表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/13

第6話

次の日目を覚ますと、隣でキャシーが無防備に寝ていた。

長い金髪が顔にかかって擽ったそうで、髪を耳にかけてやる。


「まつげ、なげー」


率直な感想を呟くと、昨日はしゃぎすぎたのか俺の声は少し掠れている。こんなにも穏やかな朝を、久しぶりに迎えた気がした。


*


キャシーの料理の下手さを知ったのは、その朝だった。


旅をしている時は作ってもらっていたから今日は私が、と息巻いて厨房に向かっていったキャシーが、沈んだ表情で部屋に帰ってくる。


「……その、ダン、やっぱり外に食べに行く……?」

「なに、失敗したの?」

「うん、食べられなくは、ないんだけど……」

「まずいのか?」


普段はあんなに強気な癖に、キャシーは泣きそうに目を瞬かせた。


「俺、食えないもんないぜ。腹も壊さないし。何作ったんだ?」


キャシーがおそるおそる背中で隠していた皿を見せる。黒く焦げたふわふわとした何かと、同じく焦げた肉のようなもの。


「もしかしてこれ、サンドイッチ?」


キャシーはぎこちなく無言で頷く。「いいじゃん、食おうぜ。腹に入っちまえば一緒だよ」机がないからベッドに座って、横を叩くと、キャシーは静かに俺の隣に座った。


俺も味覚が鋭い方ではないから、そうそう問題はないだろう。その認識は甘かった。


キャシーの料理を口に含んだ瞬間、甘いやら苦いやら、よくわからない味で口の中がいっぱいになる。一瞬思考がどこかへ飛んだ。キャシーは半泣きで、「無理して食べなくていいんだよ」と言った。


「いや、不味くないぜ、うん。俺は今日キャシーが作ってくれて嬉しかったぜ、ええと、俺も初めは下手だったし、練習すればさ、な、うん」


しどろもどろになりながらなんとか慰めようとすると、泣きそうになっていたのは嘘のように、キャシーは俯いて笑い始めた。


「もう、慰めるの下手だなぁ」

「うっせ。普段こんなこと言わねぇんだからな」

「うん……。わかってるよ、ありがとね」


焦げたサンドイッチの、どこからきているかわからない甘さが口の中に残る。美味くはないけど、嫌いじゃないと芯から感じた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