下着が舞い踊る庭
本編の方も読んでみてください~
外伝では珍しいオーディスワイア視点のお話。セクハラ王オーディス、ここにあり!(⁉)
遠征から帰って来た仲間達。
皆が皆、遠征前よりもずっと良い顔つきになった、そんな気がする。
色々な場所に冒険に出て、今まで戦った事の無いような魔物とも戦ったのだろう。特にカムイやヴィナーは一皮剥けた気がする。表情に自信が表れているのだ。──若さ故の伸び代の広さを感じた。
「良い経験になったみたいだな」
ヴィナーに声を掛けると、彼女は黙って頷き、「不思議な経験をして、魔法を多く手に入れられたので」と話してくれた。エウラもヴィナーのその話を聞きたがったが、彼女はそそくさと逃げ出し、部屋へ戻って行く。
庭には彼らが遠征で手に入れた素材や武器、防具などが置かれていて、白銀騎士の装備などが目を引いた。
「懐かしいな。白銀騎士とは何度も手合わせをしたもんだ」
「僕達もずいぶん、そいつとは戦いました。姉さんと協力して、二人で一体の白銀騎士を倒す事も出来るくらいにはなりました」
俺はレンネルの言葉を受け「上出来だ」と応える。しかし、騎士長位階の相手だと双子だけでは厳しかったという……それはそうだろう。外套を羽織った騎士長は魔法を使ってくる上に、基本的な能力が高いのだ。
下手に攻撃を盾で受ければ、盾が真っ二つに割られかねない。
だが、そんな危険な敵を相手に仲間と挑み、勝利した事で、双子達も以前よりずっと自信を持ったみたいだ。
「結構な事だ」
そんな感想を漏らしつつ、夕食の支度を始めるのだった……
*****
翌朝、いつものように小鉢植物園に水をやり、庭に出て神への祈りをしていると──珍しく皆が早起きして、何やら準備を始める。──どうやら、洗濯をする為に早起きしてきたらしい。
遠征先で溜まった洗濯物を片づけようと、女性陣が朝早くから洗濯機を稼動させ、次々に物干し竿に下着を吊していく。
物干し竿が足りなくなると、針金で作った簡易的な物干し用の吊り金を用意し、傘状に広げられた針金の先に下着がぶら下がる……
その光景を見ながら、そう言えばこちらの女性用下着は白ばかりだと思った。
もちろん大勢の女性のスカートをめくって確認した訳じゃないので、今まで見てきた物がたまたま白ばかりだった、という事もあり得る──が、ここにぶら下げられた下着達も白ばかりで、淡紅色や青色などの色が付いた下着は一つも無かった。
「ちょ、ちょっと、女性用下着を真剣に見つめながら、何を考え込んでいらっしゃるの」
レーチェが不信感を露にして、そう声を掛けてきた。
「失礼な。人を不審者の様に……」
そう言いながら、物干し竿を見ると、ある一角にある下着だけが、異様に大きな物である事に気づいた。他の下着が子供用に見えるくらいだ。
「一つだけ──ばかでかい下着があるな?」
そう言うと彼女はキリキリと音が聞こえそうな勢いで目を吊り上げる。
「ま、待て待て。あれだ、下着の色は白だけなのか? 黒とか淡紅色とか、色の付いた下着は無いのかな──って、そう考えてただけなんだ」
すると彼女は簡単に教えてくれた。
「それは──私服では黒とか、赤系統の下着もありますが、冒険に行く時は白と昔から決まっていますわ。……いえ、決められている訳ではなくて、白の方が縁起が良い、といった願掛け的な意味合いがあるそうですわ」
私も詳しくは知らないのですが、と言う──なるほど、冒険者の中に広まっている「験担ぎ」に理由があったのか。
風に揺られる下着の舞い踊りを見た俺は、猫達の餌を用意しようと食堂へ向かう事にした。




