ユナとメイの特訓
タイトル上部のシリーズ名『方舟大地フォロスハートの物語』から本編を読んでもらいたいです。
よろしくお願いします。
メイと良く冒険に出ているので、彼女が使っている「気」による攻撃というものに興味がある。もちろん魔法使いにも気を操る事は出来るはずだが、この体内に発生する気を、魔法使いは魔力へと変換しているらしい。気の全てが魔力になるのでは無く、余剰分が魔力として貯蔵されているという説もある(外部にある魔力を吸収している事もある)。
魔法を使えないメイは「気」を外部に放出する攻撃を会得しているが、攻撃する為の気を撃ち出す事は、誰にでも習得可能という訳では無いようだ。
「メイ」
脚を伸ばして準備運動している彼女に声を掛ける。「うん?」と、こちらを見上げた彼女は、緩衝材入りの手袋をしていて、またオーディスワイアさんを相手に訓練をするつもりのようだーーけど、あの人の姿は庭に無い。
「メイ。今日は私に気の攻撃を打ってみて」
そう言いながら打撃受けを手に持ったが、彼女は首を横に振る。
「やだ、危ないもん」
そう言わないで、軽く打つのでもいいから。と言ったのだが、彼女は強情に首を縦に振ろうとはしない。
「大丈夫、私だって鍛えてるし、打撃受けの上からだからーーね?」
魔法の使い方に新しい発想を取り入れられるかも知れないでしょ? などと言って何とか彼女を口説き落とす。
「わかったーー軽くだからね?」
「うん、いいよ」
そう言ってメイの前で打撃受けを構える。ああは言ったけど少し怖い、メイの戦い方を見ていれば分かる。本気で気による攻撃を打たれたら、私なんて軽く吹き飛ばされてしまうだろう。
「いくよ」
メイは手の平で打撃受けを突き、その瞬間に気による攻撃を打ち出す。
軽く突いた攻撃だったが、気の衝撃は凄かった。「どずっ」と重い音がして、私の上体が後ろに投げ出される。まるで宙に持ち上げられたみたいに足が地面から離れたのだ。
「おっと」と言って私を受け止めてくれたのはオーディスワイアさんだった。メイは、ほっとした顔をして近づいて来た。
「大丈夫だった……?」
彼女の心配そうな声に「全然平気」と強がりを言う私。
「気による攻撃を魔法に応用? うーーん、あまり意味ないかもしれないぞ、それ」
そう言ったのはオーディスワイアさん。魔法の方が応用力が高く、どちらかというと気の攻撃方法は、魔法の代用として格闘家によって編み出されたのだと説明する。
「まあ、なにかしら発想が得られるなら挑戦してみるのもいいが、気をつけてな」
そう言って宿舎に入って行こうとするオーディスワイアさんをメイが捕まえて、訓練相手にしようと引っ張って行く。
「何故俺なんだ……」
と呟く声が聞こえた。ーーメイ、お願いだから手加減してあげてね……




