武闘大会⑧
武闘大会編、今回で最終話です。
最初の攻撃でレクトの防御を誘い、接近した懐への一撃を腹部に叩き込む──はずだった。
ところがレクトは双剣の連撃に対応した防御策をとってきたのだ。
長剣の攻撃を幅広剣で捌きながら、腹部に向かって薙ぎ払われる攻撃にも対応し、変則的な柄の持ち方をして、腹部に迫る短剣を、鍔で押さえ込んだ長剣と共に幅広剣を突き下ろし、まるで足下に居る敵に剣を突き立てるような格好で、短剣を受け止めたのだ。
視野から大きく外れた攻撃だったにもかかわらず、レクトは完璧に二つの剣による攻撃を凌いでみせた。
俺は二本の剣を握ったまま、レクトが突き下ろした鍔に押さえ込まれ、腕を交差する形で防御も攻撃も出来なくなってしまう。
「ふんっ‼」
凄い力で二本の剣を弾き飛ばされる俺。
振り上げた剣を俺の首元で止めると、俺は手を広げて降参した。
片手を突き上げて観客の声援に応えるレクト。
俺は弾き飛ばされた剣を拾いながら、気落ちして心の中で溜め息を吐く。
(やはり勝てなかったか)
もっと慎重に双剣での攻めを行うべきだったか。
せっかく仲間達も見に来てくれたのに、しょっぱい結果になってしまった。──ここまで来たら優勝したかった。
「強かった」
側に来たレクトがそう口にして手を差し出す。
「うちの旅団にも強い人は居るが、同世代ではカムイくらい強い奴は居ない。──またいつか、闘おう」
俺はその力強い手を握り、握手を交わす。
「ああ、今度は勝てるようになってみせるさ」
正々堂々と闘って負けたのだ。悔しさはあるが、嫌な気分はまったくない。
俺とレクトは大勢の観客の拍手と歓声を浴びながら、互いの控え室に戻って行った。
「いい闘いだった」
控え室に戻ると、リトキスさんが言った。
「まさか二本の剣を同時に、あんなやり方で捌くとはね」
レクトが見せた技を褒め、彼がただ強い力を持っているだけではなく。考えながら戦う、冷静で広い視野を持った、手強い戦士だと口にする。
「だがカムイも凄かった。あれだけの剣戟を見せられては、僕も頑張らないとね」
そうは言うが、至って気楽な口調だった。
そう言えば、この人はなんだかいつも──真剣なのか、力を抜いているのか、よく分からないところがある。
表面上は真剣な素振りをするけれど、どこか本気ではないような……。なんだか、もう一人のオーディス団長を見ているような気持ちになる事もあった。
「ん? なんだい?」
「いえ……頑張ってください。応援してますから」
客席で、と告げると、リトキスさんはにっこりと微笑んだ。
俺は二本の剣を事務員に返却し、二階に上がって会場まで行くと、ヴィナーとウリスを探しに行った。
会場の方向は覚えていたので、二人を見つけるのは簡単だった。
「お──、おつかれ──」
「カムイ。……頑張ったね」
「おう」
二人は気を使ってか、負けた事については触れなかった。幼馴染み二人は、俺とレクトの決勝戦を見て、自分達ももっと強くなろうと決意したと言い出す。
「冒険では命懸けなんだから、もっと早くそうした気持ちになっとけよ」
「なぁによぉ、カムイのくせに偉そうな」
「ふふふっ」
悪態を吐くヴィナーを見て笑うウリス。
こんな話をしていると、中堅冒険者による試合が始まった。
俺はリトキスさんの闘いを見終わると、そのつど控え室に戻って、リトキスさんと話をした。
リトキスさんは闘い終えてもいつもと同じ調子で、──というか、闘技場での闘いの内容も、完全に試合を支配した動きで相手の戦士を圧倒したのだ。
それも──完全に技術と速さで相手の動きを上回り、相手に攻撃をわざと出させて、その攻撃をことごとく躱し、毎回圧勝する型だった。
そう──言うまでもないが、リトキスさんは優勝した。
まったく相手を寄せつけず、完勝して見せたのだ。
俺やヴィナーやウリスも、もはや安心して観客席で見ていられるくらいの強さ。
呆れるほどの強さ。そんな言葉を使っていいのなら、今回のリトキスさんがまさにそれだった。
決勝戦ですら相手の戦士を手玉に取るような剣捌きを見せ、凄まじい四段突きを見せて優勝した。──その控え室でリトキスさんは俺と二人の幼馴染みを前に、こう言ったのだ。
「本当は五段突きをしようと思ってたんだけどね。……その前に相手が倒れちゃったんだ」
底知れない強さを秘めるリトキスさん。
俺はまだ、この人の全力を見ていないのかもしれない……
── 武闘大会編 完 ──
若者の活躍を書いた短編といった感じでまとめましたが……
いかがだったでしょうか。
感想などもらえるとうれしいです。よろしくお願いします。




