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第8話

酒場で大量の料理に囲まれながら、キャシーの不味い料理のことを考えた。あいつが不器用なのも、あいつの生まれと関係するのだろう。直接聞いたことはないが、おそらくあいつはやんごとない身分の人間なんだ。


「や! 飲んでるかい?」


俺をパーティに誘った女が、馴れ馴れしく俺に肩を組んできむ。酒臭い息がむっとして、鼻をつまみたくなった。


「ああ、飲んでるよ」

「いやぁ、よかったよー! あんたが入ってくれたら百人力さ」


俺たちは自己紹介もかねて、近くの酒場で酒盛りをしていた。女のパーティメンバーが正面に座って声をかけてくる。名前はわからないが、服装をみるに魔法使いだろう。


「やっぱりあのお嬢さんのお守りは大変だったかい?」

「お守り?」

「お守りだろ。あんなランクも低そうな弱っちい子との旅なんて」


肯定はしなかった。


酒盛りも進むと、酔っ払ったパーティメンバーは爆睡し始めた。俺によりかかって眠る女の懐を探り、一枚の羊皮紙を取り出す。


酒場を出ると、キャシーと泊まっていた宿に戻った。正面の玄関から入ろうと思ったが防犯の為か閉まっていた。宿をぐるりと一周すると、窓が空いている一室がある。俺達が泊まっていた部屋だ。


近づくと、子守唄を歌う小さな声が聞こえてきた。聞いた事のない唄。


キャシー、と囁くように名前を呼んだ。唄が止まり、静寂が落ちる。


「ダン? 空耳かしら」

「歌うめぇじゃねぇか」


窓枠に乗り上げ腰掛けると、キャシーが目を赤くしてベッドに座っているのが見えた。大きな目を驚いて丸める。


「ダン……! どうしてここに、忘れ物……?」

キャシーはまだ俺がキャシーのことを置いていったと思っているのか、不安そうに尋ねる。

「ん? あぁ、そうだな。忘れもん、キャシー、来な」


手を差しのべると、キャシーはおずおずと手を重ねる。腕を引いて体を持ち上げ、キャシーを抱えた。


「きゃあ!」と高い声をあげたキャシーの前に、あのパーティから奪った任務の概要が書いた紙を見せた。

「これ……!」

「お前の捜し物に近付けそうじゃねえか?」

「ダン、もしかして、そのために?」


おう、と頷くと、キャシーは泣きそうに顔をゆがめる。


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