資料編:現時点での登場人物一覧2版 ヴィナロス王国以外の人物・団体・組織・歴史上の人物
現時点での登場人物の一覧です。分量が多くなったので、4つのパートに分けました。同時に投稿しております。
この一覧はベータ版です。
【ヤー=ハーン王国の人物】
・スカール1世、スカール・アシュッド・アゾート・ヤー=ハーン
現ヤー=ハーン王国国王。
先代のヤー=ハーン王国国王・イスマイル三世の第二王子。二人の子がおり、10年前に王子は結婚し、姫も北方の国に嫁いでいる。
第一王子コノーと王位をめぐって骨肉の争いを繰り広げ、31年前に内戦に勝利。
第一王子コノー側についた貴族の当主や後継者だけでなく、文字通り老人・女・子供・赤ん坊に至るまで一族全員を文字通り皆殺しにする大粛清をおこない、弱体化した諸侯の軍勢を解体させて、国家と国王の下にあるただひとつの『国軍』に統合する軍制の大改革を成功させた。
この他にも貴族が保有していた鉱山の接収と国有化による効率的な鉱山経営と増産に務める一方で、農業などをあえて衰退させて地方領主の勢力をさらに削いだ。
衰退した貴族層に宮中での地位を与えることで王権に依存させ、またはその子弟に官僚登用への道を開いて自らの子飼いにすることで、中央集権化を強力に推し進める。
最初の10年余りは統治は順調で復興も進んでいたが、10年ほど前からは国内の景気が目に見えて悪化。疫病の発生もなどもあり、国内からは有力企業や商会の転出が相次ぎ、国内では不気味な噂が流れる状態となっている。
・コノー・アシュッド・アゾート・ヤー=ハーン
先代のヤー=ハーン王国国王・イスマイル三世の第一王子。
スカール一世との後継者闘争に敗れ、処刑された。
・イスマイル3世
先代のヤー=ハーン王国の国王。
後継者を定めないうちに急死。二人の王子が血で血を争う内戦の原因を作ってしまう結果となった。
・フィリウス
王室顧問を名乗る経歴不明の男。
貴族的な装いと態度を身につけているが、偏見に満ちた暴論で諸外国への悪意と敵意を煽り、影響を宮廷だけでなく民間にまで強めている。国政や国家機関に『改善・効率化・貢献・改革』を求めるが、彼は提案する場にも、それの意思決定に関わる場にもいるので、完全に出来レースとなっている。
ケイト・ディエティスからは“無口で、目だけが笑っていて、粘質の視線を向けてくる、不気味な人物”と評される。
・ケイト・ディエティス
ダルトンの大学時代の同級生の女性。
大陸の東の端にあるヤー=ハーン王国出身の魔術師・錬金術理論の専門家。その筋ではそれなりに名の通った人物。金属を材料にした錬金術理論を研究しており、そのために卒業後は材料を得やすい故郷のヤー=ハーン王国の王立学院に籍を置き、研究と教育の仕事に就いた。
ダルトンはときおり送られてくる彼女の論文の“精緻な、美しさすら感じるような実験系の構築と論理の立て方に感心”していた。
景気が悪く就職先が見つからない弟子たちのために、職の斡旋を求める手紙をダルトンに出した。
その後、ヤー=ハーン王国から出国するつもりであることをダルトンに伝えた。
【竜の狩場の人物】
『竜の狩場』はヴィナロス王国から見て東と東北方向に広がる竜の自治領。
“金角の黒竜王”グレンジャルスヴァールが支配する。
この土地の竜は“建国王”勇者ウードと結んだ契約により、ヴィナロス王国内にいる人間は竜の狩場に入らない限り襲わない。
人間側とはガンゲス公爵家とその一族が折衝にあたる。
【竜たち】
・グレンジャルスヴァール
“金角の黒竜王”と呼ばれる強大な古代竜。
竜の狩場の主。実質的に主物質界で最強クラスの存在。
その能力は凄まじく、ダルトンと直接精神をつなげて意思を交わすという、ほとんど伝説クラスの超高等魔術を苦もなく使って見せた。
精神世界において、ダルトンは“金の刺繍や飾りが施された、多くの襞を持たせて頭から体全体を包んだ長いショール”と“裾からは火のように赤いドレス”が見え、“指先には複雑な透かし彫りが施された金色のフィンガークロウを身につけ、長い指を優雅かつ恐ろしげな形に見せて”いる、古代ローマの女神か貴婦人の姿を思わせる女性として認識された。
ただし、それは異形であり“異様に背が高く、頭部を覆うショールの間から金色の4本の角が突き出し、頭上には金色にきらめく冠が浮かんでいた。ドレスの裾の後ろからは真っ黒な鱗の竜の尾が伸びて”いたし、その顔は“女性の顔立ちの理想を表したような美しい造形”だったが“金色の瞳には縦に割れた瞳孔があり、唇は微笑みの形にこそなっているが、全体として形容しがたい謎めいた表情を浮かべて”いた。
