若者達の情報交換
本編300話もあるので、そちらもよろしくお願いします。
新米冒険者や、下位難度での冒険を行う「初級冒険者」達の集まる料理屋に、一人で来た俺。
今日は、他の旅団に入っている若手冒険者達と、情報交換をしにやって来たのだ。
今日、集まった新米の多くは、まだ旅団に入っていない者ばかりだったが、「空の水瓶旅団」の新米冒険者も参加していた。
俺達は、互いの持っている情報──旅団での生活や、活動について。または、冒険先での活動。どのような採取を行い、または魔物などを倒しているか、といった事を話し合う。
「カムイ──さんの旅団は、どんな感じなんですか?」
まだ旅団に入っていない若手の──まだ子供に見える──少年が尋ねてきた。
「うちの旅団は、たぶん、かなりいい旅団だよ。他を知らないから、正確な事は分からないけど。余所の旅団の話を聞く分には、うちのとこは、防具が支給されたり、武器や防具の強化に、素材をいくつか提供してくれたり、そういった事を積極的にしてくれる、いい旅団だよ」
おお──と、「空の水瓶旅団」の新米冒険者からも歓声が上がる。
「それは、いですね。うちの旅団は、中級くらいにならないと、あまり旅団の持つ資源から物資を提供してくれる事は──いや、ほとんど無いですね」
そんな風に言って、苦い顔をする。何か、旅団で言われた事を思い出したのだろうか。
「若手に厳しい旅団が増えてきた感じですよね」
誰かが声を上げた。
「この前の『不正旅団』も、なんでも若手から搾取していたって話じゃないですか。旅団には入りたくないなぁ──」
「でも、食事の支給は出るし、いい部分もあるでしょう」
そんな話し合いをする中、興味深い話が出た。
「不正をしていた連中と言えば、『嵐の広野と鉱山脈』や『鉱山と荒野大地』で鉱脈を独占しようと、洞窟の入り口とかに『毒注意』みたいな、嘘の看板を取り付けて、採掘に来た人を騙していたらしいよ」
俺は、思い出した。
「あの時の看板か……」
あの時ウリスは、その看板が嘘だと見抜いて、条件のいい鉱脈から大量の鉱石を取り出して、持ち帰る事が出来たのだ。
そうした事があったと皆に話すと──やっぱり狩人の感覚は鋭いな、とか。不正する奴のせいで自分達は、その採掘場所に行けなかった。などと話し出す。
旅団に入らず、少ない支給品で生活している若い冒険者達は多い。
やはり旅団に入る方が、生活の安定には繋がるのだが、おかしな旅団に入ったせいで、伸び悩みを感じている者も多いのだ。
今回の場には来てないが、そうした話しをする新米も多い。
ミスランでは「蒼髪の天女旅団」や「金色狼の旅団」が評判の旅団として名高いが──最近、金色狼の旅団は、悪い評判も耳にするようになってきた。
「どこも、若手に厳しいよな……」
そんな溜め息にも似た言葉が漏れ、今日の集会はお開きになったのだった。




