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14 宰相閣下へのプレゼンの前にちょっと前置き:この世界の獣人種について

週2ペースに戻すと前回書きましたが、筆が進んでストックに余裕ができたのと、前話のアクセス数が連載開始以来最大になったのを記念して、今日もアップします。

 ちょっと前置きが長くなるが許してほしい。


 我が国の南の国境線である南の大河ミョール川以南になるとヒトの姿は少なくなり、代わりにいわゆる『獣人』が増えてくる。

 獣人たちの暮らす世界の南はまだ分からないことが多い地域で、ときどき学者たちが探検隊を組織して出かけたり、探検家たちが向かって行ったりする。結果は素晴らしいものからひどいものまでピンキリだ。

 この世界の『獣人』は大まかに分けて3種類いる。

 ひとつめはヒトに尻尾と動物の耳をつけたようなケモ耳タイプ。なお側頭部にヒト型の耳は無い。

 ふたつめはマズルがあって全身毛に覆われている直立歩行する動物タイプ。狭義の獣人だが、手はものを掴める形なので人と同様に道具を使う。

 みっつめはいわゆるケンタウロスタイプで、四つ足の動物の下半身にヒトの上半身が乗っているような姿だ。


 ケモ耳タイプは自らを『ナハム』と名乗っている。

 彼らはヒトより体格が良く身体能力にも優れる。知能はヒトとほぼ同じだし、文明も同レベル。魔術に劣るものの、その分技術力に優れていて建築や土木・工学・冶金の水準は高い。

 ナハムたちは主にミョール川周辺で農耕や漁業・商業・各種の製造業を営んでいる。独自の国家・言語・風習を持ち、我が国と隣接する地域に住んでいる。交流があるので我が国で見かける『獣人』といえば、だいたいナハムたちであると思っていい。


 獣人タイプは『ラゴール』と自称する。

 ラゴールの身長はヒトの倍ぐらいあって、身体能力はヒトとは比べ物にならない。彼らの戦士は1人で精強なヒトの兵士10人を軽く蹴散らかすと言われている。知能は人と同程度だが、奇跡術以外の魔術がさっぱり使えないと聞いている。知らないのではなく種族的なものらしい。

 ラゴールたちについては間接的な情報ばかりなのではっきりしないのだが、南の奥地には広大な樹海があり、そこで部族単位で暮らしているのだと言う。少しばかりの農耕の他、狩りや漁をして生活しているのだとか。私はラゴールと会ったことが無いので、全部書物と伝聞の知識だ。


 そして、ケンタウロスタイプは自ら『ネフィータール』と名乗る。

 ネフィータールはヒトと同程度の知能があり魔術もよく使い、その上身体能力も高いと言う。下半身が下半身だから、もちろん移動速度は速い。そして寿命も長いのだと言う。

 ネフィータールたちは文字通り広大無辺の草原地帯に住んでいる。そこで牧畜と交易をしているのだとか。彼らの暮らす草原は東西に果てしなく広がり、彼らの足ならば遥かな西の大都、東のかなたに広がる大洋まで行けるのだと言う。

 そこは歴史に名を残す大旅行家ナルソス・カーンが2度旅して、そして没した地域である。私は子供の頃、彼の旅行記を読んで想像を逞しくしたものだった。もちろん、私はネフィータールたちと会ったことも無いし、かの地へ行ったことも無い。


 獣人の中でもナハムたちは我が国にも少数だが住んでおり、たまに姿を見ることがある。

 世の中には獣人の知能は低いと思い込んで彼らを軽んずる者がいるが、我が国では、いや、少なくとも我が国の宮廷人にはそんな不心得者はいないはずである。

 なぜなら──ここまで前置きがたいへん長くて申し訳なかったが──目の前にいる我が国の宰相閣下は、その獣人種族のひとつ・ナハムなのである。

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