ナンティルとのやり取り①
本編が投稿してあります。
是非そちらも読んで見てください。
タイトル上部にあるシリーズ名『方舟大地フォロスハートの物語』から本編へ跳べます。よろしくお願いします。
鍛冶屋で強化錬成を行っていると、鍛冶場の入り口に猫獣人が大荷物を抱えて入って来た。いつもながらどうやってこんなデカ物を運んでいるのかと不思議になる。
「お久し振りにゃん、オーディス。景気はどうにゃ?」
「出やがったな、悪徳商人め」
俺がそう言うと彼女は、むっとした表情をしてぷりぷりと怒る。
「誰が悪徳商人にゃ! こっちは誠心誠意やってるにゃ!」
彼女はそう言ってえらい剣幕で「訂正するにゃ!」と頻りに訴えるので、以前に彼女から買った不銹結晶を机の引き出しから取り出して見せる。
「かなり前に買った物だ、時間が経って気づいたが結晶の表面が濁ってきている。ーーこれはつまり、不銹結晶に不純物が入り込んでいる証だ。それも短期間でここまで濁るという事は、不銹結晶を作る段階で通常とは異なる物を混ぜて作った粗悪品だという事だ。ーーおまわりさん、こいつです!」
「にゃ、なんにゃ、おまわりさんって……でも確かに。……これは間違いなく私から購入した物かにゃ?」
「前々回に購入した時の物だ。それより前から備蓄している物から先に使っているのだが、この様だ。いったいどこから買った物だ? 意図して不良品を作り出しているぞ、これを作った奴は」
俺の言葉に彼女は真剣な表情で結晶を見つめた後、いくつ不良品が出たかと尋ねる。
「十個買った内の三つだな。他は確認してみたが通常の品質の物だった」
「分かったにゃ、申し訳なかったにゃ。三つ分の金額をお返しするにゃ」
彼女は改めて謝罪を口にして頭を下げる。
「まあ、わざとでは無いのは分かっていた。だから「悪徳商人」は止めて「業突く商人」と呼ぼう」
「ふん、業突く張りで何が悪いにゃ。行商人は大変なのにゃ」
彼女はそう言うと粗悪品の不銹結晶を銀貨と交換した。赤い毛の生えた細い腕には筋肉がしっかりと付いている。
じろじろと彼女の腕や脚を調べていたら、ナンティルが怯えた感じで言う。
「にゃ、なんか良からぬ事を企んでないか? エロい視線を向けるのは止めるにゃ」
短い灰色の短パンから伸びる脚を警戒してぴったりと閉じる。
「いや、筋肉の付き方がーー重い荷物を背負っているから出来る筋肉では無いと思うんだが」
そう言いながら彼女の二の腕を掴んで筋肉の感触を確かめる。
「い、いやらしいにゃ! 手つきがいやらしいにゃ!」
「どこがだ! 上腕の後ろ側の筋肉も付いているし……荷物を背負うだけでこんな筋肉は付かんだろ」
ナンティルは、むっとした顔をすると、掴んでいた俺の手を振り払う。
「失礼にゃ、女の子に筋肉質だなんてーー失礼にゃ!」
彼女は怒りながら荷物袋を開き、中から各種精霊石を取り出す。
やれやれといった仕草をしながら太股の筋肉を触ろうとすると……
「それ以上やったら引っ掻くにゃ!」
と怒られてしまったのである……
しまった、投稿した後で歯磨きしている時に気づいた……
外伝用の短編なのにオーディスワイア視点で書いちゃった! という事に……
ナンティルは少し事情のある登場人物なので、これでもいいか……とご理解下さい(笑)




