リーティスが話す姉の気持ち
リーティスが旅団に来ていた時のお話。
「お姉様は以前から、旅団の活動というものに憧れていたのですわ」
レーチェの妹リーティスが──気持ち得意げな感じで話し始めた。
「リトキス様から冒険での心得や技術について話を伺う時は、私もお姉様も、それはそれは楽しくお聞きしていましたの」
妹の方も、リトキスが彼女らの家で剣客の待遇で居た時に、冒険や旅団についての話を聞いていたのだと話す。
「まあ──街の中でしか生活していない人には、冒険の話は刺激的なものに思うのだろうな」
「もちろんですわ」と、リーティスも請け負う。
「本の中では世界が以前はどのような姿だったかなど説明され、知識としては知ってはいますが、今現在のフォロスハートと比べてあまりに違いすぎて……。
ですが冒険先の世界が、その砕けて分かれたかつての大地だったのか、とか想像しますと──なんだか、わくわくとした気持ちになりますもの」
なるほど彼女も姉も、割と冒険者向きの気質をしていたのか。俺はなんとなく察した。
「お姉様は旅団での生活を夢見て、旅団を立ち上げる事を目標に資金を貯め、どのような準備が必要か、リトキス様に詳しく伺っていましたわ」 確かにレーチェは旅団を作る事に意欲的で、そこでの活動も楽しそうにこなしている。
「まるで本で読んだような学園生活の様だと、お姉様は手紙で報告してくださいましたわ」
「へえ」
「……その中には、団長様が無茶をなさって倒れ、心配した。──みたいな事も書かれていましたけれど」
「ぉ、おぅ」
色々ありましたのね、少女はそう言いながら溜め息を吐く。
レーチェが旅団での活動に積極的だった理由は、どうやらこの姉妹が読んだという「学園物の小説」が原因だったらしい。
その小説では、男女共学の学園の中で起こる、友情や恋物語が優美に書かれていたと言う。
「それはそれは、壮大なお話ですわ」
そう言って話し始めた少女の言葉を聞いていると──若干、「うん?」と首を傾げるような内容も語られ、少女と姉の夢見がちな、青春に対する幻想的な憧れを垣間見た気がした。
「手紙で教えてくれる旅団での生活のお話は、どれもたいへん楽しそうで、お姉様がどれだけ毎日を楽しく過ごしておられるか、ぜひ一度、見てみたいと思いましたの」
リーティスはその思いを果たすべく、こうして旅団までやって来たという訳だ。
「旅団でのお姉様の訓練を見ましても、本当に一所懸命に努力なさって、また一段と逞しくなられたようですわ」
少女も姉の変わりように驚いたらしく、旅団での活動をしながら、ウィンデリア領での仕事も精力的にこなし、以前よりも生き生きとして見えたという。
「妹として、お姉様が充実した生活を送っている事を、嬉しく思いますわ」
少女が椅子に腰掛けて話している所へ、子猫が足下にやって来て、少女の足にすり寄った。
「お姉様は相変わらず、猫の目が苦手なようでいらしたけれど」
そう言いながら白い子猫を抱き上げ、「にぃ、にぃ」と鳴く子猫の小さな体を撫でるリーティス。
「猫と一緒に暮らせるなんて、楽しい事ですのに。ねぇオーディスワイア様。猫嫌いを治せるお薬とかは作れませんの?」
「無茶を言うな」
俺がつっこむと少女は笑い、子猫が「みぃみぃ」と返事した。




