リトキス、古き仲間との再会を望む
最近、懐かしい名前をたびたび耳にするようになった。
「錬金鍛冶師オーディスワイア」の名だ。
僕の知るオーディスワイアという人物は、冒険者として高い実力を持つ人だったが、ここ最近の噂や──管理局の友人に聞いた話によると、いくつかの新技術開発に協力した事で、管理局内でも、そこそこ噂に上る鍛冶師として知られているらしい。
「昔は、鍛冶の手伝いを何度かしたくらいだったけれど、ずいぶん鍛冶師としての腕を上げたみたいですね──あの人は」
「金色狼の旅団」に居た当時でも、武器に単純な錬成を施したりはしていたが、金属から武器を作ったりは、滅多にやらなかった。──ところがである。
最近──耳にした噂では、「魔法の剣」を作り出したと噂になっていた。管理局の方でも、オーディスワイアさんの「魔法の剣の作製報告書」を受け取り、各鍛冶屋への冊子の配布が行われたらしい。
貴重な情報であっても、フォロスハートの為に公開する態度は──冒険者の頃と、何も変わっていないなと思わせる。
新たな転移門先の情報を、管理局を通して多くの冒険者に公表する態度を、オーディスワイアさんは一貫して貫いていた。
貴重な素材の入手方法や、魔物の討伐方法なども、惜しみなく公開するものだから、一部の狭小な冒険者からは煙たがられていたが。
「何よりも、まずはフォロスハートのこれからを、考えるべきだろう」
あの人は口癖の様に、そうした事を述べていた。
確かに、僕が冒険者を始めたばかりの頃は、食料が充分に行き渡っているとは言い難かった。だからこそ、多くの人は──「金色狼の三勇士」が冒険に出て、戻って来る事を、心待ちにしていたのだ。
月に一度は、中堅以下の若手を連れて、食料となる草食竜や牛などを、率先して狩りに行っていたのも、多くの人々に食料を供給する事が、冒険者のすべき一つの仕事だ。と意識づける手立てだと考えたのだろう。
若い頃の僕には、そこまでの事を見抜く事が出来ずに、「もっと上級難度の転移門での冒険をするべきなんじゃ」などと、生意気にも思っていたものだ。
「恥ずかしい……本当に、恥ずかしい」
個人としての活躍よりも、多くの人々の為に活動をする、という──そうした心意気について気づけない、恥ずべき時代。そんな風に今は思える。
「若さ故の愚かさ」そんな言葉で片づけたくはないが、あまりに短絡的な考え方を、当たり前の様に行っていた若き日の自分を思うと、……無性に殴りたくなってくる。
だが、そうした記憶があるからこそ、今の僕は──多くの人々や、フォロスハートの今後を考えて行動する事を、強く意識できるのだ。
過去の恥ずべき考え方や行いを、無かった事にするのではなく、それを糧として、踏み台として、より良い自分へと成長して行く。
自分だけでは無い。
周囲の人々と共に、より良い世界で生きて行く為に、自分の力を発揮して行ければと、そう思っている。
思えば彼らの、そうした「フォロスハートの為に」という姿勢。それを知った事で僕は、「金色狼の三勇士」に尊敬と、憧れを抱く様になったのだ。
その思いは当然、自らも彼らと同じ様に、仲間や、フォロスハートに住む人々の為に、という志を持って冒険へ向かう、理由を与えてくれた。
その為にも、オーディスワイアさんの作ったという魔法の剣を、僕にも作ってもらいたいと思う。
最近は一人で活動しているので、強力な武器や、魔法を入手する必要が増している。
何より、かつての頼もしい先達が作ったという物に興味を引かれていた。
「ぜひ、その真価を見せて欲しいですね」
僕は生意気にも、そんな風に考えて──中央都市ミスランへ向かって、旅立つ用意を始めた。