また、その身に纏う雰囲気は年齢不詳に見せていた。
死の大公ザカトナールを過去の経緯から激しく嫌悪しており、またダルトンらに過去のことを語って聞かせた。話がしやすかったダルトンを気に入ったらしく、いつでも来いという趣旨の発言をした。
ヴィナロス王国の建国に深く関係しており、“建国王”勇者ウードと盟約を結んだ。
この盟約は一対の朽ちることの無い聖銀の板に魔力を込めて内容を刻み込んだが、あまりにも昔のことなので、外務大臣のゴルデス卿すら伝説か子供向けの昔話と思っていたし、王家の家宝にも関わらず国王も王太子もダルトンに指摘されるまで存在を忘れていた。
建国王とグレンジャルスヴァールとの友情と建国に関係する物語は、『勇者と竜の友達』などの子供向け絵本や庶民向けの演劇にされて上演されている。
また国王配下の騎士団の名前に『竜』が付いているのも、正装の色の組み合わせで黒と金色だけは王族にだけ許されるのも、金角の黒竜王グレンジャルスヴァールの鱗と角の色をモチーフにしている。
・ヴォッフナフェールハーメン
竜、推定で享年30歳前後。勇者ウードの少年期から一緒にいた竜。
幼竜と言っていい頃に親とはぐれて傷を負っていたところを、まだ少年だった勇者に助けられる。
その後、傷を癒して親竜と再開してからも、彼は勇者の側にいることを選び、勇者と冒険や戦いを共にするうちに絆を築くが、大戦時に致命傷を負い仔竜のうちに死んでしまった。
しかし歴史的に彼が果たした役割は大きく、彼の存在が無ければヴィナロス王国と金角の黒竜王との盟約も存在しなかったと言われる。
勇者は遺髪代りに鱗を一枚とっただけで、遺体を素材扱いせずに葬った。
墓所は最初、王都の宮殿のある丘にあったが、のちに故郷である『竜の棲家』に改葬された。王都ヴィナロスには彼の銅像もある。
父親の竜は大戦時に戦死、母親の竜は100年ほど前に天寿を全うした。親戚にあたる竜は今でもいるので墓所に来ることもある。
・クリスヴィクルージャ
竜、255歳の赤竜。竜としては中堅どころ。
竜らしく、人間に対しては傲慢で威圧的に振る舞う。一方で好奇心も強く、見慣れないものや珍しいものには近づいて調べたがる一面もある。そのためかダルトンのことを知りたがった。
ダヴィッド・ガンゲスの実家の隣にある洞窟に住んでいる。そのためダヴィッドのことは赤ん坊の頃から知っていた。
ダルトンが竜の狩場に赴く切っ掛けとなった『ゾンビ侵入事件』の当事者。なおゾンビの群れはブレス1発で焼き払った。
・モデュルヴェリル
竜、215歳の赤竜。クリスヴィクルージャより明るい色の鱗を持っている。クリスヴィクルージャと一緒に狩りをしていた。
・プレイザテールレフィール
竜、220歳の青竜。クリスヴィクルージャと一緒に狩りをしていた。
【ガンゲス公爵家】
『竜使い』とも呼ばれる、魔獣使いの一族の長。一族内では『頭目』と呼ばれる。竜の棲家の奥、金角の黒竜王の住む水晶宮の手前に館を構えている。
ヴィナロス国王の国王が代替わりすると、戴冠式の時に金角の黒竜王グレンジャルスヴァールの勅使としてガンゲス公爵家の当主が派遣される。
ガンゲス公爵家の初代はヴィナロス王国の“建国王”勇者ウードの仲間だったが、金角の黒竜王グレンジャルスヴァールとその配下の竜達と共に生き、竜の狩場に暮らすことを選んだ。
そのためヴィナロス王国での公爵位を持つものの、ヴィナロス王国の支配を受けないという特殊な立場にある。
竜の狩場に住む竜との交渉には、原則としてこの公爵家かその血族の魔獣使いによる立会いが必要となっている。
ヴィナロス王国では竜の殺害を禁じているため、合法的に竜由来の素材を得るには彼らと取引するしかない。
・アッザイ・ガンゲス
ガンゲス公爵家の初代。魔獣使いで、“建国王”勇者ウードの仲間の一人。
叙爵された後、竜たちと暮らすために、ヴィナロス王国にとどまらず竜の狩場に暮らした。
・ヴェリ・ガンゲス
当代ガンゲス公爵家の当主。綺麗に整えたヒゲを持つ、陽に焼けた顔の大男。年齢は33歳。
本人も魔獣使いで、グレンジャルスヴァールの身の回りの世話や水晶宮の管理をしている。竜の狩場に住む魔獣使いへの命令権を持ち、周辺の人間の諸国との折衝にあたる。
ダルトンとの会話では紳士的な口調であったが、普段はかなり砕けた感じで話す。
竜が好き。いわゆるドララーな一面があり、またグレンジャルスヴァールからは“歴代当主の中で楽天的に過ぎる”と評された。
