カムイ率いるパーティの探索 ー採掘作業ー
若手冒険者のお話〜
まあ、ちょっとした探索内容の紹介の様なものですね。
俺とウリス、ヴィナーの三人が「黒き錬金鍛冶の旅団」に加わって初めての冒険だ。向かう先は「嵐の広野と鉱山脈」で、鉱山の方へ向かい鉱石を採掘するのが目的だ。
なあに、大丈夫だ。前も三人でやった事じゃないか。俺は仲間にそう声を掛けたが「そうね」とヴィナーが言い、ウリスが黙って頷いて見せただけであった。
……行こう。
転移門を潜った先にあるのは六本の石柱に囲まれた門と、その周辺に広がる、だだっ広い広野だ。──幸い嵐は収まっているが、ここはいつ嵐が襲ってくるか分からない場所だ。
すぐに山脈の方へ向かう事にし、途中で遭遇する甲殻蟻、怪鳥アンクーム、灰色亜人などなどを倒しながら、山脈の麓にある鉱山まで辿り着く。
「この近くには鉱山の入り口が沢山あってどれが正解なのか分からないな」
「採掘は運試しみたいなものだから適当に入って早く、多くの場所を回ればいいでしょ」
ヴィナーの言葉を受けウリスを見ると、彼女は離れた場所に三つほど見える入り口を確認しながら「こっち」と言って歩き出す。
狩人の勘だろうか? ここは彼女の判断に委ねてみよう。──そう思いながら鉱山の入り口を見ると、誰かが掛けた小さな木の板が岩壁に付けられていた。そこにはこう書かれている。
『危険、毒注意』
ウリスは、それを指差してから鉱山に入ろうとする。
「ちょぉっと! 待て待て。毒って書いてあるじゃないか」
「この看板、嘘。さっき中に鳥が入って行った。鳥達の多くは毒気には近づかない」
俺はウリスの真剣な表情を見てからヴィナーの意見を聞いてみた。
「ま、毒があったら引き換えして来ればいいでしょ、ダメ元で行ってみよう」
そう言われ俺達は鉱山の中へ入って行った。角灯を点けて、しばらく狭い穴の中を進んでいると、天井が開けた大きな空洞に出た。高い岩壁の上の方から鳥の鳴き声がする。洞穴燕だとウリスは言った。
「彼らは臆病、音を立てずに行きましょう」
洞穴燕の巣がある場所を進んだ先に、二つに道が分れた場所に出た。耳を澄ませても何も聞こえない。
俺達は相談の結果、まずは右の通路に入って行くと、しばらくして採掘場所に着いた。小さな鶴嘴を取り出して硬い壁を叩き続けると、ぼろぼろと崩れた土の中から石や岩がごろごろと出て来る。その内のいくつが鉄鉱石である事を確認し、しばらくそこで三人で交代しながら掘り続けていると、あっと言う間に鉱石を採掘する事が出来た。
念の為に左の通路の先も調べたが、こちらの壁からもかなりの鉱石を掘り当てる事が出来た。中には素人の俺にも分かるくらい、はっきりと宝石と思われる物も採掘できた。
「よし、今日はここまでにしよう」
二人にも重い鉱石袋を持ってもらっているが、いくつかの鉱石──石の部分が多そうな物──はその場に置いていく事にした。
何とか転移門まで戻り、重い足を引きずりながら鍛冶場に戻ると、そこにはオーディスワイア──旅団長が作った防具が待っていた。
「ほら、作っておいたぞ。大きさはあっているはずだ、鉱石を置いて試しに着けてみろ」
凄い! 軽硬合金の胸当てや籠手、脛当てだ。俺の今までの収入では一年たっても、これほどの防具は揃えられなかっただろう。
「これがもらえるなんて、凄い事だ!」
俺やウリス、ヴィナーは喜んでそれらを身に着ける、すると団長は言った。
「待て待て、ただでやるとは言って無い。これからも金属の調達を頼むな、と言う事だ」
「ぇええぇえぇ⁉」
俺と仲間達は揃って声を上げた。旅団長は鉱石袋を開いて「おっ、これは紫水晶じゃないか。よくやった」などと喜んでいる。
俺達の旅団生活は厳しいものになりそうだ……