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第9話
キャシーは俺の首に手を回し、顔を近づけた。「ありがとね、ダン」と唇同士が触れ合いそうな距離で呟いて、俺の頬に口付ける。
「はは、やけに素直じゃねえか」
「だって、嬉しくて」
キャシーが俺の体を引き、俺は抵抗せずに身を委ねた。二人分の体がベッドに倒れ込む。キャシーの後頭部に手を差し入れて、ベッドボードに頭がぶつからないようにした。
キャシーは笑う。暖かく淡いろうそくの灯りを受けながら、美しく。
「頼んでもいいか」
「え、何を?」
「さっき歌ってた唄の続き、聞かせてくれよ」
「いいよ」とキャシーは穏やかな声でいって、薄い唇で唄をつむぐ。抱きしめて目をつぶると、柔らかな唄声が鼓膜をうつ。振動は甘やかな刺激となって指先にまで伝わり、キャシーの体温と共にじわじわと体に馴染んでいった。