砂鯨の脅威
「そう言えば、この前──」
とリトキスさんが喋り始める。
「ウンディードの手強い敵について聞きましたけれど、オーディスワイアさんが手強いと感じる敵は? と聞かれて思い出す敵って何か居ますか?」
そう尋ねられた団長が膝に野良猫を乗せて、その背中を撫でながら「う──ん」と考える。
「そうだな……やっぱり、『旋風炎竜』や『混沌の悪魔』──その中でも、鋼の身体を持つ『鋼鉄悪魔』や『六腕の戦神』は危険な相手だな──だが」
団長は思い出した事があった様子だ。
「あれだ、ゲーシオンにある砂漠世界。あそこに出現する巨大な生物、『砂鯨』だな。あの巨大な口を開いて襲って来る姿……思い出すだけで震えがくる」
そう言って今まで見た事の無い、げんなりとした表情をする団長。
「そんなに大きいんですか?」
俺は二人に尋ねる。
「大きいものだと、この宿舎を飲み込んでしまうんじゃないかというくらい──大きい口を持っているよ」とリトキスさんが言うと。
「実際、仲間が丸呑みにされた事があってな……幸い牙や、口の中にある口に噛み砕かれる事なく体内に入って、内側から攻撃を仕掛けて助かった……そんな例もあるくらいでな」
団長はそう言うと、カムイもゲーシオンに遠征に行く事になったら気をつけろ、と忠告してくれる。
「でも砂鯨の討伐任務は、いくつかの旅団と共同で行う討伐になるから。ゲーシオンの兵士が協力してくれるし、弩砲や戦車で応援してくれるね。──冒険者の力だけでは、なかなか倒せない相手だし」
二人に聞くと砂鯨の討伐は、ゲーシオン全体の利益にもなるのだと言う。討伐すれば、大量の肉や脂、皮や骨が手に入るので、街全体で討伐し、管理局からも様々な支援や報酬が出る任務であるらしい。
砂鯨は砂に覆われた大地の上を歩いて行動し、その姿は巨大な砂山が動いているみたいに見えるのだとか。
砂の中に潜るのは小柄な雌で、雄は身体が大きく、草地と草地の間を移動する駱駝や牛を狙って襲い掛かる。
とにかく巨大な口を開いて襲って来る姿は、団長曰く「悪夢そのもの」だそうだ。建物を呑み込むくらい大きな口が迫って来るなんて、確かに考えたくもない。
砂鯨……覚えておこう。
わりとグロテスクな外見をしていると思われる砂鯨。陸に上がって怪物となる、そんなイメージ。




