新米剣士カムイ、多いに悩む
第二部に「カーリアの戦士への憧れ」を追加(割り込み投稿)しました。
そちらも読んでもらえると嬉しいです。
ブックマーク、評価、感想大歓迎です。よろしくお願いします。
俺は最近気づいてしまった。……「黒き錬金鍛冶の旅団」に加わって、宿舎生活を昔からの仲間と一緒に始めたのだがーーこれって、ハーレム状態なんじゃね?
昔から連んで冒険しているヴィナーとウリスはさておき、ユナとメイーーこの二人に加え、美人で大人っぽい体型のレーチェさんと、背が高くて(ちょっと怖いけど)すらっとした姿が凛々しいリーファさん(侍女姿!)と、同じ屋根の下に住んでいるのだ……!
これで何も起きない訳がーーあった、完全に俺です。それは。
ここで暮らし始めてからさしたる事も起きず、毎日を旅団の拠点(鍛冶屋)と、冒険と、宿舎の往復を繰り返す毎日……あれ? 幸運助平的な行事は? いつでもお待ちしているんですが……一向に起きる気配が無い。
いや、まあ分かってましたけど。だって俺、主人公って柄でもないし……
旅団宿舎の二階はほとんど女子寮になっている。一階は俺の部屋の他にも、いくつかの客間らしい部屋があるが、今は誰も使っていない。
だからもっぱら、この宿舎に居る時は体を休めているか、庭に出て剣の訓練をしているかだ。
訓練では、たまにレーチェさんやメイなどと木剣を使った訓練をしているがーー。レーチェさんは、その見た目とは違って正確な剣捌きで、こちらの攻撃を捌いては鋭い反撃を繰り出してきたり、豪快な剣技で俺の守りを弾き飛ばして、革鎧に重い一撃を打ち込んできたりする。
「まだまだ甘いですわよカムイ、防御から反撃への行動は日頃から、何度も何度も繰り返し練習しておかなくては、いざという時に行動する事ができないですわよ」
レーチェさんは厳しいが、仲間思いの優しい人だ。俺が強くなる為にリーファさんとも戦うよう言うのだが、彼女から格闘戦を習っていると、体中に痣ができそうだ。
リーファさんは本当に強い。旅団長が作った緩衝材を入れた手袋を付けて闘うのだが、いつもボコボコにされて、こちらの攻撃はまったく当たらない。
旅団一小さなメイも、リーファさんと同じ武術の使い手で小柄な少女だというのに、目茶苦茶に強い。腰を落として殴りつけても、こちらが宙を回転して背中から落とされた時は、痛みよりも唖然とした、何が起きたのか分からなかったのだ。
冒険から帰り、夕食前まで訓練を行う日が多くなった。体を鍛えるのは賛成だが剣技の練習よりも、格闘技の練習の方が多くなってしまうのは何とかしたいところだ。
そんな話しを旅団長にしたところ、こう言われた。
「体を自由に使いこなす為には、格闘技を学ぶのが一番有効かもしれない。格闘技の達人は武器を持っても相当強いからな、『格闘家に得物を渡すな』これマメ(知識)な」
試しにリーファさんに木剣を持って相手をしてもらったら、普通の剣士の戦いでは考えられない方向から剣が飛んでくる。左右から剣が連続で振るわれた時は、木剣なのに死ぬかと思ったほどだ。
もう少し格闘技を習って剣の戦闘にも生かせるようになりたい。そう思いつつ二人の闘士を相手に、いつもぼこられている……