カーリアの戦士への憧れ
時系列に配慮して割り込み投稿してみます(笑)。初めて使いますねこの機能。
「彼らは進み続ける、どこまでも。深く、深く彼らは進み続けた。森の奥に待ち構える謎の遺跡を目指して……」
私もいつか、こんな風に冒険をしてみたい。私はいつもそう思っている。──でも、実際の私は小柄で貧弱な女の子なのだ。この物語に出て来る様な強い戦士でもないし、魔法使いでもない。
魔法を使える女の子の登場する物語と言えば『魔法剣士エリステラの冒険』だ。この本も何度も読んだ。エリステラは魔女の様な格好をし、短い杖から光の刃を出して魔物と戦う、強い魔法剣士だ。
私も彼女の真似をして黒い法服を着て短い杖も持ってみたが、彼女の様な魔法を使う事はできない。それはそうだ、私はエリステラじゃないのだから。
私はエリステラに似る様に目の下に水で薄めた墨を塗って隈を作ると、彼女の真似をして杖を振り上げて光の刃を振り下ろす。──もちろん光の刃なんて出せはしないのだけれど。
「ぬふふふふ、今日も魔杖サルフォンが魔物達の血を求めて疼き出すのだぜ」
ああ、彼女の様に強い魔法剣士になれたなら、きっと多くの旅団に引っ張り蛸になるに違いない。
どうすれば旅団に入れるのだろう、やはり強くないと入れないのかな。うちの鍛冶屋に来ている冒険者に聞いてみたいけど、あいつらいつも忙しなく注文しては帰って行く。まるで何かに追いかけられているみたい。
一階に降りて行くと、ごつい身体のおっさんと父親が話している。なにやら打ち物通りにあるという鍛冶屋について話しているみたいだ。……少ない素材で強力な錬成をする。だとか、昇華錬成をした──とか、遠くてよく聞こえなかったが、打ち物通りの錬金鍛冶屋といえば、爺さんが一人でやっている小さな店だ。
最近は行ってなかったが、まだ野良猫に餌を与え続けているのだろうか。昔はよく猫を触りにあの小さな鍛冶屋へ足を運んでいた。──行ってみようか、久し振りに。
そう思って階段のある壁から離れようとしたら、父親と話していた男が「ォーデスアイァ」という名前を口にしたのが聞こえた。あの爺さんの所に、そんな奴が徒弟に入っていたのか、有能な徒弟を入れて大通りの鍛冶屋に対抗するつもりなのだろうか?
「あの爺さんに、そんな気持ちは無さそうだったけど──」
そうか、新しく入って来たそいつ──オーデスアイアとかいう奴がそそのかしたんだな⁉ むむっ、これはその悪者を倒しに行くしかないな、この魔法剣士エリステラがな!
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