・アンナ・イメニ・ガンゲス
魔獣使いで、ヴェリ・ガンゲスの妻。ダルトンと同い年で、“颯爽と巨狼を駆って広大な草原をゆくのが様になるような容貌の持ち主”。
特使としてやってきたダルトン一行を出迎え、事態の詳細を夫に代わって聞いた。
竜の狩場に暮らす魔獣使いの一族は、婚姻の際に出身家の家名の後に婚家の姓を続ける。イメニが生家の家名になる。
・ダヴィッド・ガンゲス
魔獣使いで、エングルムにある竜との交易所にある竜の狩場との連絡事務所の責任者。本人は“竜たちとの繋ぎ役”と名乗る。
座っていても背の高さが想像つくような大男で、ダルトン曰く“立てばアーノルドと同じぐらいの『壁みたいなマッチョ』だろう”。
ダルトンたちが特使として赴く際に、現地の案内を務めた。騎獣は巨狼・大角羊。
実家はクリスヴィクルージャの住む洞窟の隣にあり、里帰りすると彼の世話をすることもある。
・クルツ/ライナー/ゲラルト/ヤン
ダヴィッドの部下の魔獣使い。いずれもヒト男性で20代後半から30代半ばぐらい。
騎獣は巨狼だったが、他にもいる可能性がある。
【アル・ハイアイン王国の人物】
・エルアド・グナイム・イェヒーア
アル・ハイアイン王国の外務大臣。
外務大臣宛の親書で南の国境でもあるミョール川への堰の建設ならびに大規模な灌漑計画があることを知らせ、水利権争いの他、無用な抗争を事前に防ぐべく交渉したいと申し入れた。
【ヒエレス王国の人物】
・シビル
“ガラシレ横丁の占いババ”霊媒師レオノラの姉で、霊媒師をしていた。故人。
ヒエレス王国の南端付近にある村、ヴェルソイクスに隠棲していた。辛いことの方が多い人生だったが、苦しむことなく老衰で天寿を全うする大往生を遂げた。
数人の弟子がおり、形見分けを遺言状に残した。妹のレオノラには、シビルのつけていた日記・いくつかの手帳・古びた指輪がひとつ、“この老姉妹にだけ意味と価値が理解できる”ものを遺した。
・ゾエ
霊媒師の女性。
シビルの一番弟子で、銀の香炉を遺贈された。
・シルヴィ
霊媒師の女性。
シビルの二番弟子で、浄化の儀式に使う浄水入れを遺贈された。
【他国の人物・団体・組織】
・教皇
神殿および大聖都のトップ。存在のみで未登場。
今の代の教皇は生来の困難を乗り越えて大成したと言われており、稀代の聖人と敬われている。
なお、教皇位は世襲ではなく、大神官位にある者たちの投票によって決まる。
・テオドロ
ダルトンとケイト・ディエティスの師にあたる人物。ある大学で教授をしていた。
ケイトに“君よ、正き道を往け”という言葉を贈った。
・ボーチェリ
人気画家。『春』という作品がある。
・スーミット社
金属精錬を業務とする企業。
優れた金属の精錬・冶金技術を持つ。ヤー=ハーン王国に本拠地を置いていたが、金属資源の減少と景気の悪化などにより、同国から北方の国に移転した。
・ドマルディ商会
世界的な商社。名前だけ登場。
その規模は市場価格の操作で国家と渡り合えるほど。商業都市フィーチェに本拠を置く。
・エルフの森の王
北方にあるエルフたちの自治領の王。言及のみで未登場。
広大な森の奥にある原初の木アムボレアの実生だと言う巨樹の間にある『常春の館』に住んでいるとされている。そこは一年中、花が咲き、果実が実り、心地よい風が吹くと謳われる場所だという。
ダルトンはすでに故人、あるいは伝説に過ぎないと思っていたが、金角の黒竜王グレンジャルスヴァールによって実在し、現在も健在であることを教えられる。
【歴史上の人物】
・ナルソス・カーン
歴史に名を残す大旅行家。裕福な商家の出身。ヴィナロス王国のはるか南、大草原が広がる地にて没した。
・口寄せ師のレイラ
およそ100年前に没した霊媒師・詩人。
彼女は旅路で見た自然美、蔑まれる身でありながらも得た温情の嬉しさ、死者たちの語る物語を切々とした詩に詠って残した。ダルトンの母ソフィアの書架には彼女の詩集がある。
・流浪の騎士ゲオルギウス
ある王家に仕えていた騎士の息子。魔物退治の英雄譚で有名。
・船乗りエルバー
貿易で財を成した西の国のある王子をモデルにした、海の冒険譚にたびたび登場する人物。
・闇夜のジェイス
大昔に北方を荒らし回った盗賊団の頭目。最後は捕まって、手下もろとも斬首された。闇属性の持ち主だった。
・闇の司祭ケルザ
かつて人攫いと奴隷売買を資金源に悪魔教団を率いた悪魔崇拝者。当時の大聖都の総主教が“聖戦”を宣言して聖騎士団を差し向け、殲滅された。闇属性の持ち主だった。




