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19 デザートを食いながら考える、今後の展開

 デザートを食いながらいろいろ考える。

(道路なんかは、軍隊の移動なんかで重要だからアーノルドに水を向けてみるか。ローマ時代にだって街道に立派な舗装道をヨーロッパ各地に作れたのだし。この世界でも国内の主要街道沿いだけなら、なんとかなるんじゃないか?)

 かなり雑な考えではあるが、それ以上は越権行為だし、私が処理できる仕事量を超えるし、何より他人の仕事を取っちゃいかんだろう。

 多額の予算が必要になるから財務大臣あたりは頭を抱えそうだが、道路が良くなって流通量が増えれば商業が盛んになって税収が増えていることにすぐ気がつくだろう。そうなれば積極的に道路建設に予算を出すようになるに違いない。

 そうなった時に、ちょっと入れ知恵をすれば良いかな?まあこれは将来の課題だ。


 道路が良くなれば、馬車などの陸上での輸送手段も改良が必要とされるだろう。

 これなんかは軸受を作って運動効率を上げることだろうか。運動効率が良くなれば高速化・大型化・省力化が可能になるし。他にも乗り心地を良くするとか。

 部品を作らせるようにする段階でいくつもの課題が出てきそうだが、それは今後の教育改革で良い人材が育てば任せても大丈夫かな?

 これも今すぐどうこうできる話じゃ無いし、将来的な課題だし、影響も広いだろうから、できそうな奴がいたらそちらに任せるのが一番だ。

 何でもかんでも背負い込むのは良くない。私はよくある転生ものの主人公のように、なんでもできる万能人間ではないのだ。


 食品の保存も重要な課題だ。食料の安定供給は統治の基本である。

 この世界で主な保存方法は乾燥・塩漬け・燻製・ピクルスのような漬物・チーズなどの発酵させた乳製品・油漬けが主だ。

 砂糖漬け・蜂蜜漬け・シロップ漬けは原料が貴重で高価なので、これは王族や貴族・富豪だけが使える高級品。酒精(アルコール)を使うやり方は、強い蒸留酒がまだ珍しいこの世界では一般的ではない。

 冷蔵はほとんど無い。冷却魔法を付与した箱──博物館にあった氷の塊を入れて冷やす原始的な冷蔵庫に似ている──はあるのだが、あれはシャーベットのような冷たい料理を作ったり、ワインなどの酒を冷やす道具と認識されていて、それで食べ物を保存することは考えていないのだ。北国では氷室を作って夏に氷を供したりもしているそうだが、せいぜいそんなものだ。

 その中で今のところ見たことが無いのが瓶詰めだ。前世の世界でも開発されたのは意外に新しく19世紀初めごろ。基礎的な技法自体はそれ以前からあったらしいが、開発者はそれを洗練して完成した技術にしたわけだ。

(瓶詰めぐらいなら煮沸するだけだし、そんなに手間じゃないかな?ガラス瓶の安定した供給方法が問題になりそうだが、別に気密性さえ保てれば陶器でも問題ないのだし。)

 この世界ではまだゴムを見たことが無いし、ねじ込み式の蓋を作れるかがわからない。無いなら無いで、溶かしたロウで蓋を覆うという最も原始的な方法がある。

(瓶詰めぐらいなら魔法の素材を保存する研究過程で見つけました、とでも言っておけば良いか。)

 簡単だから、開発して有用さが知られれば勝手に広まるだろう。

 これだけで食糧問題が解決するわけでは無いが、以前よりマシになるはずである。


 それに日々の食事でなくてはならない穀物。これを安定供給させたい。

 アーディアス公爵領は割と良い土地を初代がもらってくれたので比較的マシなのだが、飢饉になったことが歴史上無いわけでは無い。複数の穀物を組み合わせて栽培し、不作のリスク分散をするのが一般的な解決策である。

 ここで立ちはだかるのが穀物の種類によって与えられる『高級/上品・低級/下品』という、ある種の蔑視が絡んだ視線である。偏見といっても良い。

 小麦が最上級とされているのは、まあ美味いし、パンなどの食品への加工のしやすさ、出来上がったものの美しさなどからなのだが、栄養という点から見れば他の穀物より見劣りがする。米だって完全に精白したものは炭水化物以外の栄養価はあまり高く無いので、これは最上と考えられている穀物に共通する問題なのかもしれん。

 栄養価を考えるとライ麦とエン麦はむちゃくちゃ優秀で、ソバもそうだ。正直これらが貧民の食べ物とみなされているのは惜しい話だ。大麦は主な用途がエールの製造なのだが、小麦よりは栄養的にましだ。

 そして、これら貧民の食い物扱いされているライムギやエン麦・ソバは小麦・大麦栽培に向かない場所でも育つし、それらの裏作にできる。土地の穀物生産性が一気に上がるのが見込めるのだ。これが広く受け入れられればかなり食糧事情が安定化できる。

 今のところジャガイモ・サツマイモのような生産性が高く、使い勝手の良い芋類がこの世界では見当たらないので、これでやるのが一番良い。

(でも、良く無いイメージが邪魔するんだよなぁ。)

 こういうのは文化的な刷り込みなので、即座にイメージを覆すのはとても難しい。

(パンとかにするから難しいのかな。他の形にすれば…。)

 私はそこではたと思いついた。

(そうだ。シリアルにしたらどうだ?今までのイメージにとらわれない、新しい食品にしてしまえばいけるかも。)

 シリアルなら保存性もあるし、手軽だし、今の技術レベルでもなんとか作れるんじゃなかろうか?

 幸い、試せる所はたくさんある。これから整備する学校の給食に使えば良いのだ。

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