カーリアの剣の修行ー心の強化ー
「蒼髪の天女旅団」の有望な若い剣士レクトが、オーディス団長の求めに応じて訓練をしてくれる事になった。彼は強いだけじゃない、訓練は厳しいが、ちゃんと仲間の為を思って戦う事を教えてくれる。
「カーリア、君は相手の命を奪う事に躊躇いを感じ過ぎている。何も考えずに殺せとは言わないが、過度な憐憫を抱き続けるなら、冒険者など諦めろ。君が戦わないせいで仲間が傷ついても、君はただ泣くだけで済ませる気か? 戦う覚悟も無いのなら、戦いの場に出ようなんて思うべきじゃない」
レクトの言葉は強く私の弱い心に突き刺さってきた。そうだ、彼の言う通りだ。そんな覚悟では私は、この旅団にも居られなくなる。そんなのは嫌だ、私が、やっとの思いで入団した旅団。
ここ以外に私の居場所なんかどこにも無い。その覚悟を持たなくては、相手を傷つけてでも私は戦い、生き残る。仲間を守る為にも、私自身を守る為にも。私は強くなりたくて旅団に入ったんだ。守られる為に入ったんじゃない!
「やあぁぁああっ!」
私は大きく振りかぶってレクトの頭を狙って思い切り振り下ろした。がつんと音がして私の攻撃は止められたが、彼は「そうだ、もっと打って来い!」と木剣を押し戻してくる。
無我夢中だった。なんとしても、この強敵に一撃を浴びせて、私が戦って行ける事を証明してみせる! 横にも縦にも斜めにも振り下ろして攻撃したが、彼には一発も攻撃が当たらない。
だが彼は言った。
「よーし、いいぞ! その気持ちだ、気迫を持って戦え!」
身に着けていた革鎧の中央を突かれた。まったく見えなかったが、その一撃で後ろに数本後退させられて、地面に膝を突いてしまう。
片手で突いた攻撃だったが、私の不意を突いて放った一撃で、軽々と後退させられてしまった。強さが違い過ぎる。
次の相手と交代する合図を出すレクト。私は悔しさを感じながら下がると、途端に疲れが襲ってきて体が重くなったと感じた。今までは気迫で体を動かしていたが、神経が参ってしまったらしい。
ふらふらと建物の壁際まで下がると、皆の訓練の様子を見る。前衛職の皆は私よりも強く、覚悟も持って冒険に出ているのだ。私はなんて覚悟の無い事をしていたのだろう。
生き物を傷つけるのが怖いだなんて言いながら、私は生き物を食べて生活していたのだ。そんな理不尽が自然の、戦いの場で許されるはずが無い。どんな生き物だって狩られるのを良しとするはずが無い、抵抗だってする。だがそれでも私達は狩らねばならない、戦わなければならない、逃げ出す訳にはいかないんだ。
私達の済むフォロスハートを、そこに住む人々を守る為にも、自分自身を生かす為にも。
私は今こそ決意を固める事が出来たと、そう感じた。仲間の為にも己の為にも、戦い続けるという意志を持ち続ける事を。




