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「エルランド様―!今日はクッキーを作って来ましたの!!花壇の側のベンチで一緒に食べましょう!」
「ありがとう、フェリシア。フェリシアの手作りなんて楽しみだな」
王立博物館の事件から一週間。
無事に日常に戻って来た僕たちは、平穏な日々を過ごしている。誤解が解けて元気の戻ったフェリシアは以前のように、というか前以上に僕にべったりになった。正直めちゃくちゃ嬉しい。
「エルランド様、早く行きましょう!!」
「あはは。歩きにくいよ、フェリシア」
フェリシアが腕に手を回しながら僕を引っ張るので、にやけそうになるのを抑えながら僕は言った。
「フェリシア特製クッキーです!!」
花壇横のベンチに着くと、フェリシアは満面の笑みで鞄から取り出したクッキーを渡してくれた。お礼を言って受け取る。
「すごいね。色んな形があって可愛いな。さすがフェリシアだ」
「エルランド様がいつも口に入れるお菓子と比べたら、味に雲泥の差があると思いますが……」
フェリシアはそう言って恥ずかしそうに目を伏せる。
「フェリシアが作ってくれたものがおいしくないわけないよ」
僕はそう言ってクッキーを一つ手に取り口に入れる。バターの効いた素朴で香ばしい味。手作りって感じでときめく。
「うん、すごくおいしいよ!」
「本当ですか?よかったぁ」
フェリシアは両手を合わせて嬉しそうに笑った。
「そういえばフェリシア、最近よくクリスティーナといるよね」
「あ、はい!なんだか私たちとっても気が合うんです!クリスティーナさんって知れば知るほどいい子ですよね」
「確かにいい子だよね。博物館で僕がフェリシアにふられてこの世の終わりみたいな顔してた時も、ずっと励ましてくれてたし」
「そ、それは言わないでくださいまし……。でも、そうですの!私、エルランド様にあの日のことを聞いて感動してしまって……。クリスティーナさん、私は本心で言ってるんじゃないってフォローしてくれたんでしょう?私、とても嬉しくて」
フェリシアは顔を押さえながら、私はクリスティーナさんのことを警戒してしまっていたのにとか、あんな場面に巻き込んで迷惑をかけてしまったのに、とか恥ずかしそうにぶつぶつ言っている。
「でも、仲良くなれてよかったね。クリスティーナも最近楽しそうだ」
「ええ!私、もっとクリスティーナさんと仲良くなりたいですわ!」
フェリシアはそう言って意気込んで見せた。
フェリシアと話しているときのクリスティーナは本当に楽しそうだ。それにフェリシアとよくいる令嬢三人もクリスティーナに話しかけるようになったから、以前よりも女子生徒からのやっかみからは守られているようだった。
このままクリスティーナに対する反感が消えてくれたらいいなと思う。いい子だし。
「でも、クリスティーナに構い過ぎて僕のことを忘れないでね」
「それはありえませんわ!エルランド様が一番なのは何があろうと変わりませんもの!」
フェリシアはきっぱりと言ってくれる。なんだかとても嬉しい。
「フェリシア、大好きだよ」
思わずそう言ったら、フェリシアは目を見開いてこっちを見た。それから照れたような笑顔で言ってくれた。
「私も大好きです、エルランド様!」
終わり




