双子の外食での出来事
「なぜなのか」
姉は不満も露に呟く。
「あ、うん」
僕達は公園に置かれた木製の長椅子に腰掛けている。大通りから少し離れた場所にある、小さな公園だ。鳥が休めるようにと樹木が数本植えられている。
公園前の通りには数軒の屋台が並んでいて、そこで買ったコロナ(小麦粉に牛骨や鶏ガラから取った出汁を混ぜて、肉や野菜を入れて丸く焼き上げた料理)を木皿に乗せた物を買って食べるところだ。
「なぜなのか」
姉ーーエアはまた言った。よほど屋台での事が気に入らなかったらしい。
「姉さんが二十個も買うからでしょ……」
「いやいや、コロナ十個だけじゃ足りないでしょ普通。あんたもなんで男のくせに十個を注文してんのよ、ちっちゃい、あんたちっちゃいわぁーー」
「姉さんがデカ過ぎるんじゃない?」
僕は皿に乗った丸いコロナに木串を刺して口に運ぶ。ーー皿の上には十四個のコロナが残っている。これが姉が「気に入らない」理由だ。
*****
屋台の前に立つとコロナを作っていた気の良いおじさんは僕達を見て、双子だなんて珍しいねと声を掛けてくれた。
姉は「そうでしょ」と言いつつ躊躇い無く二十個を注文し、僕は控え目に十個を注文した。ーーするとおじさんは気を利かせたのか、僕の皿に十五個のコロナを乗せてこう言ったのだ。
「お嬢ちゃんも、お兄ちゃんくらい食べないと大きくなれないよ」
僕はありがとうございますと礼を言って、怒り出しそうな姉の背中を押す様にして公園へ向かった。
「……私ってそんなに男っぽいかなぁ……」
「うん。ーーあ、いや、どうなのかなぁ……」
予想外に、と言っては失礼だがーー美味しかったコロナに気を取られてつい、生返事してしまった僕をジロリと睨んでくる。
「おい……いま、思いっきり『うん』と言ったな?」
あつあつのコロナを口にすると姉は「あっつ、あっつ」と、口から湯気を吐き出す。
姉よ……そんな姿を晒している女子を、僕は姉以外に見た事が無いーー
*****
……昔一緒に遊んでいた女の子が居た。名前は忘れてしまったがーー彼女がある日、僕達にこう言った事は覚えている。
「エアネルちゃんとレンネルちゃんって変だよね。エアネルちゃんは男の子みたいだけど、レンネルちゃんは女の子みたい」
姉は、そう言った女の子の頭を殴りつけて泣かせると、僕の手を引いて帰ったのだった。
*****
思えば昔から姉は男の子に間違われ、僕は女の子に間違われてきた。父も母も「エアはもう少しお淑やかになりなさい。レンみたいに」と言っていたものだ。
「なぜなのか」
僕は一人呟いた……
コロナはタコ焼きのイメージですね。洋風タコ焼きーーみたいな?
現在4月ですが、1月よりも前からウィルスの話題は出ていたみたいですが、「コロナ」っていつから呼ばれ始めたのだろう……この外伝を書いてる時にはコロナウィルスなんて知らずに、書いていたはずですが。




