彼女達の戦績
本編が第五章を終えました、そちらを読んでもらえると嬉しいです。
タイトル上の『方舟大地フォロスハートの物語』からそちらに移れるのでよろしくです。
ブックマーク、評価、ありがとうございます。
転移門「塩の山と泥の沼地」を探索中に昼食を取って休憩する事にしたーー私とエアネルとメイは、山に近い乾燥した地面に座り込んで、食事を食べ始める。
周囲の警戒をしながら簡単な食事を食べ終える。ーー今日は皆レケット(パイ皿焼き)などをパン屋で買って来たーー水筒から水を飲んでいるとエアネルが私に言った。
「エウラさんは都市シャルファーの旅団に居たんですよね? どういった所へ冒険に出ていたんです?」
「シャルファーの? うーーん、中級難度の転移門が多かったよ。上級難易度も何回か先輩達と一緒に行ったけれど、厳しかったな、私には。中級難度でも『太古の城塞都市』なんかは危険な魔物も出るし、あの頃は魔剣も持って無かったから。今なら割と戦えるかもね、上級でも」
おおーーと感嘆するエアネル。彼女は次に、同じ質問をメイにぶつけた。
「私もフレイマでは中級が多かった。上級も何度か行ったけれど『噴煙の悪魔』が怖かった。接近するだけで火傷しそうになるから、あいつ嫌い」
少女の話しによると「噴煙の悪魔」という「混沌の勢力」が出現すると、仲間達にも緊張が走るらしい。燃え盛る炎を全身から放出している危険な奴だと彼女は言う。
「熱くて近寄れない、魔法使いの『常態冷却魔法』があっても苦しいくらい」
少女にしては我慢強いメイが言うくらいだ、相当な熱さなのだろう。
エアネルは下級と中級のみ冒険に参加していたらしい。というのも旅団で上級に挑める人は、一人も居なかったのが現状だったそうだ。
エアネルとレンネルの双子の組み合わせが強力だったとしても、上級ではなかなか通用しないだろう。オーディス団長も、まだ私達に上級難度への挑戦をさせる事は考えていないみたいで、慎重に「実力をつけ、装備を整えてから」上級へ挑む、と繰り返している。
その為にも今日は、岩塩ーーその中でも純度の高い塩の結晶ーーを入手する事を団長から頼まれていた。錬金術でも料理でも塩は基本となる、と団長は言っていたが、料理も錬金術もしない私に言われても……でも、塩が貴重なのは分かる。
「純度の高い物が手に入ったら、それだけでも持って帰って来い。他は管理局に売っても構わない」
そう団長は言っていた。午前中に回った岩塩坑道には純度の高い塩結晶は発見できなかった。
「頑張って純度の高い物を見つけて帰ろう」
私が二人に声を掛けると、「うん」と「うっし」が重なって変な言葉に聞こえた……




