風の神の使者
わたくし、風の神の使いをさせて頂いております「鳥」でございます。いえ、わたくしめに名前などもったいないことでございます。
じつはわたくし、ほんじつは仕事でこの街までやってまいりました。はい、ここは中央都市なんですねーー。わたくしの前任者が、この街の上空を飛んでいたときは、ここまでりっぱな建物はそんなに多くありませんでした。ええ、前任者もわたしなんですけれど、ええ。
え? なにを言っているかわからない? はははは。それはあなたがたと、わたくしが、まったくことなるそんざいのしかただからでございましょう。
まあ、そんな話はさておきまして。この街にやってまいりましたのは、お亡くなりになったかたをお迎えにあがったしだいです、ええ。
ああ、ほら。あのお屋敷ですね、なんとごりっぱなお宅でしょうか。いえ、わたくしのあるじが住む神殿にくらべれば、小屋のようなものでしょうが、ええ。
わたくしは建物の二階にあるひろえん(広縁、ベランダの事?)にある手すりに降り立ちました。どうやらお子さまたちにみとられて、このお屋敷のあるじさまがお亡くなりになるようでございます。
なぜにんげんは近しいものが亡くなると涙し、かなしむのでしょうか。あるべきところに帰るだけだというのに。
まあ、いいでしょう。わたくしは自分の仕事を果たすまでです。ほら、お屋敷のあるじさまが出てこられました。
さあ、わたくしといきましょう。
空高く、あの雲のむこうまで……
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すうかげつごに、またわたくしは中央都市までやってまいりました。ええーーおや? あのお屋敷、売りに出されていたのですね。あたらしい人がお屋敷をこうにゅうされたようでございますよ、よかったじゃありませんか。人の住まぬ建物はくちるだけでございますから。あらら、あのかたがたのなんとお若いこと、さいきんではあのような若いかたが、こんなりっぱな建物をこうにゅうなされるんですねえ……おっと、いけない。わたくしは仕事にいかなければならないのでした。さあまいりましょう。
きょうはあちらのお宅ですよ、ええ。
いきなりひらがな多めで混乱しますか?(笑)
外伝ですし、少し遊んでみました。
「鳥」については風の神『ラホルス』の行で少し示唆しています。魂を運ぶ役目もあるようですね。あるいは個体によって役割が違うのかもしれませんね。