シャルファーの歴史博物館
シャルファーに遠征に来ている私達。
冒険から帰って来ると少しの間、休憩時間になったので、街を見て回る事にする。──ユナとメイを連れて商業地区で買い物をしていたら、ユナが看板に描かれた地図を見て声を掛けてきた。
「エウラさん、この歴史博物館って、どんな物が展示されてるんですか?」
「博物館? ああ、転移門先で見つけられる素材や、生物などに関する情報とか──あと、有名な『エンデルの剣』や『フォルアルフォンの兜』とかが展示されていたりね。この街に居た昔の錬金鍛冶師が作った物だけれど、歴史的な資料として保管されているみたいね」
昔のシャルファーは、特に錬金鍛冶の技術が発展したらしい。金属が豊富に採れるゲーシオンではなく、シャルファーで鍛冶技術が発展したのは──博物館に書かれていた案内板を信じるなら、数名の錬金鍛冶師の切磋琢磨し合う環境にあったみたいだ。
オーディス団長みたいに情報を開示して、公共の利益を優先する様な人物が多かった時代があったのだろうか。
私達三人は博物館に入り、展示物を見て回り、転移門先の生物や危険な存在に関する情報を仕入れたり、シャルファーの錬金鍛冶工房で、どの様な物が造られていたかを知る事が出来た。
「エンデルの剣って、見た目は地味なのに、そんなに強い剣なのかな?」
メイは容赦が無い。
「そうね。ここにも書かれているけれど、昇華錬成によって生み出された──凄い効果が付与された物であるらしいわね。ただ、結構重いらしくて、誰の手にも余る物だったとか」
剣の厚みが通常の剣の三倍近くある大きな剣だ。これを扱っていた冒険者が大柄な人物だったのは疑いようがない。
この様な強力な昇華錬成品は冒険者にとって憧れの品だが、昇華錬成は偶発的に起こる現象であり、こういった錬成品の入手は限りなく低い確率に頼る他はない。といった事が案内板に書かれていた。
「うちのオーディス団長は、昇華錬成を二回ほど起こしたって話だけれどね」
大勢いる錬金鍛冶師でも、多くの人は昇華錬成を経験せずに一生を終えると言われているのに、あの若さで二回も昇華錬成を体験しているなんて──やっぱり、うちの団長は凄いとメイが言うと、ユナも同意する。
彼女の銀の腕輪が、その昇華錬成品であるのは知っている──その効果が凄まじい事も。
折れた魔剣を修復してみせた技術や発想といいオーディス団長は、あの今一つやる気を感じない見た目とは違い──結構できる人だ(失礼)。
私達は博物館の展示物を一通り見て回ると、改めて錬金鍛冶師の仕事の重要さを知り、自分達の旅団長の実力と、団員全員の武装について力を尽くしてくれている団長に感謝の気持ちを抱くのだった……




