混沌の巨獣戦 ─戦士達の戦い─
ミスランの街を防衛する戦士の視点から書いたものです。
味方を護りながらの戦いをする戦士達の心情を、もう少し上手く書きたかった……
混沌の軍勢が攻め込んで来てから、ミスランのはずれで戦いが始まり、数十分が経っていた。
街を防衛する戦士としての役割を果たそうと、街に残っていた冒険者達と共に、混沌の送り込んできた化け物と戦っていたが……一体だけ、巨大な魔獣に似た化け物が後方に控えている。──あれが攻めて来たら……そう考えると腹の底から恐怖が沸き上がってくる。
四十人くらい居る──集まった同志達。街を守る為にと身を擲って戦う覚悟を持つ者達だ。
その中でも、とてつもない働きをしている男が居た。
我々、防衛部隊の兵士達も戦いながら──その男の事を話題にしたりした。
「あの男……何者だ? 兵士達に喝を入れたかと思えば、最前線で戦い続けているぞ」
「その技量も凄まじい。若い冒険者達が複数人で倒している混沌を、あの男たった一人で、しかも一撃で倒してしまった」
そんな事を、一呼吸つく時に話していると、我々の体を包み込む銀色の光が現れた。それは神々が我々に力を与え、守ってくれる──神の恩寵の光だ。
苦しい戦いの中でも我々は諦めず戦い続け、小さな敵を全て排除すると、血気盛んな若者達が果敢に大型の「混沌の巨獣」に挑み掛かる。大きな四本の脚に斬り掛かり、跳ね飛ばされる若者達。
我々も無謀と知りながらも奴の脚や、胴体を狙って斬りつけた。
多くの者が傷つき倒れた所へ、巨獣が武器を振り下ろそうとする。
すると例の戦士が猛烈な勢いで飛び掛かり、巨獣の腕や胴体に気の爆発する剣技を放って応戦する。
仲間を守る為に敢えて敵の正面から突っ込んで、仲間の居ない場所へ向かわせたのだ。
「我々も……我々も、あの男に続くぞぉ!」
戦士長が声を上げると、手にした大槍を持って突撃して行く。
戦況を打破しようと果敢に攻撃を仕掛けては、巨獣の振るう巨大な武器に弾き飛ばされる。神々の護りの力がなければ、その一撃で動けなくなるほどの威力だろう。
そんな化け物を相手に、大勢の戦士や冒険者が挑んだが──皆、地面に倒れたり、足を引きずったりしながら後退をする者が増えてきた。
そんな時、あの男は金色の光を集めて皆の前に立っていた。神々の力を借りたのか、大量の気が集まり、黄金の輝きの中で大きな剣を構えて立っている。
「いかんっ」
混沌の巨獣がそれに気づいて、あの男を攻撃しようと行動を始めたのだ。
「皆、盾を持って集まれぇえぇ! あの男を守るぞぉ‼」
誰かが声を上げた。
「「「おぉおぉぅ‼」」」
その声に呼応して、多くの戦士が武器を放り投げ──背にした、あるいは倒れた者が手にしていた盾を掴むと、大剣を構える戦士の前に向かって駆け出して行く。
あれだけ恐ろしいと思っていた混沌の巨獣の事など、すっかり忘れて──今は、あの男を守る為にと全力で走り出し、数名の戦士が男の前に、銀色の盾となって集結した。
巨大な剣を突き出してきた巨獣。その武器を前に盾を構えると、我々は一つの固まりとなって、体ごとぶつかって行くような勢いで、猛然と相手の攻撃を弾こうと立ち向かって行く。
「「「ウォオオォオォッ‼」」」
我々は巨大な武器を怖れずに、自らを鼓舞する咆哮を上げながら銀色の盾となって、男を守り抜いた。
巨大な黒い武器は弾かれて上方へ受け流されたのだ。
男の手にした黄金に輝く大剣から放たれた攻撃が──混沌の巨獣の腕や胴体を破壊して、奴に膝を折らせた。
その後、多くの同胞達が参戦し、危険な相手に挑み掛かり──今回の危機を乗り越える事が出来たのである。
……防衛部隊の誰よりも懸命に戦い、フォロスハートを守り抜いたあの男には頭が下がる思いだ。
この件以降、防衛部隊の戦士達も──より一層、訓練に励むようになった。これからは我々だけでもミスランを守れるようにならなければ、誰もがそういった思いにかられ、日々の戦闘訓練に臨んでいる。




