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第3話

キャシーの旅の目的は、とある楽器を探しているとのことだった。形も種類もわからないものをどうやって探すのだと思いながらも、彼女はどうしてもそれが欲しいらしい。


森を抜け街に着くと、情報を集めるために真っ先にギルドに向かった。


冒険者のほとんどはギルドに入り、個人情報を提供してライセンスを得ている。ギルドの役割は冒険者の管理と仕事の斡旋。タチの悪い冒険者がいた場合は管理員を派遣して指導したり、魔物の討伐や材料収集を依頼した依頼者と冒険者の間を取り持つ。


冒険者の管理については、権力の腐敗の温床となっているためまともに機能していないが、仕事の斡旋についてはまあまあ役に立つ。だから街についた冒険者は大体ギルドに寄るのだが、驚いたことにキャシーはライセンスを持っていないらしい。


「初めて会ったぜ。モグリ冒険者は」

「うるさいわね、登録したくない理由があるの!」 

「へぇ、犯罪者とか?」


からかうと、キャシーは怒って背中を強く叩いてくる。小柄でか弱いくせに人を地味に痛い。その手首を掴むと、俺は片方の口角を上げて笑った。


「大丈夫だぜ。どんな身分でも入れるとこ、いくか」


キャシーの手を引いて強引につれてきたのは、裏ギルドだった。どんなものにでも影の側面はある。


個人情報を提供したくない人間や、表には到底出せないような依頼をしたがる依頼者は、裏ギルドを使用する。年齢、身分、ライセンス、なにも問わない代わりに、依頼は命に関わるものが多く、冒険者の治安も悪い。



「キャシーが欲しい楽器とやらも何の情報もねぇんだろ。そういうのは割と、こういう裏のルートでわかったりするんだよなぁ。路銀もねぇし、ちょうどいいだろ」


依頼の貼ってある掲示板を物色していると、キャシーは不安そうに俺の袖を引いた。


「ちょっと、ダン。私弱いんだけど、無理、こんな依頼こなせないって」

「問題ねぇって。最悪あんたは街で待ってて、俺一人でいきゃーいいじゃん」

「それはおかしいでしょ!」とキャシーは俺の肩を叩く。


「私たちはパーティなんだからね」と、ぷんぷんと拗ねている。ひとつ気になる依頼があったのか、キャシーが背伸びをして取ろうとする。代わりにとってやるべきなんだろうがその様が面白くて、俺はにやけながら眺めていた。





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