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138 報告会 (前編)

お待たせしました。第3章の開始です。

活動報告でお知らせしましたとおり、週2〜3回をめどに投稿するペースに変える予定でいます。

3章開始数回は連日投稿の予定ですが、その後は先述のペースにします。

あらかじめご了解くださいませ。

 帰国後の私はめちゃくちゃ忙しかった。

 理由は報告書を大量に書かねばならないからだ。報告書には参考資料も付けるので、それもまた膨大な量となる。

 そのために、私は久しぶりに宮殿で秘書官たちと一緒に缶詰になる経験をする羽目となった。


 まず、帰国して東の大門から王都に戻ったら、屋敷に帰らず真っ先に国王陛下への報告である。

 旅装も解かずに内々の謁見に使われる、宮殿の一室へと案内される。

 そこには陛下はもちろん、宰相閣下と外務大臣のゴルデス卿、内務大臣のムーリン卿、上級将軍のカステル卿、ヴィナロス王国の枢要な人物が集まっていた。陛下のお側には典礼長官のファブラ卿も控えている。


「よくぞ無事に戻った。まことに大義であったな、アーディアス卿。」

「これは畏れ多くも陛下、皆様方。このダルトン、どうにか首尾よく使命を果たしてまいりました。」


 ガイウス2世陛下は私に労いの言葉をかけてくださった。

 あらかじめ、金角の黒竜王グレンジャルスヴァールとの合意内容などは早馬で報せてある。


「そなたの書き送った報告文は極めて重大なものであった。モンジェリン卿の城での一件、金角の黒竜王グレンジャルスヴァールの話を考えるに、もはや一刻の猶予も許されないのかも知れぬ。」

「はい。背後に魔界の大公ザカトナールがいるのが事実であれば、極めて深刻な事態であると考えます。」


 眉根を寄せた陛下の眉間には深いシワが刻まれている。

 私も魔界の大公なんて存在に自分が関わる事になるなど、少しも想像したことがなかった。それほど非現実的な話だ。

 勇ましい英雄の物語は傍観者で居られるから楽しいのであって、当事者になるなんてたまったもんじゃない。


「我々はモンジェリン卿の城での一件を特に重く受け止めている。」

「このような事は王国が始まって以来の危機だ。」

「しかも矛先が我が国に向かうのが確実とは…。」

「すでに対悪魔作戦立案班を立ち上げた。意見を聞かせてほしい。」


 宰相以下、次々に発言があった。


「外交や軍事の事は、私にはわからない部分が多くありますが、今回の状況を受けて粉骨砕身するつもりでおります。」


 私はそれらに対してそう答えておいた。

 この状況なので揚げ足を取られたりしないだろうが、手柄を全部持っていかれたように思われるのも避けたい。

 それにだ。

 もし娘のアンドレアの闇落ちがあるのならば、本番はこの後のはずなのだ。

 ああいう事が起こるならば、それはこの数年の内にきっかけとなる悪魔がらみの何かが起こるに違いない。


 それに“白薔薇の聖女”ルミリアも、そろそろ見つかっておかしくないはずである。

 ドドネウス神殿長の調査結果について、アインから聞かせてもらっても悪くない頃合いだ。

 これもアンドレアと深い関わりのある件なのでおろそかにはできない。


 そうは言っても、まずは目の前の難関を越えねばならない。ここでやられてしまったら、娘の闇落ちがどうのこうのと言う以前の話なのだから。


「そのベルトランなる者の取り調べはどうか?」

「はい。ようやく話せるまでに回復したので、聴取を始めた由にございます。」

「内容は?」

「まだ要領を得ません。本人の体力回復が遅れており、聴取に協力的ではあるものの長時間は難しいと。」


 陛下は宰相閣下に難しい顔をする。

 私は念のため弁護をしておく。


「畏れながら、陛下。『屍の影』に取り憑かれた者はひどく衰弱するとされます。モンジェリン卿には回復術専門の神官を付き添わせるように進言しました。必要とあらば、上等の回復薬を用意して彼のもとに送らせます。」


 陛下はそれを聞くと、あのことを思い出したようだった。


「そう言えば、そなたの策で見つかった“癒し”属性の子供は、薬師ギルドのギルド長夫妻に養子にさせたのであったな。」

「は、はい。」

「ギルド長夫妻に使いを出し、それによく効く良薬を作って納めるように命じよう。どうか?」

「承知しました。私から直接言うと差し障りがございますので、王命としてガロベット卿を通じて下知するようにいたしましょう。」


 私の答えに陛下は納得したように頷く。

 傍に控えているファブラ卿がメモ紙を侍従のひとりに渡すと、彼は音もなくスッと緞帳の奥に消えた。


「外交もますます重要になるな。ゴルデス卿、状況はどうか?」

「まずはヤー=ハーン王国のスカール1世即位30周年記念の式には、通常通りの出席を予定しております。通例であれば、こうした席にはアントニオ王太子殿下が向かわれるのが相応しいのでございますが、正直危険だと感じております。」

「いかにするか?」

「一案としまして、ミョール川の堰建設の件に絡めて、王太子殿下に親善大使としてアル・ハイアイン王国へ親善大使として向かっていただき留守にしていただくのはいかがかと。」

「ほう。」


 ゴルデス卿の策はこうである。

 アル・ハイアイン王国の提案という体にしてもらい、アントニオ王子に親善大使としてあっちに行ってもらう。

 その間に、代わりにゴルデス卿が記念式典に行くというわけだ。


「貴卿が危険にされされるのだぞ?」

「我が身を案じてくださり、ありがたいお言葉でございます。しかしながら、王太子殿下の替えはいません。」

「そなたも余人をもって代え難い人材だ。それは忘れてくれるな。」


 その他、大聖都の教皇猊下との折衝も開始することが決まった。これは軍事戦略の構築も必要なので、カステル卿との合同で進める。

 神殿の武装部隊・実力行使の実行者である『聖騎士団』は一般的に清廉潔白な態度で知られる。

 その一方で、悪魔関係には情け容赦が無いとか、エグい事も平然とする狂信者みたいな者がいるとか、なかなか暗い噂話も無くは無い。


「悪魔対策となると…やはり魔術が重要ですな。」

(おっしゃ)るとおりです。こればかりはすぐに増やせるわけではありませんが、少しでもかき集めることができないか考えます。」


 私の方を見てカステル卿に意見を求められたので、私は答える。

 具体策の考案はこの後だ。


「アーディアス卿には策があるか?」

「いくつか思いつきますが、どれも人を養成しなければなりませんので年単位の時間が必要でございます。他にも、いくつか腹案があり、バーナード卿を介して進言しようと考えておりました。」


 前線で戦うだけでなく、後方の補給線などは戦略上欠くべからざるものだ。

 道路整備・馬車と車輪の改良・保存食料の開発は提案だけで無く、急ピッチで進めなければ間に合わなくなる。

 当初よりも人を増やして全力で取り組む必要がありそうだ。

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