうしてもゴミなどが入ってしまう。おまけに天然ゴムは有機物なので、そうしたゴミが混じった状態だと腐る。

 現実地球ではゴミが混じっていないか、どうかなどで等級分けされるのだが、この世界にはそんな基準は無い。故に綺麗なものからひどいものまで玉石混合だ。

 これが臭いのだ。品質の低いゴムはしばしば腐敗したものが混じっているため、これが臭うのである。


 まずはこうしたダメになったものを、すべて手作業で分けて捨てる。

 続いて不純物の量と状態で等級分けする。

 分けたものを水力で動くシュレッダーで粉砕して、何度も綺麗な水で洗う。その後、一度よく乾燥させる。

 そうやって、ようやく加工の入り口に立てるのだ。

 できればこの工程は採集される現地でやってもらいたいと思っているので、将来は南の密林地帯に住むケモノタイプの獣人種・ラゴールたちに技能を習得してもらいに来て欲しい。

 今は交流が全然無いので、かなり先のことになりそうだが。


 乾燥させたゴムは圧力をかけて、大型の水力ローラーを使ってしっかりと練る。

 強い圧力をかけるので、木製では早晩、壊れてしまうため鉄製にしたが加工に苦労した。しかしナハムの機械職人達が努力して良いものを作ってくれた。

 練ったゴムに圧力をかけて目の細かい金網を通して()して、完全にゴミを除去する。

 それから、炭素・硫黄などを加えて練り、下ごしらえの完了となる。

 その後、用途に合わせて金型を通して形を作り、用途に合わせてさらに硫黄と熱を加えて硬さを調節する。

 こうしてゴムの出来上がりだ。


 すでに原料の天然ゴムの質がまちまちなので、工場側で状態を確かめながら作っている。工業製品とは思えぬほどの職人的な感覚で作られているのだ。


「ああ、閣下!ご機嫌よろしく。今日のゴム生産は順調ですよ。先ほどの方々は?」

「それは重畳(ちょうじょう)。この工場の建設とゴムの研究に資金を出してくださった軍の将軍達だよ。お金を出してくれたのは軍だけじゃ無いけれどね。」

「閣下ご自身でご案内ですか。お疲れ様でした。」


 私の目の前に立つヒョロリと背の高い男は錬金術師のコランタン・モレルだ。

 彼はケイトの一番弟子の一人で、有機物を扱う錬金術の研究をしている。彼はゴムを使った研究をしていた経験もあり、ここの研究開発の主任に抜擢した。


「最近の成果はどうだい?」

「まとめている途中ですが…。ゴムにかける温度と時間と硬度の関係、混ぜる物質の量と配合比の違いによる性質の差について、第一報がもうすぐ。まだ事例報告レベルですが、霊素(エーテル)による操作過程無しでいろいろ変化するんで面白いですね。」

「うむ、未開拓の分野だ。どんどんやってくれたまえ。」

「言われなくても進めます。いや〜、こう、どしどし研究できて、しかもその成果をすぐに実用に持っていけるって嬉しいですね!」


 彼はせっせと得られた知見をまとめてくれるので助かる。内容からして、彼の研究成果は今後のゴム加工の基礎研究として不朽の価値を持つだろう。


「タイヤですけど、外側の部分の加工に時間がかかるのが難点ですね。なんとか短くしたいんですが、いい物質がまだ見つかりません。」

「仕方がないさ。そう、一気呵成には進まないだろう。工場で事故が起きないように安全管理に注意してくれ。」

「もちろんです。工場を止めるわけにはいきませんし、みんな作業に慣れてきたところですから失うわけにはいきませんしね。」


 私は彼の報告論文第一報を楽しみにしていると言って励ました。

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